当社はこのほど、ロールス・ロイス社（英国）向けに、航空機エンジン用チタン合金材料の納入を開始致しました。採用されたのは、最高級の品質が求められる航空機エンジンの、回転体と呼ばれる「高圧圧縮機ディスク用鍛造品」と、同じくエンジンの「中圧圧縮機ケース用リング品」の2品種です。中でも「高圧圧縮機ディスク用鍛造品」については、日本のチタンメーカー及びその材料が、ロールス・ロイス社の航空機部品用途で"直接納入"の認定を受け、実際に納入する初めてのケースとなります。

　高圧圧縮機ディスク用鍛造品は、現行機種「エアバスＡ３２０」等に搭載するエンジン「V2500」用に、日本のチタンメーカーとして初めて、世界３大航空機用エンジンメーカー（ロールス・ロイス社、米国ゼネラル・エレクトリックス社=ＧＥ、米国プラット＆ホイットニー社＝Ｐ＆Ｗの3社）の一角へ"直接納入"することになります。
　同製品は、極度の耐久性が求められる為、わずかでも、材料であるチタン合金の清浄度（不純物を含まず、成分組成が安定している状態）に問題があれば、部品の劣化に繋がる恐れがあり、チタン製品の中で最も製造が困難とされている最重要保安部品（３ランクある"Critical、Sensitive、Classified"のうち最も製造が難しいといわれる、Criticalに相当）に位置付けられています。従って、当社材はロールス・ロイス社の品質管理基準において、最高位の評価を受けたことになります。また、直接取引は、素材メーカーへの信頼の証だと自負しております。

　一方、中圧圧縮機ケース用リング品については、間接納入（川崎重工業?での加工を経てロールス・ロイス社に納入）ではあるものの、2006年に就航予定の最新鋭旅客機「エアバスＡ３８０」に搭載する最新型エンジン「Trent 900」に使用されます。「Ａ３８０」は、エアバス社が社運をかけて開発、投入する最新鋭旅客機であり、同機に採用されたことで、当社のチタン材料が高い評価を得ていることが実証されました。

　2001年9月の米国同時多発テロの影響を受け、ここ2年間の航空機需要は低迷を余儀なくされていましたが、米国景気の回復や中国経済の拡大などに伴い、今年に入り緩やかながら回復に向かいつつあります。高い品質が求められる航空機材料には強度・靭性・加工性に優れたチタン合金が使われており、当社の材料も幅広く採用され実績を積み重ねて来ました。
　当社は、50年以上の歴史を有するチタン事業のパイオニアであり、国内メーカーでは唯一（世界でも数少ない）「溶解から製品までの一貫生産」を行うリーディング・カンパニーです。このたびの最高級の評価「Critical」は、当社ならではの、溶解工程からの徹底した品質管理により得られたものです。
　チタンは需要拡大が期待される次世代の金属として注目を集めています。当社はその中で、「航空機業界」向けを重点戦略分野と位置付けており、今後も注力していくことになります。また、当社のもつ製造技術が、世界的なチタンの普及に大きく貢献出来るものと確信しております。

以　上

【ご参考】
＜高圧圧縮機ディスク用鍛造品について＞
◆納入ルート：
当社の高砂工場で生産したチタン合金素材を、直接ロールス・ロイス社のドイツ工場（フランクフルト市近郊のオーバーウルゼル市）に納入する。直接取引きであり、ロールス・ロイス社のリスク・レベニュー・シェアリング・パートナーである丸紅が、サポート役として参画している。
◆契約内容：
2003〜2005年の3年契約（初回納入は2004年1月）
◆チタン合金の材質は「Ti-6Al-4V」（通称：6-4合金）

＜中圧圧縮機ケース用リング品について＞
◆納入ルート：
当社の高砂工場（兵庫県）で生産したチタン合金素材を、川崎重工業株式会社／明石工場（兵庫県）にて加工した後、ロールス・ロイス社の本社工場（英国ダービー市）に納入する。川崎重工業殿との長年の技術協力関係が今回の受注に漸く結びつくことができた。
◆契約内容：
2003〜2007年の5年契約で、「神戸製鋼所」の製品を100％採用（初回納入は2004年1月）
◆チタン合金の材質は「Ti-6Al-4V」

＜エアバスＡ３８０について＞
◆総2階建てで座席数、航続距離ともに世界最大、最長となる超大型機
◆既に複数の航空会社が発注済み（現時点で129機）

最新鋭エンジン　　Ｔｒｅｎｔ ９００
（ロールス・ロイス社製　エアバスＡ３８０用）