塩ビ・リサイクル事業の開始について


2002年6月19日

塩ビ・リサイクル事業の開始について
〜欧州の大手化学メーカーと業務提携し、リサイクル市場に本格参入〜

 当社はこのほど、ベルギーの大手化学・薬品メーカーのソルベイ社(Solvay S.A./本社ブリュッセル)との間で、ソルベイ社が開発した『ビニループ(VinyloopR)プロセス』によるポリ塩化ビニル(以下「塩ビ」)のリサイクル事業及びリサイクル・プラントの販売に関して業務提携致しました。これにより当社は、日本国内における塩ビ・リサイクル市場に本格的に参入致します。
 本プロセスに関しては、日本で発生する塩ビ系の廃材を使ったサンプルテストにより、塩ビ関係の諸団体、一部ユーザー等から、再生された塩ビの外観・成分組成について既に高い評価を得ています。今後は、生産性の観点から、製造原料としての確固たる評価を得るため、ソルベイ社と共同でマーケティング活動(塩ビ系廃棄物の回収ルート確保、再生塩ビの販売ルート確保)を実施していく予定です。また、日本国内における塩ビ・リサイクルについては、1年後位を目処に、東日本、西日本に各々2万トン規模のプラントの建設を開始する見通しです。事業化に際しては、当社とソルベイ社に加え、関連する諸企業の事業参画を期待しており、PR活動を継続していく予定です。

 

【業務提携の骨子】
@ 日本国内で展開する塩ビ・リサイクル事業に関し、神戸製鋼所が独占パートナーとなる。
(神戸製鋼所以外の他社とはパートナー契約を結ばない)
A 日本国内でリサイクル・プラントを販売する際、神戸製鋼が独占販売権を有する。
B 本プロセスの用途拡大(廃家電・廃自動車など)に関する技術開発を共同で行う。
C 中国などアジア市場への参入も両社で推進していく。

 

 『ビニループ・プロセス』は、欧州有数の塩ビ製造会社でもあるソルベイ社が、塩ビのリサイクルを促進するために開発したプロセスです。ビニループ・プロセスでは、塩ビ系廃棄物から、特殊な有機溶媒で選択的に溶解することにより塩ビが回収されます。回収された塩ビはバージン材に近い物理化学性状を有しており、農ビ、電線被覆材、壁紙などへのリサイクルも可能となります。従って、廃棄物の原材料化という『マテリアルリサイクル』(例:農ビ→農ビ、電線→電線)を実現することにより、静脈産業(廃棄物処理)と動脈産業(生産活動)を繋ぐことが出来る画期的なプロセスと言えます。尚、今年2月より、イタリアのフェラーラ市で、本プロセスによる商業第1号機(年間処理量1万t)が操業を開始しており、電線被覆廃材から塩ビを回収し、近隣の塩ビユーザーにバージン材よりも安価で販売されています。また、フランス、ドイツ、スペイン、ベルギー、英国等の欧州地域やカナダ等で10数件のプラント建設が計画されており、欧米で既に高い関心を集めています。

 日本では、年間約250万トンの塩ビが生産されており、内約160万トンが日本国内で消費されています。塩ビは安価で、加工性・絶縁性(電気)・強度に優れた素材であることから、主にパイプ、農ビ、電線被覆材、壁紙を始めとして非常に広い分野で使われています。現在、塩ビ系の廃棄物は年間約100万トンと想定されており、その内約30万トンはリサイクルされています。塩ビはプラスチック系素材の中では比較的リサイクルが進んでいますが、リサイクル品の用途が限られているという状況にあります。こうした状況の中で、更にリサイクル率を高めつつ、塩ビ廃棄物の再原料化の方向にも大きな道を開くプロセスであると考えています。

 当社は、昨年6月に『環境ソリューション部』を立ち上げ、土壌・地下水汚染浄化ビジネス、生ごみなどのバイオマス(有機系廃棄物)、廃プラスチック、廃家電、廃自動車などのリサイクルに取り組んでいますが、その中で、塩ビのリサイクルを廃プラスチックリサイクル事業の柱の一つと位置付け、強化を図って参ります。当面は、電線被覆廃材と廃農ビを対象にした塩ビ・リサイクル事業の具体化に注力しますが、将来的には本プロセスを家電、自動車などのシュレッダー・ダストなどに適用させることで、リサイクル率の向上が可能となるよう、更なる技術開発を推進して参ります。

以 上

 

【本プロセスの特徴】
1. 処理技術のフロー
 1) 予備粉砕工程 塩ビ系混合廃棄物を適当なサイズに粉砕。
 2) 溶解工程 塩ビ(コンパウンドを構成する可塑剤、添加材等を含む)を選的に溶解する溶剤(ケトン系溶剤)を用いて、塩ビのみを溶解させ、不溶なその他成分と分離。
 3) 沈殿工程 溶剤中に溶解した塩ビ溶液からスチーム・ストリッピング操作により溶剤を蒸発させ、塩ビを粒状に固化沈殿させ回収する。再生品はバージン材と比べても物性が劣化しておらず、再利用が可能。
 4) 溶剤回収工程 蒸発させた溶剤を冷却凝集させ、溶解工程に循環再利用。

 

(フロー図)


2. 処理技術の特長
1) 塩ビ系混合廃棄物から塩ビを分離し、マテリアルリサイクルを実現できます。
2) 回収された塩ビは、バージン材と比べ物性的に大きな遜色はなく再利用が可能とな
なります。
3) 可塑剤や添加剤も塩ビとともに溶出するため、再利用する場合に可塑剤、添加剤を
加える必要がないというメリットがあります。
4) 塩ビ回収工程において、可塑剤や添加剤を投入して成分調整することも可能です。

 

3. ビニループプロセスの実績
1) 2002年2月、イタリア フェラーラ市にて商業第一号機が運転開始
・ 設備能力:10,000トン/年(塩ビ系廃棄物処理量)
・ 対象廃棄物:電線被覆廃材
2) 実証プラントによる、種々塩ビ系廃棄物のサンプル処理を行い、欧州及び日本にお
いてバージン材と遜色のない塩ビコンパウンドとしての高い評価を得ている。
3) ドイツ、フランス、英国、スペイン、カナダ等欧米各国で十件を超える事業化計画
もあり、塩ビ回収プロセスとしての注目を浴びている。

 

 

【ソルベイ社の概要】
会社名 Solvay S.A
本社 ベルギー・ブリュッセル市
設立 1863年
事業内容 化学品、プラスチック材料、プラスチック加工、医薬品の製造、販売
連結売上高 87億ユーロ(2001年)
従業員数 31,400人(2001年末)
代表者 ダニエル・ジャンセン男爵(Baron Daniel Jansen)


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