新還元溶解製鉄法「ITmk3」実証プラントの操業開始について


2003年6月23日

新還元溶解製鉄法「ITmk3 (アイティ・マークスリー)」実証プラントの操業開始について
〜商業機初受注に向けての大きな壁をクリア〜

 当社が米国ミネソタ州政府及び民間事業者と共に、ミネソタ州で進めている「メサビナゲット プロジェクト(ITmk3実証プロジェクト)」の実証プラント建設が完工し、5月下旬より実証運転を開始しました。開始直後の5月24日〜25日には、5トンの粒鉄生産に成功し、6月7日からは24時間運転で毎時2トンの試験生産を実施しています。また、13日にはスティールダイナミックス社のインディアナ州・バトラー製鉄所に初出荷し、電気炉での溶解テストで好結果を得ました。今後は35日間連続運転を行った後、生産を中断し設備を点検する予定です。本実証プラントは年間25千トン規模であり、商業機(500千トン)初受注に向けての大きな壁をクリアしたことになります。

 本プロジェクトでは、昨年3月に諸契約に調印した後、設計および資機材の調達、実証プラントの建設を進めてきました。今後は、1年間の実証運転を経て、パートナーの間での合意が得られる場合には商業機の建設に進む手順となります。建設には環境申請も必要となる為、商業機の生産開始は2006年を予定しています。

 当面の受注ターゲットとしては、鉄鉱山会社を想定しています。山元で直接、純度の高い粒鉄を取り出し高付加価値化すれば、鉱石をそのまま輸送するケースと比べ、重量比で約50%、体積比で約90%減らすことが出来、大幅な輸送コストならびに輸送に伴うCO2の排出量を削減することができます。

 
◆ITmk3(Iron making Technology Mark Three)とは、 
当社が開発を進めてきた次世代の新製鉄法
高炉法(第一世代)、直接還元製鉄法(第二世代)に続く「第三世代」の位置付け
従来製鉄法と異なり、低品質の粉鉱石と粉炭を還元剤として使用
粉鉱石と粉炭を造粒した上で、回転炉床炉(RHF)に投入し、非常に短時間(10分程度)で、RHF内部にて還元・溶融・スラグ分離を一気に行い、高炉の溶銑並みの純度(96〜98% Fe、2〜4% C)の粒鉄を製造するプロセス
商業機は500千トン/年の生産規模を想定

◆ITmk3の特長とメリット

(1) 従来の製鉄法と比べCO2排出量を20%削減することで、地球環境保全への貢献が可能となる。
(2) 原料の還元・溶融・スラグ分離を10分程度で行う。これは、従来製鉄法に比べ、極めて短時間である。(高炉法では還元に約8時間、直接還元製鉄法では約6時間を要する)
(3) 設備費が従来の製鉄法に比べ半分以下に抑えられる(同規模の銑鉄を製造する前提で比較すると、高炉法に比べ初期投資額が半分以下)
(4) 先進工業国のみならず、鉄鉱山の山元にも立地が可能となる。


本プロセスの確立によって、環境に優しく、生産性やコスト面で競争力のある製鉄法の提案を世界規模で行っていける。

 
◆メサビナゲット プロジェクトとは、 
ITmk3を商業炉に近いスケール(年間25,000トン)で実証するプロジェクト 
2001年9月に推進母体となる事業会社『メサビナゲット社』を設立
『メサビナゲット社』には、当社の他、クリーブランドクリフス社(鉄鉱石鉱山会社)、スティールダイナミックス社(電気炉メーカー)が出資する他、ミネソタ州政府が融資している。
2002年からは、米国エネルギー省(以下:DOE=Department Of Energy)が本プロジェクトに対し、補助金を交付
プロジェクト全体の投資額は、約2,600万ドル(DOE補助金200万ドル含む)

【開発の経緯】
1996年7月 当社独自で、研究開発をスタート
1999年10月 当社加古川製鉄所内のパイロットプラントで連続操業の実証に成功
2000年12月 加古川パイロットプラント(3,000トン規模)での実証試験を完了
2001年9月 ミネソタ州での実証プロジェクトへの参画を決定
2002年3月 『メサビ・プロジェクト』の契約が発効、デモプラントの建設を開始
2003年5月 デモンストレーションプラントが完工、実証運転を開始

【今後の展開】
2004年6月 実証運転を終了し、並行して商業機の建設準備を本格化(予定)
2006年 商業機第一号の操業開始(予定)

【米国エネルギー省からの補助金交付について】
 本プロジェクトは、米国エネルギー省(以下:DOE=Department Of Energy)から2002年を対象に年間200万ドルの補助金の交付を受けるなど、全米規模で関心が高まりつつあります。DOEは「次世代産業(Industries of the future)」と銘打った戦略的研究開発を推進しており、幅広い産業分野の研究開発プロジェクトに補助金を交付しています。研究の対象には、次世代の製銑・製鋼技術を初めとする60項目以上の鉄鋼関連開発プロジェクトも含まれており、本プロジェクトもその適用事例の一つです。

以 上


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