ポリマーアロイに関する技術提携と今後の事業展開について


                                                          1997年11月17日
                                                          株式会社神戸製鋼所
                                                          ドイツ・バイエル社

   ポリマーアロイに関する技術提携と今後の事業展開について

 *1株式会社神戸製鋼所(以下神鋼)と*2ドイツ・バイエル社(以下バイエル)は、
高性能でかつ安価なポリマーアロイ(2種類以上の樹脂を組み合わせて、単体では難
しい特性や機能を実現した材料)に関し技術提携を行い、このほど日本、台湾などア
ジア・太平洋地区でバイエルの登録商標『BAYBLEND (バイブレンド)K』の
名称で家電、パソコン、携帯電話、並びに周辺機器メーカーなどの薄肉成形品用途に
販売していくことで合意し、本格的な事業展開を開始しました。
 なお、『BAYBLEND K』の製造はドイツのバイエルの生産設備で行い、販売
は神戸製鋼が行います。

 ポリマーアロイは樹脂の機能改良技術として広く活用されており、ポリフェニレン・
エーテル(PPE)樹脂とポリスチレン(PS)樹脂を組み合わせた変成PPEや、
ポリカーボネート(PC)樹脂とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)
樹脂を組み合わせたPC/ABSなどがその代表的なものです。これらは主に自動車
の内装品、OA・AV機器のキャビネットケースなどに使用されています。

 今回両社が開発した『BAYBLEND K』はPC/ABS樹脂を改良したもので、
他のエンジニアリングプラスチックと比較して、耐衝撃性や流動性に優れており、ノ
ートパソコン、携帯電話、AV機器並びにその周辺機器用として板厚1.5mm以下と世
界最小の肉厚が可能になりました。さらに通常、難燃性を付与するためにブロム(臭
素)系の難燃剤を添加しますが、ブロム化合物はダイオキシンの発生の可能性が高い
ため、『BAYBLEND K』では環境への配慮から一切使用しておらず、欧州のエ
コラベル(環境適合製品認定証)の中で最も権威のある*3ブルーエンジェルマークの
取得が可能となります。なお、バイエルはこのブロム系難燃剤を使用しないPC/A
BS樹脂の基本特許を保有しています。
 樹脂の燃焼性は火災防止の立場から厳しい規制がなされていますが、『BAYBLE
ND K』はアメリカのUL規格で最も難燃性の高いグレードUL94 V0にも対応が可能
です。

 PC/ABS樹脂は、他のエンジニアリングプラスチックと比較して、コストが安く、
靭性・成形性及び外観品質も良好なため、ブロムを添加しなければ難燃性を付与でき
ない難燃ABSや変成PPEにとって代わる樹脂材料として注目を集めています。そ
の中で『BAYBLEND K』はPC/ABS樹脂の主流となると考えられます。

 神鋼は高分子材料の開発拠点の一つである英国研究所を中心としてPC/ABS樹
脂の材料配合を中心とした開発を行ってきました。その結果、強度と成形性に優れた
PC/ABS樹脂の開発に成功し、製品の薄肉化に目処をつけていました。さらに、
神鋼は長繊維強化薄肉成形の分野では世界的な評価を得ていますが、今後市場の拡大
が見込まれるPC/ABS樹脂の事業展開を図るには、この分野での高い生産技術と
販売実績を有するパートナーが必要と考えていました。一方バイエルは世界有数の総
合化学メーカーとしてPC/ABS樹脂の生産において世界中に幅広い実績を持つと
ともに、ノンブロム難燃剤に関する高い技術力と基本特許を有しており、神鋼の高度
な薄肉化技術における幅広い実績に着目していました。このような状況から、両社の
ニーズが一致し、技術提携するとともに商品化・量産化の検討を図り、共同で事業展
開することに合意したものです。

 今回の技術提携により、両社の成形材料事業の基盤強化が図られたことで、今後さら
にワールドワイドな展開を積極的に行っていく考えです。

(会社概況)
*1株式会社神戸製鋼所
社長    :熊本昌弘
従業員数:13,437人(96年度末)
売上高  :11,419億円(96年度)
当期利益:216億円(96年度)

*2バイエルグループ
社長    :Dr.Manfred.Schneider
従業員数:142,000人(96年12月末)
売上高  :486億ドイツマルク(96年)
当期利益:27億5千万ドイツマルク(96年)

(語句説明)
*3ブルーエンジェルマーク
1978年に世界に先駆けて当時の西ドイツで導入されたエコラベル制度で、特に環
境保全を考慮した製品品目や企業の環境に対する姿勢などを知るための重要な指標の
一つで、製品のライフサイクル全体を通した環境負荷を評価の考え方としているため
認定基準の厳しい環境ラベルとして知られています。



                                                                        以上


        ホームへ
             ひとつ上のページへ