2017年 年頭の辞(要旨)

2017年1月5日

株式会社神戸製鋼所
代表取締役会長兼社長 川崎博也

1. はじめに

~コンプライアンスの徹底・安全は企業存立の根幹~

明けましておめでとうございます。新年の門出に際し、私の所信も含め、ご挨拶させて頂きます。

まず申し上げたいのは「コンプライアンスの徹底」についてです。製造業にとって生命線となる「品質」において、コンプライアンス違反を行っていた事実が発覚しました。
猛省すると共に、再発防止に向け、制度・ルールの見直しや厳格化を行い、「コンプライアンス優先」の意識を徹底して、不正行為に繋がる誤った考え方を改善していきます。経営を預かる身として、自らが先頭に立ち問題解決にあたります。

「安全」についても、災害発生件数がほぼ同水準に止まっており、種々の取り組みが未だ成果を出すに至っていないと言わざるを得ません。
安全の確保はものづくりの原点であり、コンプライアンスの徹底と並び、企業存立の根幹を成します。「安全は絶対である」との強い信念のもと、日々の業務に専念されることを改めて要請致します。

2. 昨年を振り返って

~収益確保に向けて全力を尽くす~

昨年4月に新しく「KOBELCO VISION “G+”」を打ち出し、「素材、機械、電力を3本柱とした事業体確立」に向けて取り組んできました。
今中期経営計画の前半2年間は、一過性との認識ながら、加古川製鉄所の高炉改修や上工程集約の影響から、険しい道のりを覚悟しておりましたが、取り巻く事業環境は、更に厳しさを増しています。
上期には円高の進行により、素材系・機械系事業で輸出を中心に採算が悪化し、中国経済の低迷を受けた建設機械事業では、販売不振が継続しています。更に原料炭の高騰影響も加わり、鋼材事業の業績が一段と下押しされたことで、2016年度の連結経常損益は現時点で100億円を見通しており、先々も依然予断を許しません。

2016年度もあと3ヶ月となる中で、我々は収益確保に向けて全力を尽くさなければなりません。原料炭の高騰に伴うコスト上昇分を、早期に販売価格に転嫁することが喫緊の課題です。加えて当社グループ全員がそれぞれの立場で、目前の課題に注力し着実に歩を進めていくことが、今後の成長に繋がるものと信じています。

3. 2017年度に向けて

~「安定的に稼ぐ力」の向上を目指す~

今後を見通しても、原料・中国経済など楽観視できる要素は見当たらず、英国のEU離脱や米国での新政権の誕生など、不確定要素も生じてきています。
こうした難局においても、我々はコスト競争力の強化や将来の成長分野の捕捉、安定収益基盤の確立に向けて、着実に策を講じてきており、今後もその手は緩めません。収益構造の再構築を図る「守り」と、成長分野で事業拡大を図る「攻め」の両立が、事業の柱を確かにし、「安定的に稼ぐ力」を有した強靭な事業体への変革を叶えるものと信じてやみません。

「守り」の面では、鋼材事業の上工程集約や、建機事業の中国ビジネス再建といった構造改革を敢行し、利益とキャッシュを着実に積み上げ、成長投資への原資を確保する必要があります。特に建機事業では、中国での生産体制見直しと販売リスク管理の徹底によりガバナンスを強化し、厳しい販売環境下でも、収益が担保される体質とすることが必要です。
また、昨年より立ち上げが進む、鞍山鋼鉄とのハイテンJV、天津アルミパネル材工場、北米油圧ショベル工場、タイ線材圧延JVなどの生産を軌道に乗せ、確実に収益に結び付けていかなければなりません。

一方「攻め」の面では、「輸送機の軽量化」と「エネルギー・インフラ」に経営資源を投下し、成長戦略を推進していきます。
自動車分野では、燃費や安全性向上といったニーズを背景に、軽量化に向けた動きが加速しており、ハイテン、アルミ、溶接材料を有する当社グループへの期待は高まっています。マルチマテリアル化を実現するソリューション技術を鍵に、1,000億円規模の戦略投資を実行し、自動車メーカーへの素材サプライヤーとしての地位を、確固たるものにしていきます。
航空機分野でも、燃費規制に伴う軽量化の観点から、航空機用チタンの存在感が増しています。チタン新溶解炉を確実に立ち上げ、機械加工等の技術開発を進捗させ、国内完結型サプライチェーンの実現について検討を開始します。
エネルギー・インフラ分野では、寡占状態にある大型ターボ圧縮機市場に参入します。4月稼働の世界最大級の試運転棟を武器に、安定的に受注を確保していくことが当座の目標です。また、水素関連ビジネスでは、水素ステーション総合テストセンターを最大活用し、燃料電池車の需要拡大に備えると共に、具体化が進む東京オリンピック関連案件への継続的な受注努力が求められます。
電力事業では、引き続き安定稼働に努めると共に、真岡プロジェクトは建設を遅滞なく進め、神戸プロジェクトは環境アセスメントを着実に進捗させることで、第3の事業柱としての地歩を固めていきます。

「KOBELCO VISION “G+”」は、今年2年目を迎えます。厳しさを増す外部環境の影響もあり、今年も困難な道のりを覚悟しなければなりませんが、今中期経営計画の後半年には、明るい未来が見えてくると信じています。我々全員が、目標への道筋を共有し、解決すべき課題に対し真正面から向き合い、乗り越えていくための「行動」を起こすことを要請致します。

4. 結びに

当社グループの安定と成長には、「安全」「安定生産」「環境・防災」「コンプライアンスの徹底」が必要不可欠です。誰しもが、まずは問題を「起こさない」ためにはどうすべきかを考え、行動に移すことが求められます。それでも問題が発生してしまった場合は、「早く見つけて」「早く消す(解決する)」ことに全力を注いで下さい。

今中期経営計画の達成のため、皆さんが必ず実現するという強い信念と行動力を持ち、私と共に将来に向けた大きな一歩を踏み出して頂くことを期待しています。

結びに、従業員の皆さん、ならびにそのご家族の方々が、幸多く喜びに溢れた1年となることを祈念致しまして、私からのご挨拶とさせて頂きます。

(注記)プレスリリースの内容は発表時のものです。販売がすでに終了している商品や、組織の変更など、最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。

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