造船分野向け溶接ロボットシステムの開発・販売について

造船大組立工程における溶接施工の生産性向上・省人化に貢献

2017年10月4日

株式会社神戸製鋼所

当社は、船舶建造時に大型ブロックを組み立てる工程(以下、造船大組立)において、これまで適用が難しかったロボットによる自動溶接を可能にする造船大組立ロボットシステムを開発し、本年より販売を開始しました。本システムは、①ICTを活用した自動溶接ソフトウェア「SMART TEACHING」、②小型溶接ロボット「ARCMANA30S」、③溶接ワイヤ「FAMILIARCDW-100R」、④IoTを活用した安定生産支援システム「AP-SUPPORT」で構成しています。

既に国内の造船メーカーに導入されており、従来の溶接作業時間に対して2割程度の削減に繋がっているとの評価を頂くなど、溶接作業の効率化に大きく貢献しています。また、造船現場における自動溶接は、国土交通省が推進する“i-Shipping”(海事産業の生産性革命)において、「生産性向上」や「省人化」に寄与する技術として期待されています。

①自動溶接ソフトウェア「SMART TEACHING」について

造船大組立は、溶接の対象物の形状が一品一様であるため、膨大な数のロボットの動作パターンを作成する必要があり、自動化は難しいとされてきました。「SMART TEACHING」は、当社が長年に亘り蓄積した溶接施工技術とICTを活用し、一般的に造船の設計で使用される3D-CADで作成された設計図から、ブロックの溶接線を自動で抽出し、ロボット教示プログラムを自動生成できるソフトウェアです。作業現場でのロボット動作パターンの作成作業は不要であり、大組立工程の溶接の自動化率向上を実現しました。

②小型溶接ロボット「ARCMANA30S」について

造船大組立は、作業スペースが狭く、溶接適用箇所が狭あいなため、部材の干渉を避けながらロボットを搬送・設置する必要がありました。「ARCMANA30S」は、溶接に欠かせないアークセンサの機能を維持するに十分な剛性を確保した上で、モータおよびケーブルをアームに内蔵することで、当社標準機比で質量83%減の小型化を実現しました。

また、これまでは、部材を組み合わせる過程で生じた隙間や、溶接始終端の角巻部※1における自動化は困難とされてきましたが、ロボットの機能と当社施工ノウハウで生成する最適条件を組み合わせることで、5mmまでの隙間がある箇所や、角巻部における溶接の自動化を可能にしました。

③溶接ワイヤ「FAMILIARCDW-100R」について

造船大組立では、ロボット適用箇所の溶接時間の約2/3を占める立向上進溶接に対し、高能率化へのニーズがあります。「FAMILIARCDW-100R」は、水平すみ肉溶接※2で必要とされる形状を維持しつつ、立向上進溶接※3の速度アップニーズに応えたロボット専用の全姿勢用ワイヤです。自動溶接ソフトウェア、小型溶接ロボットとの組み合わせで、高品質・高能率な溶接を提供します。

④安定生産支援システム「AP-SUPPORT™」について

「AP-SUPPORT」は、IoT技術を活用し、i-Shippingで推進されている「工場の見える化」、溶接作業の生産効率化に寄与するシステムで、下記機能を有します。

  • ロボットの溶接条件、過去のトラブル発生などの生産履歴を蓄積し、トレーサビリティを確保することで、お客様の品質向上に寄与します。
  • ロボットの稼働状況や溶接状況のデータを遠隔地へリアルタイムで送信し、生産技術部門でのトラブル発見・解決までの時間を短縮します。
  • 工場間をネットワークでつなぐことで、生産性改善に役立つ情報の共有を可能にします。国内マザープラントから海外プラントへの生産支援にも有効なシステムです。

当社は、2016-2020年度グループ中期経営計画において、溶接ソリューションの推進を掲げており、溶接工程の生産性向上に寄与する自動溶接の適用範囲拡大に取り組んでいます。今後も、溶接材料・溶接ロボットシステム・溶接施工技術の総合力のもと、お客様の課題解決につながる新たな溶接技術を開発・提案することで、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」を目指して参ります。

(ご参考)

ARCMAN™A30Sとロボットキャリー

ARCMAN™A30Sとロボットキャリー

造船3Dモデル(上段)と実機での適用状況

造船3Dモデル(上段)と実機での適用状況

(用語)

角巻溶接、水平すみ肉溶接、立向上進溶接の説明画像

関連リンク

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