当社グループにおける不適切行為に関するご報告

2018年3月6日

株式会社神戸製鋼所

当社及び当社グループ会社(当社グループ)における不適切行為に関しまして、お客様、お取引先様、株主様そのほか多数の皆様に多大なるご迷惑をお掛けしておりますこと、改めて深くお詫び申し上げます。

当社は、当社グループの過去1年間(2016年9月~2017年8月)の出荷実績に対する品質自主点検により発覚した不適切行為(公的規格又は顧客仕様を満たさない製品等につき、検査結果の改ざん又はねつ造等を行うことにより、これらを満たすものとして顧客に出荷又は提供する行為。以下「本件不適切行為」といいます。)について、2017年10月26日、松井巖氏(元福岡高検検事長、弁護士)を委員長とする外部調査委員会を設置して調査を引き継ぎ、その後、同委員会による調査に全面的に協力してまいりました。

今般、外部調査委員会の調査結果を受け、当社の品質ガバナンス再構築検討委員会や品質問題調査委員会における検討結果と併せて、当社として、外部調査委員会の調査によって明らかになった事実関係をご説明するとともに、その原因分析及び再発防止策を報告するため、当社取締役会において、本日付「当社グループにおける不適切行為に関する報告書」(以下「本報告書」といいます。)の公表を決議いたしました。本報告書の概要は、以下のとおりです。

1.本件不適切行為に関する事実関係

2017年10月26日時点で不適合製品の納入先として公表したお客様は 525社でしたが、外部調査委員会による調査の結果、表1のとおり、あらたな不適切行為が判明いたしました。

あらたな事案は、10月26日の時点で不適切行為が行われた疑いがあると公表しておりました4件に加え、当社グループの品質自主点検に対する外部調査委員会の検証・調査過程において判明したものです。

あらたな事案につきましても、既にお客様へは連絡済であり、その一部については、安全性の検証も完了しております。今後も安全性の検証を最優先に進めてゆく所存です。

表1:不適切行為が確認された拠点と安全性の検証状況等

2018年3月6日現在

大分類 会社名 部材 主な用途 2017年10月26日公表 外部調査委員会設置
(2017年10月26日)
以降
お客様数 安全性検証 お客様数 安全性検証
アルミ・銅 (株)神戸製鋼所
アルミ・銅事業部門
アルミ板 缶材
自動車
57 52 7※4 6
アルミ
鋳鍛造部品
航空機
鉄道車両
67 67 4※5 2
アルミ
押出品
自動車
鉄道車両
34 34 - -
銅板 半導体
端子
38 38 2※6 2
(株)コベルコ
マテリアル銅管
銅管 空調 23 23 88※7 87
神鋼メタル
プロダクツ(株)
銅合金管
モールド
電機
製鉄機械
176 176 29※8 1
国内子会社 1社
海外子会社 3社※2
銅管
銅板条
アルミ線材
空調
端子
36 36 - -
神鋼真岡総合サービス(株) アルミ板 材料試作 - - 1※9 0
その他 (株)コベルコ科研 ターゲット材
試作合金
FPD
光ディスク
試作合金
70 70 14※10 13
腐食分析 腐食分析
(株)神戸製鋼所
鉄鋼事業部門
鉄粉本部
鉄粉 焼結部品 1 1 - -
国内子会社等 2社
海外子会社等 2社※3
鋼線
ステンレス線
熱処理
軸受
ばね
22 22 - -
神鋼鋼板加工(株) 厚板加工 厚板加工品 1 1 - -
(株)カムス 熱処理 熱処理 - - 1※11 1
(株)神戸製鋼所
機械事業部門
機械 産業機械
汎用圧縮機
- - 10※12 10
神鋼造機(株) 機械 産業機械 - - 3※13 3
(株)神鋼環境
ソリューション
水分析 水分析 - - 4※14 4
525※1 520 163※1 129

網掛け部分は、外部調査委員会設置以降にあらたに不適切行為が判明した拠点。

  • ※1 2017年10月26日公表のお客様525社と外部調査委員会設置以降にあらたに判明した不適切行為に係るお客様163社は、いずれものべ数です。

  • ※2 神鋼アルミ線材(株)、Kobelco & Materials Copper Tube (M) Sdn. Bhd.、Kobelco & Materials Copper Tube (Thailand) Co., Ltd.、蘇州神鋼電子材料有限公司

  • ※3 日本高周波鋼業(株)、神鋼鋼線ステンレス(株)、江陰法爾勝杉田弾簧製線有限公司、神鋼新确弾簧鋼線(佛山)有限公司

  • ※4 ~※14 の不適切行為の概要は本報告書の以下のア項内に記載。
    (※4)P9:1(1)本件不適切行為①②③,(※5)P15:1(4)②、(※6)P12:1(2)、(※7)P24:3(1)①③、(※8)P26:3(2)②③、(※9)P30:3(4)、(※10)P37:4(7)②,P38:4(8)、(※11) P33:4(4)、(※12) P22:2(2)①②③,P23:2(3)、(※13) P34:4(5)①②、(※14) P35:4(6)①②③

本件不適切行為全体における具体的内容としては、例えば、顧客仕様を満たさない検査結果について満たす数値に改ざんする行為、実際に測定が行われていないにもかかわらず、測定したかのように試験結果をねつ造する行為などが確認されました(本報告書 9~39 ページ)。

外部調査委員会による調査の結果、本件不適切行為全体を通じて役員の関与が認められたのはアルミ・銅事業部門のみでした。具体的には、2名の執行役員は、本件不適切行為が行われていた工場での勤務経験があり、その当時、本件不適切行為に直接関与したことはなかったものの、その存在を認識しており、これを自身の上司であったアルミ・銅事業部門長等に報告等をしていませんでした。また、他の執行役員1名は、昨年4月に本件不適切行為が行われていることを認識しましたが、規格外れの発生及び規格外製品の出荷を徐々になくしていくことを基本方針として決定し、製造工程の改善や受注の一部停止を指示するにとどまっておりました。

過去の役員では、2名の取締役・執行役員が役員就任以前に本件不適切行為に直接関与していたことが認められ、役員就任後もそれを取締役会に報告せず、また、それを中止・改善させる等の措置を講じていませんでした。

表1のとおり、本件不適切行為は、アルミ・銅事業部門のみでなく、その他の事業部門や当社グループ会社でも行われていたものであり、当社は、当社グループの多くの拠点で行われていた事実を重く受け止めております。

2.本件不適切行為の原因分析

外部調査委員会による調査結果と当社における検討から、本件不適切行為を引き起こした原因は、(1)収益偏重の経営と不十分な組織体制、(2)バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下、(3)本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続、の三つに集約されると考えています。 具体的には、以下のとおりです。

(1)収益偏重の経営と不十分な組織体制

本社の収益評価に偏った経営姿勢に従って、各事業部門は工程能力を十分に検証することなく受注をするといった生産至上主義に陥りました。加えて、各事業部門への大幅な権限委譲が本社による統制力の低下を引き起こし、本社による品質コンプライアンス統制が十分に機能しませんでした。また、本件不適切行為が早期発見に至らなかったガバナンス上の要因として、過去に本件不適切行為と類似の行為が発覚した際に当社経営陣が抜本的な対応を行わなかったことや、事業部門内における監査が十分に行き届いていなかったことが挙げられます。

(2)バランスを欠いた工場運営と社員の品質コンプライアンス意識の低下

工程能力に見合わない顧客仕様等に基づく製品の製造、受注の獲得と納期の達成を至上命題とする生産・納期優先の風土、事業部門を横断した人事交流や人事異動がほとんど存在しない閉鎖的な組織、適切な教育・研修や懲戒処分が行われてこなかった状況、顧客仕様を逸脱しても、一定程度ならば安全性の問題はないため、出荷しても構わないといった誤った考え方、これらの事情と相俟って引き起こされた社員の品質コンプライアンス意識の鈍麻が、本件不適切行為の動機となり、またそれを継続させた要因となったものと考えられます。

(3)本件不適切行為を容易にする不十分な品質管理手続

本件不適切行為を招いた品質管理プロセス上の問題として、改ざん又はねつ造を可能とする検査プロセス、単独かつ固定化した業務体制、およそ遵守することが困難な社内規格の設定がありました。

3.本件不適切行為に対する再発防止策

上記の原因分析に基づき、外部調査委員会からの提言も踏まえて当社がとりまとめた、本件不適切行為に対する再発防止策は、以下のとおりです。

(1)ガバナンス面-品質ガバナンス体制を再構築すべく、以下を実施いたします。

(2)マネジメント面-品質マネジメントを徹底すべく、以下を実施いたします。

(3)プロセス面-品質管理プロセスを強化すべく、以下を実施いたします。

4.おわりに

当社グループによる品質自主点検や外部調査委員会による調査の結果明らかとなった本件不適切行為に係る事実関係や、当社が過去複数のコンプライアンス事案を起こしてきたことも考え併せると、当社は、そのコンプライアンスに関する体制のみならず、組織風土や役員・社員の意識などの面で根深い問題を抱えているといわざるを得ません。

本件不適切行為の原因を究明していく過程で、当社の品質保証に関するマネジメントや業務プロセスにおける課題はもちろんのこと、品質問題を超えたガバナンス全般を含むより根本的な改革に取り組む必要性が明らかになりました。また、取締役会のあり方、事業部門制のあり方、人事配置・育成や経営計画策定のあり方等、今後、さらに検討を深めていくべき課題も認識しております。

今後も、最優先事項として安全性の検証に取り組むとともに、再発防止策の項で述べた諸施策を、経営トップが先頭に立ち、神戸製鋼グループの全社員で真摯にかつ愚直に実行していくことを通じて、組織体制、企業風土の抜本的改革を進める所存です。

約半年間の調査の過程で、お客様をはじめとする関係者の皆様には、安全性の検証などにおいて多大なご協力をいただくとともに、大変貴重なアドバイスやご意見等もいただきましたこと、改めてお礼申し上げます。神戸製鋼は、創業から 112 年余り、お客様、お取引先様、株主様その他多数の関係者の皆様からの「信頼」を大切にして事業を営んでまいりました。その「信頼」を失ったことは痛恨の極みであります。今回の品質問題に対する当社の責任を果たし、再び「信頼」していただける会社に生まれ変わるために、私共は、「ものづくりの原点」に立ち返り、確かな品質こそが「信頼」の核心であることを改めて心に刻み、不退転の決意を持って再発防止に努めてまいります。

関連リンク

 

ページトップへ