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プレスリリース

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2006年 年頭の辞

2006年1月5日

株式会社神戸製鋼所
代表取締役社長 犬伏泰夫

明けましておめでとうございます。新年を迎えるにあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

昨2005年の神戸製鋼グループを取り巻く経済環境は、総じて良好に推移しました。このような中、私たちは顧客からの要請に応えるべく、創意工夫を重ね、高水準の操業を確保する努力を続けてきました。また「特長ある製品」の拡販を進めるとともに、原材料やエネルギーコストの高騰吸収に向けた販売価格の改善にも取り組んでまいりました。
その結果、本年度の連結経常利益は、当初予算を大幅に上回る1,650億円を計上出来る見込みです。これは、史上最高を記録した昨年度の約1.5倍に相当します。
財務体質の改善も図ってまいりました。利益の増加に加え、グループ全体での資金効率の向上もあり、今年3月末の連結外部負債は6,000億円を切るところまで視界に入ってきています。これは、2003年3月末からの3年間で、約3,000億円もの負債を削減したことになります。
これらの成果は、目標に向かって果敢にチャレンジして来られた皆さんのご努力の賜物です。ここにあらためて、深く感謝申し上げます。

一方、昨年は、複数の事業所において死亡災害が発生したことを始め、全社で災害や設備トラブルが頻発すると云う、極めて憂慮すべき事態にありました。安全・防災は事業経営の基盤であり、全ての活動に優先します。そして、顧客からの信頼を得るために安定した生産活動を続けることも、私たちに課せられた命題です。災害やトラブルの連鎖を一刻も早く断ち切り、全員が緊張感と当事者意識を強く持ち、「安全で安心して働ける職場」を作り上げていくことを要請致します。
次に、この程度の収穫に甘んじてはならないと云うことを、敢えて付言したいと思います。目を外に向ければ、鉄鋼を始めとする競合他社の中には、私たちよりも高い利益率を上げている企業もあります。財務体質についても、彼らは目覚しい勢いで強化しつつあります。そして、製品の高度化とコストダウンに心血を注いでいます。私たち自身を振り返れば、好調な業績に紛れて見逃していることもあると思います。例えば「新製品の開発や拡販」「コストダウン活動」「業務の効率化や高度化」等、各々の目標の達成度合いを、客観的に見つめて下さい。他社に伍して、私たちが存在感を示していくためには、財務体質の改善を一層進め、事業競争力に一段の磨きをかけていかねばなりません。
足下の恵まれた外部環境が、未来永劫続くわけではないと云うことも申し上げたいと思います。景気には山谷があることを、皆さんも重々承知されている筈です。日本経済への強い影響を及ぼす米国や中国の動向如何では、現在は堅調に推移している景気も腰折れしないとは言い切れません。アジアでは、競合する製品の生産設備の新設や増強が、今後相次いで計画されています。既に足下では、素材分野において輸入材の流入が現実のものとなってきており、汎用品においては需給のタイト感が薄れつつあります。また原油価格は依然として高値で推移しており、製造コストを押し上げる要因となっています。顧客の業績も、業種や企業によっては斑模様です。私たちが進める販売価格の改善を、容易に受け容れて戴けるとは限りません。
これまで申し上げてきた通り、私たちには解決すべき多くの課題が残されているということ、そして事業環境が悪化する懸念があり、備えを怠ってはならないと云うことを、ご理解戴きたいと思います。

さて、現在、神戸製鋼グループは次期中期経営計画の策定過程にあります。2006年度は新計画の初年度として、収益構造の改革を着実に進め、更なる発展に繋げる重要な一年です。そこで、私たちが目指すべき方向について考えを申し述べたいと思います。
まず、一言で云えば、今後は「安定」と「成長」の両方を追うつもりですが、私の意識としては、前者に軸足を置きたいと思います。当社グループは基礎素材中心の業態であるため、マクロ経済の影響から免れることは出来ません。しかし風向きが変わっても、現在の収益レベルを大きく崩すことのない安定性を持つことが、株主や社員等、ステークホルダーの望んでいることであると考えています。
事業基盤を磐石にするための施策としては、まず「財務改善と投資のバランス」を重視したいと思います。一部の日系格付け機関において、未だA格の取得を実現出来ていないことに鑑みると、財務体質の改善は途上にあると認識せざるを得ません。
一方で、将来の成長に向けた設備投資・開発投資を実施し、コア事業の競争力を引き上げることも肝要です。他社との連携を上手く活用するとともに、事業の強化に資するならば、買収も選択肢の一つと考えています。戦略的な投資を行い「特長ある製品・技術・サービス」を伸ばして、収益の安定と向上を目指すつもりです。
以上のことを踏まえれば、資本市場において一定の評価を得られる財務の健全性と、必要な投資とのバランスを保つことが重要です。投入する経営資源については、足下の好業績に気を緩めることなく、慎重に計画を策定します。そしてひと度、意思決定を行った後は、最大限に投資効果を享受できるよう、果敢に進めてまいります。

次に申し上げたい点は「グループ経営の一層の深化」です。この一年余りの間に、理想とするグループ経営の在り方を追求していくための幾つかの経営施策を打ち出してきました。例えば2004年には、神戸製鋼の経営幹部と主要グループ会社の社長を構成メンバーとする「グループ経営審議会」を組織し、グループとしての経営目標と方針、重点課題を設定しています。そして、2005年度からは、従来の単体を基本とする計画に代えて、連結ベースで予算を策定し、フォローをしています。また、コンプライアンスや環境対応と云ったテーマについても、グループを挙げて注力しています。更に経営企画・財務・経理・人事・広報等のスタッフ部門を中心に、グループ横断機能の拡充を図ってきました。
経営のプラットフォームの部分において、グループ経営を推進する仕組みが出来上がりつつありますが、これを更に深めていくためには、皆さんの自覚が鍵となります。
同じ需要分野や顧客を抱える部門間での連携や、情報の共有化は進んでいるでしょうか。セクショナリズムに陥ることなく、顧客に関する情報を交換し、神戸製鋼グループが一体となって、相乗効果を創出していくような活動を是非進めて戴きたいと思います。また、素材から機械までの幅広い領域を持つ私たちは、技術開発においても、自部門のみならず周囲の技術を融合すれば、ユニークで革新的なアイディアや製品を生み出し、ビジネスチャンスを捉えることが出来る筈です。
このように、グループ経営は、単に連結会計等の外部からの要請に応える手段ではなく、自らを高めるための強力な武器になり得るのです。社会から見れば、神戸製鋼グループは一つのブランドです。従ってこれからは、グループに属する全員が一体となって「KOBELCO」のブランド価値を高め、この旗印を共有している各社の発展に繋げていくよう、行動して欲しいと願っています。そのために、まず皆さんには、身近な部門や人への関心を持ち、コミュニケーションを図り、情報と価値観を分かち合うことを、常に念頭に置いて戴きたいと思います。

神戸製鋼グループの務めは、時代のニーズにマッチした「特長ある製品・技術・サービス」を提供し、世の中に貢献していくことです。これを実現するため、今後も「ものづくり」の精神に拘る姿勢を貫いてまいります。そして、経営の安定感を増し、持続的な成長を遂げ、社会とともに発展していくことを目指します。皆さんにおかれましては、グループ、そして社会の一員であることを自覚し、視野を広く持って、日々の業務に取り組まれることを期待します。グループ全員の力を信じると同時に、一層の奮起を望みます。
結びに、皆さんとご家族の方々のご健勝とご多幸、そして職場の安全を切に祈念して、私の挨拶と致します。