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プレスリリース

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高機能チタン合金“KS Ti-9”のゴルフクラブへの採用拡大について

〜航空機用に開発したチタン合金にゴルフ業界が注目〜

2006年12月26日

株式会社神戸製鋼所

当社が開発したチタン合金“KS Ti-9(ケイエス タイナイン)”(*1)が、2006〜2007年にかけて発売される大手ゴルフクラブメーカーのSLEルール(*2)適合ゴルフクラブに相次いで採用され、受注が急拡大しています。本年9月に販売を開始したSRIスポーツ(株)の上級者モデル「スリクソン ZR-600ドライバー」に続き、このたびミズノ(株)の主力モデルである「MP CRAFT 425ドライバー」、「JPX E500ドライバー」への採用が決定しました。「MP CRAFT 425ドライバー」については今月より販売を開始し、「JPX E500ドライバー」についても2007年2月の発売を予定しています。

ゴルフ界では、SLEルールの導入により、ヘッドの反発係数(打球時のフェースのたわみ量)が制限されることになっています。従って、従来の合金を使って反発係数を抑える為にはフェースを厚くする必要性が生じます。その結果、ヘッドが重くなってしまうことから、軽量特性を維持しながら(フェースを厚くすることなく)、たわみを抑えることが可能な(剛性が高い)“KS Ti-9”のような材料が適していることになります。具体的には“KS Ti-9”を使用することにより、フェース部分の軽量化が可能となり、余剰重量をヘッドの他の部分に配分することが出来るため、設計の自由度が高まり、直進性の向上(飛ぶ方向がブレにくい)や低重心化による高打ち出し(打ち出し角度が高くなる)、低スピン化(過度なスピンを抑制する)を実現し、飛距離アップにつながります。

“KS Ti-9”は、航空機用に当社独自で開発を進めてきたα+β型合金(*3)で、高強度で冷間加工性に優れると共に、この種の合金では画期的な「冷間での連続コイル圧延による製造」を可能にし、大幅に生産効率を向上させた合金です。また、チタン合金の中では、剛性(=たわみ等、変形の起こりにくさ)(*4)の指標となるヤング率(*5)が非常に高い(従来のβ合金:80GPaに対して、140GPa)ことに加え、従来材に比べ比重も低い(従来のβ合金:4.8に対して4.5)ことから、SLEルール適合モデルの大型ヘッド・ゴルフクラブに適していると言えます。

当社は日本のチタン(純チタン/合金チタン)商業生産におけるパイオニアであり、インゴットの溶解から展伸材製造までを行う国内唯一のチタンの一貫、総合メーカーでもあります。自社溶解設備を駆使しながら、半世紀以上にわたって蓄積されたデータを基に、様々な材料開発に取り組んでおり、今後も主要需要分野の一つであるゴルフ用途に適した各種チタン合金の提案を行って参ります。

               
(*1)KS Ti-9 :Tiが約91%、残り約9%が(4.5%Al・2%Mo・1.6%V・0.5%Fe・0.3%Si・0.03%C)の組成。
比重が従来のβ合金=4.8に対して4.5と低く、かつ剛性(*3)の指標であるヤング率(*4)が従来のβ合金=80GPaに対して、140GPaとチタン合金の中でも非常に高い値を有している。
(*2)SLEルール :高反発ドライバーの使用を規制するルール。2008年1月1日以降、反発係数が基準値(0.83)を超えるクラブは公式競技ではゴルフ規則上使用できなくなる。SLEとは、スプリング効果(Spring-Like Effect)の略。
(*3)α+β型合金 :チタンは稠密六方晶(HCP)という結晶構造の金属であるが、合金化するとその中に体心立方晶(BCC)という結晶構造の相(β相)が現れる場合がある。高合金化し全体がBCCのβ相になったチタン合金をβ型チタン合金、β相を出現させる合金が少なく、β相とHCPであるα相が混在するチタン合金をα+β型チタン合金という。α+β型合金はβ型合金に比べると、冷間加工性は劣りますが、剛性が高く、比重が軽いのが特徴です。KS Ti-9はα+β型合金の中でも冷間加工性に優れるため連続コイル圧延が可能で、かつ剛性が非常に高いという特徴がある。
(*4)剛性 :材料の"たわみ"などの「変形し難さ」のこと。同じ力で材料を変形させた時に、その変形量が小さいほど剛性が高いことになる。
(*5)ヤング率 :剛性を指数化したもので、単位伸びあたりに必要な応力のこと。縦弾性係数ともいう。数字が大きいほど、同じ量を変形させるのに大きな力が必要になり(たわみにくくなり)、剛性が高い。したがって、ヤング率の単位GPaは力(応力)を表す単位となっている。

≪ご参考≫

【ミズノ株式会社】
事業内容 :スポーツ用品(野球、ゴルフ等)の製造、卸売、販売。   
売上高  :1,523億円(2006年3月期連結)
資本金 :261億円
従業員 :1,831人(2006年2月末現在)

※1906年創業の老舗総合スポーツ用品メーカー。様々な競技の用品を製造し、世界でもトップクラスのメーカー。

【SRIスポーツ株式会社】
事業内容 :スポーツ用品(ゴルフ、テニス)の製造、販売。
売上高 :550億円(2005年12月期連結)
資本金 :92億円
従業員 :326人(2005年12月末現在)

※2003年7月に住友ゴム工業のスポーツ事業部門が独立して設立。「DUNLOP」のブランド名で、ゴルフ・テニスの分野では国内トップクラスのメーカー。

【クラブ製品概要】
◆スリクソン ZR-600ドライバー(SRIスポーツ)
体積:440cc、発売日:06年9月、価格:68,250円、上級者向け
◆MP CRAFT 425ドライバー(ミズノ)
体積:425cc、発売日:06年12月、価格:89,250円、上級者向け
◆JPX E500ドライバー(ミズノ)
体積:460cc、発売日:07年2月、価格:78,750円、一般向け