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プレスリリース

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高機能抗菌めっき技術『KENIFINE(ケニファイン)』の水産養殖設備への採用について

〜利用技術の確立により、民間養魚場での導入を開始〜

2007年6月5日

静岡県水産技術研究所 富士養鱒場

株式会社神戸製鋼所

静岡県水産技術研究所富士養鱒場と(株)神戸製鋼所(以下:神戸製鋼)は、サケ科魚類*1養殖設備における器材の衛生管理を目的として、神戸製鋼が開発した抗菌めっき『KENIFINE(ケニファイン)*2』を利用する技術を確立しました。これにより、卵や用水の消毒に使われていた医薬品の使用量を低減し、比較的安価で衛生管理を行うことが可能となります。本技術は、山梨県の民間業者(緑養魚場)ほか、静岡県下の複数の民間養魚場においても導入されており、昨年秋からは養殖魚の出荷が始まっています。

本技術は、長い間一般的に使われていたミズカビ*3防除材である「マラカイトグリーン*4」が薬事法改定により2005年8月より使用禁止となるのを受けて、その代替技術候補として2004年から共同研究を開始し、実証試験を行ってきたものです。2005年8月以降は、パイセス*5などが卵消毒用の水産用医薬品として用いられていますが、食品の安全性に対する消費者の関心が高まっていることなどから、出来るだけ医薬品を使わず低コストに抑えたい養殖業界の要望に応える形で、このほど導入が実現しました。

静岡県内の養魚場等での2年半にわたる実地検証などを経て、本技術の特性(ケニファイン金網には静菌作用*6があり、ミズカビが付着し難い)、魚体への安全性(卵の発眼率*7・孵化率*8は良好で、成魚に与える悪影響もない)、ケニファイン器材の消毒手段(水産用イソジン、逆性石鹸*9が適している)などの確認を済ませました。これにより、民間養魚場の卵管理設備における本技術利用に際してのガイドライン・適用マニュアルの整備が完了したことになります。

また、神戸製鋼グループの神鋼鋼線工業(株)及びその子会社の神鋼鋼線ステンレス(株)では、実際に養殖設備で使われる孵化盆ネット向け抗菌金網用として、ケニファインめっきを施したステンレス鋼線の製造を開始しました。これまでの製網後めっきでは、鋼線交差部分の皮膜形成が難しく、菌の温床になっていましたが、めっき鋼線を網織り*10することで、この問題を解決しました。

今後は静岡県周辺に限らず、全国規模での本技術の導入普及を目指します。また、淡水だけでなく、海水での養殖についても適用拡大を図っていくなど、幅広い分野で養殖業界や食の安全に貢献していきたいと考えています。

*1 サケ科魚類:主としてサケ目(Salmoniformes)の魚類のこと。ニジマス、シロザケ、イワナ、アマゴ等が含まれる。
*2 KENIFINE(ケニファイン):神戸製鋼が開発した、優れた抗菌性を持つニッケル系の合金めっき技術(2004年「第27回日本金属学会技術開発賞受賞」)。淡水への耐食性が高く、従来の抗菌技術(抗菌塗装、抗菌ステンレスなど)よりも、抗菌や防かびや防藻、抗ウイルスにも有効であることが実証され、急性経口毒性試験など、抗菌製品協議会が定める各種安全性試験にも合格している。神戸製鋼では、本技術についてライセンス事業を行っており、開発が完了した2001年に最初の技術供与先が決まり、2002年より量産を開始した。その後、めっき技術の改良(耐変色処理や粉末化技術の開発、樹脂への適用化など)を行ない、現在9社(内、本契約6社、トライアル契約3社)にライセンス供与している。食品・飲料工場部材や計量器部材、空港・病院・福祉施設のドアハンドル、各種機械アクセサリ部品、空気清浄機部材などで実用化されている。
*3 ミズカビ:Saprolegnia属の真菌による病気の総称。魚類の体表や卵表面に、綿毛状の菌糸を寄生繁茂する真菌による病気を水カビ病と呼ぶが、マス類に発生する水カビのほとんどはSaprolegnia属が原因菌なのでミズカビとした。
*4 マラカイトグリーン:有機染色剤の一種。従来からミズカビ防除剤として、その水溶液が汎用されてきた。しかしながら、近年、世界的に、発ガン性が指摘されるようになり、各国で食品関連での使用が禁止されている。現在は我が国でも、養殖施設での使用が禁止されている。
*5 パイセス:マラカイトグリーンの使用禁止に伴って発売されている代替医薬品。合成抗菌性保存剤であるプロノポールを有効成分としている。マラカイトグリーンと比較し、かなり高価である。
*6 静菌作用:微生物の増殖を阻害あるいは阻止すること。微生物の活動を抑え、それ以上に増殖させないようにする。
*7 発眼卵:受精卵の発育段階が進んだ状態で、網膜色素が発達して眼が黒くなったもの。
*8 孵化率:孵化数を卵数で除した数字に100をかけた率。
*9 逆性石鹸:通常石鹸が水に溶けると脂肪酸陰イオンになるのに対して、逆性石鹸は水中で陽イオンになり、界面活性剤として作用する。殺菌剤や柔軟材、リンスの成分として利用される。
*10 網織り:網織りそのものは金網業者が行うもので難しいものではない。むしろ、母材であるステンレス鋼線に、複雑かつ強加工に耐え得る(めっきが剥離し難い)めっきを施す技術が優れている。