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プレスリリース

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建築用高性能鋼のフルメニュー化完了 80kg鋼と55kg鋼(鋼板および鋼管)の大臣認定を取得

2007年11月28日

株式会社神戸製鋼所

当社は、本年8月に建築構造用55kg(降伏点385N/mm2)鋼、同11月に建築構造用80kg(降伏点630N/mm2)鋼について、建築基準法37条第2号に基づく大臣認定を取得し、建築構造用高性能鋼板および鋼管のフルメニュー化を完了しました。これらの商品群は、高強度、高靱性、高い溶接性、品質の高い安定性を有しており、設計における自由度の向上、コストダウン、溶接施工性の向上が図れると共に、超巨大地震に対する安全性の実現に寄与しています。

近年、建築物の高層化、大スパン化、複合化に伴い、鉄骨構造には、より厚肉・高強度の鋼材が用いられるようになっています。また、兵庫県南部地震以降、超巨大地震に対する耐震性向上のため、鉄骨構造溶接部の高靱性化と機械特性の安定化が強く求められています。

神戸製鋼が今回フルメニュー化した建築用高性能鋼は、これまでコーベスーパータフネスシリーズで好評を得てきた「結晶粒の超微細分割(低カーボン多方位ベイナイト)技術」や新たに開発した均一強冷却TMCP技術を組み合わせることにより、両立が難しいとされていた高強度化と高靱性化、高溶接性の課題を解決することに成功し、母材や溶接継手における靱性ばらつきの大幅な低減と強度特性の安定化を実現いたしました。

現状使用されている主な高強度鋼材は、50kg、53kg、60kgでありますが、強度上昇による鋼材重量の低減効果と経済性および溶接施工性を勘案した場合、53kg鋼と60kg鋼の間を補完する55kg鋼材が求められています。この55kg鋼には、超巨大地震に対する安全性の観点から、靱性や機械特性の安定化が必要不可欠であり、これらの要求を十分に満足する鋼材はこれまでありませんでした。今回当社が大臣認定を取得した55kg鋼板と鋼管はこれらの特性を具備しており、今後、55kg鋼材の市場は拡大していくものと考えられます。
80kg鋼板については、これまで若干の納入実績がありますが、現状の高層建築における空間確保や超大型鋼構造物における使用要望などから、今後、需要は増加するものと予想されており、製造可能範囲を50mmから60mmに拡大し、80kg鋼板の大臣認定を取得しました。一方、高層建築物の柱をスマートにするといった意匠面での要望から、全ての強度レベルにおいて、厚肉細径の円形鋼管が求められています。当社はプレスベンドの円形鋼管を佐々木製鑵工業(株)と共同開発しており、80kg円形鋼管では業界初の大臣認定および建築の構造設計に必要な基準強度F値630N/mm2を取得しております。

なお、溶接施工面に関しては、既に多くの実績を有するコーベスーパータフネスシリーズで確立されてきた溶接施工技術や溶接材料を活用することが可能であるため、鉄骨の製造現場においても使いやすく、高効率な溶接が可能であることを確認しております。

現在、当社の建築用高強度高性能鋼は十数万トンの納入実績がありますが、今回新たに大臣認定を取得した55kg鋼や80kg鋼についても、これらの鋼材の使用が予定されている超大型物件への採用を目指していきます。

今回、フルメニュー化した建築用50kg鋼〜80kgの高強度鋼板および鋼管は、高強度・高靱性・高溶接性と高い経済性を具備している高性能鋼です。高性能鋼のフルメニュー化により、商品に対するお客様からの様々な要望に応えることが可能となりました。今後、本格的な拡販を行っていくことにより、建築構造物のコストダウンや設計の自由度の拡大、耐震性向上による安全性向上を通して社会や環境への貢献を図っていきます。

<神戸製鋼の建築用高性能鋼メニュー>


(ご参考)

【TMCP鋼板】
Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)の略。

【大入熱溶接】
溶接を行う際、電源から溶接接合部に投入される熱の量が大きいもの。
単位はkJ/cm又はkJ/mm。超大入熱溶接は500 kJ/cm以上、小入熱溶接は20 kJ/cm以下を目安にしている。

【高HAZ靭性鋼】
HAZ=Heat Affected Zone(溶接熱により材質的影響を受ける領域)の靭性(ねばり強さ)が、シャルピー吸収エネルギー値(試験片が破断する前までにエネルギーを吸収する能力を表す指標)で、従来鋼よりも高い鋼板。(SA440C-STでは従来鋼の約4倍。)

【結晶粒の超微細分割(低カーボン多方位ベイナイト)技術】
カーボン量を従来鋼の1/2〜1/4と大幅に低減することにより、硬くてもろい島状マルテンサイトの生成量を大幅に低減するとともに、大入熱溶接熱影響部で粗大化したオーステナイト粒内を微細なブロックに分割する画期的な組織制御技術。

【小入熱溶接】
高強度鋼は、強度を高めるために合金成分を多く含んでおり、組み立て溶接(本溶接を行う前に部材の固定を行うこと)など小入熱の溶接時に、割れ・硬化を防止する為の予熱を行う必要があった。溶接ビード長さの制約があるなど、溶接施工管理に相当な手間がかかるという難点があった。

【F値】
設計上の大元になる鋼材固有の基準強度。F値は、規格の降伏点下限値とするのが一般的。弾性設計では、鉄骨部材に加わる応力を基準強度であるF値以下(弾性域)となるように設計する。