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プレスリリース

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改質褐炭(UBC)大型実証プラントの稼動開始について

~ 12月4日(木)に竣工式典を開催 ~

2008年12月3日

株式会社神戸製鋼所

当社が財団法人石炭エネルギーセンター(JCOAL)の事業として、経済産業省の支援を受けてインドネシアにて推進している『改質褐炭(低品位石炭の高品質化)』の大型実証プラントが、このほど稼動を開始しました。明日12月4日(木)、現地にて以下の通り竣工式を開催します。
竣工式の概要
1. 日時: 12月4日(木)11:00(日本時間13:00)
2. 場所: インドネシア カリマンタン島 南東部 サツイ石炭鉱区内
3. 主な出席者(敬称略) ・日本政府関係者
  駐インドネシア日本大使 塩尻 孝二郎
  経済産業省資源エネルギー庁長官官房企画官 赤堀 幸子
  財団法人石炭エネルギーセンター理事長 並木 徹

・インドネシア政府関係者
  エネルギー鉱物資源省 プルノモ大臣

・当社
  代表取締役社長 犬伏 泰夫
  専務取締役 松谷 高志
  執行役員 沖田 誠治
世界の石炭事情について
石炭は、世界のエネルギー需要の4分の1程度をまかなっており、石油に次ぐ重要なエネルギー源です。日本で日常使われている電力も、その2割強が石炭火力により作られています。日本は、エネルギー供給の多くを海外に依存していますが、石炭は、石油やガスに比べて埋蔵量が多く、しかも広く分布していることから、エネルギーの安定供給を確保する上で、将来にわたって重要な役割を果たすものと期待されています。
実証プロジェクト概要
インドネシアに豊富に存在するものの、水分が多いため利用が進んでいなかった低品質炭(褐炭=Brown Coalなど)を改質・高品質化(Upgrade)し、主に電力用途で活用することを目的とする大型実証プロジェクトです。当社が会員となっているJCOAL事業として経済産業省からの支援を得て実施するもので、総事業費は約80億円(経産省1/2負担)です。実施に当たっては、現地(インドネシア)の資源投資会社『ブミ・リソーシズ社』及び、その子会社である大手石炭会社『アルトミン社』とパートナー契約を結び、実証プラントを南カリマンタンのサツイ石炭鉱区(アルトミン社所有)に建設しました。
規模は600トン/日で、負荷試運転(実際に褐炭を挿入しての試運転)を開始しており、2009年度末にかけて約1年半に及ぶ実証運転で、UBCの大規模サンプルを日本を中心とする複数の電力会社へ試供します。その後、2010年度の初受注を目指します。
褐炭について
現在、日本を含め各国で主に利用されている石炭は、高品質の瀝青炭(れきせいたん)ですが、このほかに、褐炭(かったん)に代表される低品位の石炭があります。褐炭等は、全世界では石炭の約半分(インドネシアでは約85%)を占めるものの、水分を多く含み発熱量が少ないことから、用途が限られてきました。また褐炭は、特有の自然発火性があることから、輸送・貯蔵上の問題があり、ほとんど利用されていません。一方で、インドネシア炭のように灰分や硫黄分の含有量が少ないといった、利用上有利で環境にやさしい性質を有しているものも多くあります。当社は1980年より「褐炭の液化」の技術開発を、ナショナル・プロジェクトに参画する形で進めてきました。今回実証の対象となる改質褐炭は、その間に培った石炭の脱水技術を応用し、「天ぷら」の原理で、褐炭に含まれる水分を、加熱した軽質油を使って効率的に除去する画期的な技術です。本技術は1993年より開発に着手し、2001年度からの4年間にわたるインドネシアでの小規模実証試験を経て、今回大型実証プロジェクト実施に至ったものです。
本プロジェクトは、褐炭の発熱量を1.5倍(瀝青炭並み)に高めつつ、自然発火性を抑制し、かつ、比較的灰分や硫黄分の少ないクリーンで優れたエネルギー源として再生するプロジェクトで、早期の商業化が大きく期待されています。
ご参考
改質褐炭(UBC)製造のメカニズム
<原理> 加熱した油の中に水分の高い石炭を入れ、水分を蒸発させる。(「天ぷら」)
<プロセス> 1)石炭を粉砕する
2)軽質油と混ぜてスラリー(流動性のある固体と液体の混合物)を作る
3)スラリーを加熱し、石炭中の水分を蒸発させて脱水する
4)スラリーから油を回収する
5)脱水された石炭を豆炭状に成形する
<特長> 温度や圧力などの処理条件が比較的穏やかで、エネルギー効率が高い
褐炭改質に関する技術開発の歴史/小規模実証(2001〜2004年度)の概要
・1993年より、石炭液化における低品位炭のスラリー脱水技術を活用し、油中脱水・成型による改質褐炭製造プロセスの開発に着手。
・加古川に0.1トン/日のBSU(Bench Scale Unit : 小型実験装置)を設置し、1990年代の半ばより実証化に取組む。
・2001年度、日本・インドネシア両国政府間のナショナル・プロジェクト★1として採択され、2004年度までの4年間3トン/日のデモプラントを建設・運転した。

【注】★1: 日本側は、(財)石炭エネルギーセンター、インドネシア側は、エネルギー鉱物資源省研究開発庁が推進母体。民間としては神戸製鋼所が中心となり、現地の石炭会社5社に試験用の石炭提供を受けた。他に商社(双日)、インドネシア政府・応用科学技術評価庁などの応援・協力を得てプロジェクトを実施した。
褐炭とは(世界の石炭事情)
1) 資源: 世界の石炭資源の半分は褐炭・亜瀝青炭など低品位炭である。
2) 需給: 高品位炭(瀝青炭)は、中国の輸入急増に伴い、タイトになっている。
3) 日本の石炭需給: ア)ほぼ100%海外依存である。
イ)日本は世界最大の石炭輸入国である。
ウ)豪州への依存度が約60%と高い。
エ)炭種は瀝青炭が殆ど。
4) インドネシアの位置付け:
ア) アジア圏の石炭輸出国として、また、対日供給国として、急速に規模を拡大し、豪州に次いで第2位。
イ) 瀝青炭の埋蔵量が限られている一方、低品位炭はその6倍ある。


1)石炭の安定供給確保
日本の燃料用炭の需要は約9000万トン、製鉄等原料用炭を含めると約1億8000万トンであり、その殆ど全量が輸入によりまかなわれている。輸入元としては豪州(59%)、インドネシア(18%)、中国(11%)等である。
炭質面では、発電効率やコスト、輸送・貯蔵などの物流上の理由から、主に高発熱量の瀝青炭が使用されている。近年、中国の製鉄用原料輸入が急激に拡大しつつあり、これに追随して燃料用瀝青炭の需給もタイトになっている一方、褐炭など低品位炭は、日本の石炭需要家にとって、現状では利用困難な資源にとどまっている。
本技術は、燃料用瀝青炭に匹敵する発熱量を実現すると同時に、輸送貯蔵面の制約をも解消するものであり、高品位炭代替として改質炭の利用が可能となる。加えて、インドネシア改質炭の場合、CIF日本ベースで豪州の燃料用瀝青炭のコストとほぼ同等となることを目標としている。
以上により、石炭資源の供給分散が促進されることとなり、エネルギー資源の安定供給確保への貢献が期待できる。

2)低品位炭の効率的活用
インドネシアは、アジア・太平洋圏の石炭輸出ソースとして豪州に次ぎ、中国に並ぶ規模にまで急成長を遂げた。しかしながら、同国の石炭資源全体では、現在輸出の中心となっている瀝青炭の埋蔵量は15%と限られており、褐炭が58%、亜瀝青炭が27%を占めている。従って、同国の石炭産業にとって、低品位炭の改質技術の商業化は大きな意味を持っている。
更に、同国は、石油資源について2004年度より実質的輸入国に転じている状況にある一方で、国内の発電用エネルギー資源需要は、今後大幅に拡大するものと予想されている。同国政府エネルギー鉱物資源省の長期計画においては、2025年には年間3000万トン規模(10万トン/日相当)の改質炭生産を見込んでおり、かように、同国のエネルギー問題の解決に向けた低品位炭の利用促進への期待は大きい。

3)需要家側の環境負荷の低減
インドネシアに代表されるように、低品位炭の中には低灰分、低硫黄という特長をもった資源が数多く存在している。従って、こうした石炭を改質し、高発熱量かつ低灰分、低硫黄の改質炭を利用することができれば、需要家側での環境負荷の軽減効果が期待できる。