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プレスリリース

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業界初 大型自動車運搬船に降伏点47kg級鋼板を採用

2009年2月26日

株式会社神戸製鋼所

当社は今治造船株式会社と共同で、大型自動車運搬船(PCC)への降伏点47kg級高強度TMCP鋼板の適用検討を進めてきた結果、08年12月に日本海事協会より実船適用の承認を得て、09年起工の大型自動車運搬船に採用することが決定しました。これは、造船業界では初となるコンテナ船以外への採用となります。

PCC船の設計においては、効率よく自動車を積み込むこむために極力柱や横隔壁を減らすことが求められている一方で、近年の海上輸送量の増大を受け、船体の大型化が進んでいます。今回採用された大型の横隔壁(ストロングウェブ)では、特に大きな応力を受け止めるため、これまでは板厚50mmを大きく超える極厚鋼板の使用が不可避な状況にありました。
今回、本鋼板を用いることにより、従来材(降伏点36kg級)に比べ板厚を約30%低減できるため、以下のメリットが発生します。
  1. 安全性の向上
    ⇒脆性破壊に対する安全性が高いとされる、50mm以下にまで板厚低減が可能(従来材であれば約70mm)
  2. 船体軽量化による省エネルギー効果
  3. 溶接時間及び部材加工(サーピン加工)時間の短縮による生産性向上
神戸製鋼が開発した降伏点47kg級鋼板は、これまで好評を得てきた降伏点40キロ級の大入熱溶接用鋼板で採用してきた「結晶粒の超微細分割(低カーボン多方位ベイナイト)技術」を活用して優れた溶接継手特性を有すると共に、新たに開発した均一強冷却TMCP技術やこれまで培ってきた当社独自のプロメ圧延技術を組み合わせることにより、両立が難しいとされていた高強度化と高靱性化、高溶接性の課題をNiなどの特殊な元素を添加することなく達成しました。この結果、今回の大型PCC船の建造にあたっても、従来材と同等の溶接施工性が確認されています。

現在、この降伏点47kg級鋼板の適用範囲は、コンテナ船の一部の部位のみに留まっていますが、その他でも適用可能な部位及び船型は多くあると見られており、それらへの適用を実現させることは、大幅な軽量化により環境に貢献するという点で、社会的にも大きな意味を持ちます。また、使用範囲の拡大に伴い、特にコスト面において、当社のNiレス鋼の特長がより効果を発揮するものと考えております。当社は今回の採用を皮切りに、今後コンテナ船や大型自動車運搬船以外の幅広い船型への採用範囲の拡大を図って参ります。
ご参考
ストロングウェブ
主に横方向の応力を受け持つ大型の横隔壁部材。
ストロングウェブ
サーピン加工
異なる板厚の鋼板を溶接するために、板厚の厚い側の鋼板に実施するテーパー加工
サーピン加工 
降伏点47kg級鋼板
降伏点が47kg、引張強度は60kgの鋼板。一般的には、降伏点47kg級になるとNiなど特殊な元素の添加が不可避とされてきたが、当社は新たに開発した均一強冷却TMCP技術やこれまで培ってきた当社独自のプロメ圧延技術を組み合わせることにより商品化に成功した。
TMCP
Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)の略。
制御圧延技術(加熱温度,圧延温度,圧下量を最適制御する技術)や加速冷却技術(制御圧延に続いて空冷より早い速度で冷却制御する技術)を組み合わせることにより、高強度で靱性に優れた鋼板を製造する技術。

プロメ圧延
当社で開発したプロメシステム(Plate ROlling system for MEchanical property control)を用いた圧延方法で、厚鋼板を圧延する際、材質予測技術を駆使した圧延のパススケジュール設定や、オンラインでの各パス毎の微調整が可能となる製造法。これにより、材質(降伏点や靭性)のばらつきを従来材に比べて大幅に低減し、狙いとする機械的特性を達成できる。