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プレスリリース

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高効率温水ヒートポンプ「HEM-HR90」の開発・販売について

~業界で初めて90℃温水と7℃冷水の同時供給を高い効率で実現~

2010年2月9日

株式会社神戸製鋼所
中部電力株式会社
東京電力株式会社
関西電力株式会社

株式会社神戸製鋼所と中部電力株式会社、東京電力株式会社、関西電力株式会社の4社は、このたび、業界で初めて90℃の温水と7℃の冷水の同時供給を実現した高効率温水ヒートポンプ「HEM-HR90」を共同で開発いたしました。本機は、株式会社神戸製鋼所が平成22年4月から販売を開始いたします。

飲料・食料品・化学・電子デバイスなどの工場では、材料の殺菌や洗浄などに温水を、冷却や冷房などに冷水をそれぞれ循環させて使用する工程があり、主にボイラと冷凍機により供給しています。この温水と冷水をひとつの機器により高い効率で同時に供給できる温度は、従来のヒートポンプでは、低温が7℃の場合に高温の上限は70℃であったため、採用できる加熱工程に限りがあり、さらなる供給温度の高温化の要望をいただいておりました。
そこで、今回開発した「HEM-HR90」は、温水ヒートポンプでは業界で初となる2段スクリュ圧縮機の採用、圧縮機モータの高温対応化および最適な冷媒選定により、70〜90℃の温水と5〜30℃の冷水の同時供給を高い効率で実現しました。これにより本機は、飲料の加熱殺菌や各種温水洗浄などの70〜90℃の温水を使用する加熱工程への採用が可能となります。
本機は、90℃温水と同時に7℃冷水を供給する際の総合COP4.5※1を達成し、従来のボイラと冷凍機を組み合わせたシステムと比べ、ランニングコストやエネルギー消費量、CO2排出量を大幅に削減できます。

なお、本機は販売に先立ち、2月16日から19日に東京ビッグサイトで開催される「HVAC&R JAPAN 2010(ヒーバック&アール ジャパン) 第36回冷凍・空調・暖房展※2」において展示のうえ、ご紹介いたします。

「HEM-HR90」の主な特長は、以下のとおりです。


  1. 90℃の温水と7℃の冷水の同時供給を実現
    温水を循環させて利用できる(循環加温対応)ヒートポンプとして業界で初めて、90℃の温水と、7℃の冷水の同時供給を高い効率で実現。
    さらに、70〜90℃の温水と5〜30℃の冷水の同時供給が可能。

  2. 高いエネルギー効率によりランニングコスト、エネルギー消費量およびCO2排出量を削減
    90℃温水と同時に7℃冷水を供給する際の総合COP4.5を達成。この高いエネルギー効率により、従来のボイラと冷凍機を組み合わせたシステムと比較し、ランニングコストとエネルギー消費量をそれぞれ約6割、CO2排出量を約7割削減可能。
 

資料:「HEM-HR90」の概要

※1 総合COP(総合Coefficient of Performance:総合成績係数):
温水を加熱する能力と冷水を冷却する能力との合計の能力(kW)を運転時の消費電力(kW)で除した値で、この値が大きいほど省エネルギー性が高いことを示します。
本機の総合COP4.5とは、エネルギー投入量(消費電力)に対し、4.5倍の熱エネルギーが取り出せることを意味します。
本機の総合COP4.5は、温水温度が本機への入口側で80℃、出口側で90℃かつ冷水温度が入口側で17℃、出口側で7℃の条件における値です。
※2 HVAC&R JAPAN 2010(ヒーバック&アール ジャパン) 第36回冷凍・空調・暖房展:
会期:平成22年2月16日(火)〜19日(金)10:00〜17:00(最終日は16:00まで)
会場:東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-21-1)
主催:社団法人 日本冷凍空調工業会
入場料:無料(登録制)
資料:「HEM-HR90」の概要
1 外観
高効率温水ヒートポンプ「HEM-HR90」
写真1 高効率温水ヒートポンプ「HEM-HR90」
2 導入イメージ
高効率温水ヒートポンプ「HEM-HR90」
図1 従来システムと「HEM-HR90」の導入イメージ
3 仕様
表1 「HEM-HR90」の仕様
ユニット寸法 奥行き2.6m×幅1.2m×高さ2.1m
質量※1 運搬時:2,700 kg(運転時:2,830 kg)
冷媒 R134aとR245faの混合冷媒
圧縮機 インバータ駆動2段スクリュ式
法定冷凍トン 6.5 トン※2
性能(温度条件1) 温水入/出口80/90℃、冷水入/出口17/7℃
能力 加熱能力272 kW、冷却能力173 kW
消費電力 99 kW
総合COP 4.5
性能(温度条件2) 温水入/出口 80/90℃、冷却水入/出口 35/30℃
能力 加熱能力357 kW、冷却能力252 kW
消費電力 105 kW
総合COP(加熱COP※3) 5.8(3.4)
※1 「HEM-HR90」は、温水や冷水を機械内部に保有した状態で運転するため、運転時は保有水量分だけ運搬時よりも質量が大きくなります。
※2 本機は、法定冷凍トンが20トン未満のため、高圧ガス保安法上、設置の際に都道府県知事へ届出や冷凍保安責任者の選任が不要です。
法定冷凍トンとは、ヒートポンプ設備の規模を示す用語です。
※3 温度条件2で本機を使用する場合、発生する冷・温熱のうち、冷熱を使用せず、温熱のみを加熱工程に使用するケースも想定されるため、加熱能力(kW)を運転時の消費電力(kW)で除した加熱COPも示します。
4 標準運転範囲
「HEM-HR90」は、神戸製鋼所製従来機(HEMII-HR)に比べ、同じ冷水温度条件時に供給可能な温水温度を高温化しました。
図2 「HEM-HR90」と神戸製鋼所製従来機(HEM�U-HR)の標準運転範囲

図2 「HEM-HR90」と神戸製鋼所製従来機(HEMII-HR)の標準運転範囲
5 開発のポイント
「HEM-HR90」は、温水ヒートポンプでは業界で初となる高圧縮比2段スクリュ圧縮機の採用、圧縮機モータの高温対応化および最適な冷媒選定により供給する温水の高温化を達成し、温水を循環させて利用できる(循環加温対応)ヒートポンプとして業界で初めて、90℃の温水と7℃の冷水の同時供給を高い効率で実現しました。

図3 「HEM-HR90」の内部構造と開発のポイント
図3 「HEM-HR90」の内部構造と開発のポイント
6 導入効果の試算例
加熱工程用の90℃温水と冷却工程用の7℃冷水の製造に「HEM-HR90」3台を導入する際の導入効果を試算しました。比較対象は設備更新前のボイラと冷凍機を組み合わせたシステムとしています。

ランニングコスト   (単位:百万円/年)
  東京地区 名古屋地区 大阪地区 3地区平均
HEM-HR90 13.8 13.3 13.0 13.4
従来システム(ボイラ+冷凍機) 33.4 37.4 36.1 35.6
削減率 58.5% 64.5% 63.9% 62.4%
運転時間は平日のみの12時間としました。
3地区それぞれの気象条件および電気・ガス・水道の料金メニューを使用しています。

エネルギー消費量   (単位:GJ/年)
  東京地区 名古屋地区 大阪地区 3地区平均
HEM-HR90 8,484 8,484 8,484 8,484
従来システム(ボイラ+冷凍機) 21,466 21,588 21,632 21,562
削減率 60.5% 60.7% 60.8% 60.7%
エネルギー消費量の換算には、電力は「エネルギーの使用の合理化に関する法律施行規則」の記載値(9,970kJ/kWh)を、都市ガスは各地域の都市ガス会社の公表する一般ガス供給約款の記載値をそれぞれ使用しています。
J(ジュール)はエネルギーの大きさを表す単位で、1GJ(ギガジュール)は109Jを意味します。1GJは約26リットルの原油のもつエネルギーに相当します。

CO2排出量   (単位:ton-CO2/年)
  東京地区 名古屋地区 大阪地区 3地区平均
HEM-HR90 283 361 254 299
従来システム(ボイラ+冷凍機) 1,043 1,081 1,039 1,054
削減率 72.9% 66.6% 75.5% 71.6%
ここで、CO2排出量の換算には、電力は環境省の公表値を、都市ガスは各地域の都市ガス会社の公表値をそれぞれ使用しています。
ここで「ton-CO2」とは、エネルギーの使用に伴う温室効果ガスの排出量を、二酸化炭素(CO2)のもつ温室効果に換算しton単位で表示した値です。