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プレスリリース

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当社製LNG気化器がマルタ島LNG受入基地へ採用

2015年4月14日

株式会社神戸製鋼所

当社はこのほど、マルタ共和国で建設が進んでいるDelimara LNG Regasification Terminal向けに、LNG気化器(製品名:IFV※1)を受注しました。気化能力は1基当り約58t/hの合計2基で、2015年10月に出荷される予定です。
当社は1980年にIFVの1号機を出荷して以降、世界で40基以上の納入実績があり、中間媒体式の気化器では世界トップの実績を誇ります。今後も伸長が予想されるエネルギー分野に向けて拡販を進めて参ります。

Delimara LNG Regasification Terminalは、Electro Gas Malta Limited社が運営するLNG受入基地として、設計・施工を受注しているJ&P-AVAX SA社(ギリシャ)によって建設が進められています。本基地では、海上に設置される浮体式LNG貯蔵設備(FSU※2)から陸上にLNGが供給された後、再ガス化基地にて気化され、気化されたガスは隣接するDelimara発電所にガスタービンの燃料として送られます。その再ガス化基地の主要設備である気化器に当社製IFVが採用されました。

Delimara発電所では、発電出力向上のためガスタービンへの吸入空気を冷却する設備(ガスタービン吸気冷却システム※3)をJ&P-AVAX SA社が導入する予定です。その冷熱源として当社製IFVがLNG気化時に発生させる冷熱を有効利用します。
LNGは-160℃程度の極低温流体であり、気化時には多大な冷熱エネルギーを放出しますが、これまでは気化後に海水などの熱交換媒体と共に捨てられる事が多く、あまり有効活用されていませんでした。しかし近年、エネルギーの有効活用に対する意識の高まりなどから、こうした冷熱エネルギーの利用が注目を集めています。今回のDelimara発電所では、そのような冷熱エネルギーを有効活用する事で、発電出力の向上を図っております。一般的にこの様な設備を導入した場合、気温の高い夏場では最大10%程度の発電出力の向上が可能になると想定されています。
当社製IFVが冷熱エネルギーの有効利用に適することと、設計初期段階からJ&P-AVAX社に協力してきたことも評価され、今回の受注に至りました。

当社は、IFVに加え、ORV※4と呼ばれる最も一般的なLNG気化器もメニューに揃えており、この分野でも200基以上の納入実績を持ち、世界でトップクラスのシェアを有しております。世界的なエネルギー需要の高まりを受け、今後も同様の案件は増加するものと期待しており、当社は、IFVをはじめLNG気化器の更なる拡販に努めて参ります。

※1 IFV(Intermediate Fluid LNG Vaporizer)
主に海水等を気化熱源として用い、プロパンなどの中間媒体を介して、LNGを気化させるタイプの気化器。浸食や腐食に強いチタンを伝熱管に採用し、大量の砂や重金属イオンを含んだ悪質な海水にも対応できる点が特長で、LNG冷熱の有効活用やFSRU向けにも適している。

※2 FSU(Floating Storage Unit)
主に老朽化したLNG船を転用して海上で浮体式LNG貯蔵設備にしたもの。再ガス化基地は、付近の陸上や桟橋等に設置される。また、再ガス化設備も浮体ユニットに設置したFSRU(Floating Storage & Regasification Unit)と呼ばれるタイプもある。
従来からある陸上に設置されるLNG貯蔵設備とは違い、住環境から離れた洋上に設置されるため許認可取得が陸上よりも容易なことや、LNG船の転用が可能なため建設費や工期が短縮できるなど大きなメリットがあり世界で建設が進んでいる。

※3 ガスタービン吸気冷却システム
ガスタービンで吸い込む空気を冷却する設備のこと。発電タービンでは、ガスを燃焼させるために圧縮空気を供給しているが、外気温が上がると吸い込む空気の密度が小さくなり供給できる空気量が減少して発電出力が低下する。吸い込む空気を冷却することにより、供給できる空気量を増やし、発電出力をアップさせることができる。今回は、IFVから排出される冷熱を冷却のために有効活用している。システムとしては、IFV内の循環媒体とLNGが熱交換し、LNGは気化する一方、冷やされた循環媒体を発電所に送り、ガスタービンの吸入空気と熱交換し冷却させる。暖められた循環媒体は、再度LNG気化に使用されるというサイクルを繰り返す。

※4 ORV(Open Rack LNG Vaporizer)
主に海水等を気化熱源として用い、アルミ製伝熱管の外表面に海水を流して、管内を流れるLNGを気化させるタイプの気化器。構造がシンプルで、海水を使うためにランニング費用も低く抑えられ、大容量への適用も可能なことから、LNG受入基地で最も多く使われている。

(ご参考)

中国LNG受入基地向けIFV(2008年出荷時)