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No.2 銅の特徴

(アイル2003年9月掲載)

人間ははるか昔より「銅」が持つさまざまな特徴を生かしながら、いろいろな用途に利用してきました。
もはや「銅」なくしては、私たちの日常生活はなりたたないと言っても過言ではありません。
今回は、そんな「銅」の特徴をご紹介していきます。

電気抵抗が小さい「銅」

モンちゃん
前回に引き続き、今回も「銅」についてのお話ですね!
アンサー氏
銅の特徴については前回も少しふれたけれど、今回はもうちょっと掘り下げてみるよ。
モンちゃん
人類が最初に使った金属とされる銅には、たくさんの特徴があるんでしたよね。
アンサー氏
モンちゃんが一番最初に思い浮かべる特徴というと何かな。
モンちゃん
そうですね…電気をよく通すっていうことかなぁ。
アンサー氏
銅は金属の中で、常温では銀に次いで2番目に電気を良く通す金属なんだ。
電気の通りが良いというのは、つまり電気抵抗が小さいってこと。電気の流れに対して邪魔がないんだね。詳しく言うと、金属はふつう原子が結晶格子を形成していて、全体の電気抵抗というのはこの格子が動く格子運動による格子抵抗と不純物や格子欠陥による抵抗とがすべて合わさっているんだ。
モンちゃん
う、う~ん、ちょっと難しいですね。
アンサー氏
大切なのは、不純物や格子欠陥による電気抵抗は温度には殆ど関係なく一定ということなんだ。でも格子運動は絶対零度(-273℃)に近いと非常に小さくなるので、金属の常温での電気抵抗と絶対温度に近い状態での電気抵抗との比をとると、不純物などの量が相対的にわかってくるというわけなんだね。
モンちゃん
なるほど、少しイメージがわいてきたかな。
アンサー氏
いろいろな材料の常温での電気電導性の程度を示す表し方で「比電気抵抗値」、略して「比抵抗」というのがあるんだけどね、これは1cm立方の角砂糖のような形にした時にもつ電気抵抗をΩcmの単位で呼ぶもので、工業的には「体積抵抗率」とも言う。参考までに比電気抵抗の表を見てごらん。
モンちゃん
私、Ωとか全く理解できてないんだけど…最初のお話にあったようにこの表では銅が銀の次に電気を良く通すことがわかるわ。
アンサー氏
あと電気の流れやすさを表す単位で「導電率」というのがあって、国際的な表し方として「%IACS」を用いてる。これは20℃での単位長さ・単位面積をもつ材料の電導度と標準軟銅(International Annealed Copper Standard)のそれとの比を、百分率で表したものなんだよ。
モンちゃん
むむッ、ますますこんがらがってきたぞ…。
アンサー氏
じゃあ参考までに、実用銅および銅合金の導電率を示した表を見てごらん。何か気がついたことはあるかな。
モンちゃん
あ、同じ実用銅合金の中でも種類によってレベルが違うんですね。
アンサー氏
そう、いいところに気がついたね。専門的な難しい話だけど、こうやって表にしてみると新しい発見があるものだろう。まぁ、要はこうした特徴から銅は電線をはじめ、大型発電機やリードフレームなど電気を通す機器用素材として活躍しているんだ。

熱を良く通す特性は宇宙でも活躍

モンちゃん
それから銅には熱を伝えやすいという特徴もあるね。さっき説明した「電気伝導性」と「熱伝導性」には相関関係があって、電気伝導性が高いと熱伝導性も高いんだよ。
アンサー氏
ふーん、銅は銀の次に熱伝導率が良いというのも、電気伝導率と同じね。
熱を伝えやすいという特徴を生かしてる銅製品と言うと、キッチン用品とか思い出しますよ。老舗のお菓子屋やフランス料理なんかの有名シェフは殆どの人が銅製の調理器具を愛用しているんですって。

さまざまな銅製品
銅製たわし入れ、銅製 三角コーナー、銅製ワインクーラー、銅製やかん、銅製卵焼き

アンサー氏
熱効率が良くて調理後も冷めにくいんだそうな。料理を美味しくつくるコツは調理器具にもありという感じだね。
モンちゃん
あとはやっぱりここでも勉強したことのある、エアコンや冷蔵庫の伝熱管も外せませんね。
アンサー氏
あと面白いところでは、人口衛星や宇宙船のヒートパイプにも利用されてるよ。ヒートパイプというのは金属パイプの中に入れた作動液の蒸発と凝縮による潜熱を使って、冷却から加熱にもどることをくり返す熱輸送体で、宇宙船の温度差(太陽光線の当る側は高温で反対側は零下となる)の均熱化と地球帰還の際の摩擦熱による燃え尽きを防止するために用いられてるんだよ。
モンちゃん
わぁ、宇宙開発のための重要アイテムなんですね。ほかには何かありますか。
アンサー氏
そうだね、製鋼所でも高炉の羽口・製鉄用転炉の酸素ガス注入ノズル・連続鋳造用モールドなどの主要箇所に高耐熱性銅合金が使われてるんだよ。

非磁体性と多彩なカラー

アンサー氏
電気や熱を通しやすいというのは基本だけど、実は銅は非磁性でもあるんだ。
モンちゃん
それは、磁気を生じないということかしら。
アンサー氏
どんな物質でも強い磁石など近づけて磁場をかけると磁化するんだけど、銅はしないんだね。アルミや空気も非磁体性ではあるが、一応ほんのわずかな磁気が発生するんだ。
モンちゃん
この非磁性を利用した使い方というのはどんなものがあるんでしょう。
アンサー氏
例えば地球の磁気の観測などでは銅合金が大活躍している。地球磁気の機器はすべて銅または銅合金が使われていているんだよ。
モンちゃん
観測や研究の狂いをなくすために重要な金属なんですね。
アンサー氏
あとは録音テープ編集用のハサミにも利用されてるね。磁性体のテープを切る時にハサミからでる細かい鉄粉に磁気があると雑音の原因になるんだよ。
モンちゃん
おお、思わぬところで活躍してるんだ!
アンサー氏
それから、銅は色彩美が豊かなのも特徴だね。金属の中で唯一の有色だからね。
モンちゃん
えっと、確かいくつかのカラーがあったんですよね。
アンサー氏
有色金属は実は金と銅の2つだけなんだね。中でも銅は黄金色合金という他の金属が真似できない色がつくれるんだ。合金にも、赤みがかった丹銅、ブラスと呼ばれる黄銅、ブロンズと呼ばれる青銅、ちょっとピンクがかった白銅、銀色の洋白という5色名があるよ。
モンちゃん
ああ、ブラスはブラスバンドの楽器ね。ブロンズは彫刻に使われてるし。最近では、ゴルフのパターにも使われているでしょ。よく考えてみると、ホント銅っていろいろなものに使われてますよね。
アンサー氏
建築物や花器・器物では、昔から銅を使ってさまざまな色付け方法が行われていたんだよ。最も有名なのが表面に化合物を発生させて発色させるものとして天然緑青があるね。人類が青銅文化を築いた中で、緑青の色には神秘性・魔力を感じて、神社の屋根などには何百年も経った緑青屋根が多いよね。最近では、人工的に緑青を着色する方法も盛んで、武道館や新国技館の屋根にも使われてるから、今度注意して見てごらん。
モンちゃん
へぇ、そうだったんですね。
アンサー氏
銅を使った着色方法は、他にもいろいろあるんだ。日本式着色法では黄金色や銅赤色、燻し色、朱銅色などがだせる。もちろんそれぞれの色によってやり方が違うんだがね。
モンちゃん
その方法を発見した私たちの先祖もスゴイですよね~。
大伴家持の銅像
高岡駅前にある
大伴家持の銅像
新国技館
新国技館
 
 

遺跡で証明される耐食性と超伝導線で活躍する耐定温性

アンサー氏
さて、電気や熱を良く通す、非磁性、色彩美…ときたけれど、他に何か思いつく銅の特徴はあるかな?
モンちゃん
そうですねぇ…、えーと…
アンサー氏
水道管の時にもちょっと勉強したことなんだけど。
モンちゃん
あ、殺菌性があって防食性に優れてる!!
アンサー氏
そうです!古代より水道管として使われてきたのも納得だね。銅の表面にできる酸化皮膜が腐食を抑えるんだ。また海水に対しても優れた耐食性を見せているんだよ。
モンちゃん
ということは、船とかの部品にもたくさん使われているんですか。
アンサー氏
そうだね、スクリューとかね。1971年にアメリカの銅センターの援助で建造された“カパーマリーナ号”というエビ漁船は銅とニッケルの合金を船殻に使用したんだけど、この船では船底に海洋生物が付着しにくかったり、船殻腐食もなかった。それで銅がいかに海水に強いか証明されたんだよ。
モンちゃん
船の他にも何かに使われてるんですか。
アンサー氏
うん、1964年に開通した太平洋海底ケーブルの中継器の容器はべリリウム銅の鍛造品だよ。もちろん、銅は海水だけでなく土壌でも優れた耐食性を見せてるけどね。
半世紀以前にアメリカでは、埋設した地下ケーブルに純銅を使用したところ、モグラがかじって大変困っていたんだけど、銅に鉄を混ぜた合金を使ったら、もぐらの被害が無くなったとの逸話があるくらいだよ。この銅合金は今でも、リードフレーム素材として使用されているそうだよ。
たいていのところなら直接埋設しても耐食性が高く問題ないので、水道用管や暖房用の灯油管などにも銅は多く使われてるんだよ。
モンちゃん
そういえば、銅でできた古代の剣なども発掘されているけど、あれも優れた防食で何千年も腐らずに土に埋まっていたということなのね。
アンサー氏
青銅器もね。1979年には約1200年前の太安萬侶という人の銅製墓誌が発掘されたんだけど、この遺跡の表には刻まれた文字がきれいに残っていたんだよ。
モンちゃん
腐食しなかったからですね。他にも銅の特徴ってあるのかしら。
アンサー氏
あとは低温に強いというのがあげられるよ。極低温状態の中でももろくならないんだ。そうそう、電気抵抗率が低くて、簡単に加工ができて、低温に強いという特性は、超電導線にはもってこいの素材なんだよ。
モンちゃん
超電導線ってスゴイ名前だけど、何に使われるんですか。
アンサー氏
超電導線は数種の素材からなる複雑な構造になっていて、高エネルギー物理研究に使用される超電導加速器や診断用装置として使われる核磁気装置、リニア・モーター・カーなどに使われている。
モンちゃん
どれも大変高精度を要する機械ってわけですね。
アンサー氏
さて、銅の特徴は理解できたかな。
モンちゃん
はいっ。銅の優れた特性と私たちが生み出してきた技術でホントにいろいろな物がつくりだされているんだなぁって感動しました。さすが、人類が一番最初に手にした金属ですよねー。次回の銅の話も楽しみにしてます!