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No.16 被覆銅管

(アイル2003年4月掲載)

内面溝付銅管

銅管の周りに各種のプラスチックやゴムなどを装着した「被覆銅管」は、給湯・暖房、水道、燃料などの配管として活躍しています。今回は、いろいろなメリットがある被覆銅管にスポットを当てます。

銅管を樹脂で覆う「被覆銅管」

モンちゃん
やっと暖かくて気持ち良い季節になってきましたねぇ。この冬は本当に寒くて毎日エアコンが大活躍したけど、そのエアコンも夏まで少しお休みって感じですね。
アンサー氏
そうだね。ここでも前回、前々回とエアコンに使われている銅管について勉強してきたけど、今回は給湯用や水道用配管などに活躍している「被覆銅管」について勉強しよう。
モンちゃん
「被覆銅管」って、どんな銅管なんですか。
アンサー氏
被覆銅管は、プラスチックやゴムなどで銅管の周りを覆ってる銅管のことだよ。まず実物を見てごらん。
被覆銅管
被覆銅管
(上)樹脂系被覆銅管断面 (下)ゴム系被覆銅管断面
(上)樹脂系被覆銅管断面 (下)ゴム系被覆銅管断面
 
モンちゃん
あ、なるほど。確かに銅管の周りがプラスチックなどで覆われてるわ。これ、輪切りにすると良く解りますね。
アンサー氏
中を通ってる銅管はりん脱酸銅管でオーソドックスなものを使っている。詳しい用途や特徴は後で話すとして、まず作り方の工程から説明しよう。
モンちゃん
まさか、銅管1本1本にシート素材を貼り付けていくとか…。

被覆銅管のしくみ

アンサー氏
ははは、そうじゃないよ。これは、上図のようにクロスヘッドと呼ばれる部分に銅管と外側を覆う樹脂を入れていくと、きれいな被覆銅管となって出てくるという仕組みなんだ。
モンちゃん
樹脂を入れる部分は押出式になっているんですね。この図は押出部分が二つになっているけど、これは二層用ということかしら。
アンサー氏
その通り。ちなみに押出機に入れる樹脂はペレットと呼ばれる米粒のような状態になっている。それを熱で溶かすとだんだん柔らかくなるから、それを銅管の周りにくっつけていくというわけさ。
モンちゃん
銅管もある程度熱しておくんですね。
アンサー氏
樹脂と温度差があるとくっつきにくくなるからね。それで樹脂を周りに覆ったところで、今度は水で冷やして固めていくんだよ。出てきた時はもう完成品となっているから、あとは規定長さにカットして、リコイラーという機械でコイルに巻いて梱包する。
モンちゃん
難しいところは、どんなところですか。
アンサー氏
そうだなぁ、被覆部分が膨らんだ感じになっているのは発泡剤を使用しているんだけど、この発泡技術がちょっと難しいかな。発泡剤は樹脂と一緒に押出機に入れていくんだが、これが上手い具合に発泡しないと、気泡が大きすぎたり、銅管が真ん中に収まらず、ずれてしまうこともあるんだよ。ポイントは熱のかけかたなんだけどね。
モンちゃん
発泡スタイルのものは、クロスヘッドから出てきた時に、もう発泡した状態になっているのかしら。
アンサー氏
いや、クロスヘッド内では発泡せずに、出てきた瞬間に圧力が開放されてブワっと広がるんだ。
モンちゃん
B2というタイプのものはずいぶん太いけど、それも同じように作るんですか。
アンサー氏
これは高発泡ゴムなので最初に被覆部分だけ作っておいて、後から銅管を差し込んでいく。被覆材には最初から穴があいていて、そこに空気を送って穴を広げながら銅管を入れていくんだよ。

いろいろ工夫された「サーモエコー」シリーズ

モンちゃん
神戸製鋼の被覆銅管には「サーモエコー」というブランドネームがついているけど、その由来はなんですか。
アンサー氏
これはねThermo Economyの略。断熱性があって、かつ経済的だという意味が込められているのさ。
モンちゃん
断熱性が求められるのはどうして…。
アンサー氏
給湯用だと熱湯が通る時に銅管が熱くなるのを防ぐという役割もある。触ると火傷するぐらい熱くなるからね。それと同時に冷たい外気をシャットして凍結も防ぐ…というような理由から、最初は主に寒冷地で活躍したんだ。それからこのFタイプというのは灯油配管用として神戸製鋼が開発して北海道で大ヒットしたんだけど、この開発にはある北海道独自の事情があったんだよ。
モンちゃん
えー、その話聞きたい!
アンサー氏
実は、北海道では昔暖房燃料に石炭を使っていたんだ。それが灯油に取って替わり、今度は外にある大きな灯油タンクから銅管を使って室内の暖房機器に燃料を送り込むようになったんだね。ところが、昔の名残で家周辺に石炭の燃えカスが散らばっていた…そこへ銅管を通したために石炭の燃えたカスに含まれる硫黄分により触れた部分が腐蝕してしまうという問題が次々と起こったのさ。銅管に穴があいたのが原因で、ある日突然燃料タンクが空になっちゃってた、とかね。
モンちゃん
ははーん、それで銅管の周りを樹脂で覆って腐蝕防止にしたんですね。被覆部分は断熱だけに効果があるんじゃないんだぁ。
アンサー氏
2層になっているのは、強度をアップさせる効果がある。ちょっと触ってみてごらん。
モンちゃん
あ、一番外側は思ったより硬い素材なのね。
アンサー氏
例えば施工時に、床に置いてある銅管を間違えて踏んでしまうなんてシーンが多々あるけど、そんな時にこのタイプは力を発揮するんだよ。
モンちゃん
ちょっとしたアイデアですねぇ。
アンサー氏
アイデアといえばPTシリーズもそのうちに入るかな。PTというのはペアチューブのことで、2本がひとつにまとめられているスタイルのものなんだ。
モンちゃん
これは一度に二つの配管をするときに便利そうだわ。PTは透明の結束テープみたいなもので2本ずつまとめられていて、B2タイプはひとつの大きな樹脂に2本の銅管が入っているという感じ…。
アンサー氏
これらは必要な長さの場所で二つに分けて、それぞれ単独で配管できるから非常に扱いやすいんだよ。床暖房用の配管によく使われる。PTは結束テープ部分を切れば良いし、B2は真ん中に入っているスリットから二つに切り分けることができるんだ。
モンちゃん
そういえば、カラーも何種類かありますけど。
アンサー氏
ホワイトやアイボリーはポピュラーな壁の色に合わせてこのようなカラーになっている。外に配管を這わせても目立たないようにね。逆にグレーのものは、ホコリだらけの工事現場に置いておいても汚れが目立たないというメリットがある。
モンちゃん
Pタイプはブルーですね。
アンサー氏
Pは水道管用なんだ。水道用には日本水道協会規格の承認を受けたものだけが使用できるのだけど、その規格で表面色はブルーと指定されているんだよ。

銅管には優れた特徴がいっぱい

モンちゃん
被覆銅管は給湯や水道の配管に使われていますけど、どのような特徴やメリットがあるんですか。
アンサー氏
まず大きな特徴として、使いやすいというのがある。例えば、鉄は高温に耐えられないし、ステンレスはそこそこに使いやすいけれど、継手部分から隙間腐蝕が起こるなどの難点がある。その点、銅は比較的トラブルが少ない。今、給湯配管の約8割に銅管が使われているよ。
モンちゃん
水道管はどうなんでしょう。
アンサー氏
水道は残念ながら1割程度かな。海外では給水に銅管を使用するのはとてもポピュラーだけれど、日本では塩ビ管などが主流になっているんだよ。銅にはとても給水に適している特徴がいろいろあるんだけどね。
モンちゃん
それって、例えば銅の持つ抗菌作用とかですかね。うちも台所の流しの三角コーナーやバスケットに銅製のものを使ったら、ヌメリがなくなりましたよ。
アンサー氏
そうなんだ。銅は大腸菌や近年問題になっているO-157などを退治する力があるんだね。それに最近ではレジオネラ菌への抗菌力も証明されたんだよ。
モンちゃん
レジオネラ菌って、知ってるわ。お湯の循環器とかで発生する菌でしょ。銭湯や入浴施設でお年寄りが感染して命を落すなんて恐い事故もありましたよね。あ、そういえば、昔うちのおばあちゃんが「銅から出る緑青は毒だから口に入れちゃいけないよ」ってよく言ってたけど、それは本当なんですか。
アンサー氏

緑青を毒だと思っている人は多いけど、本当は緑青は毒でも何でもないんだよ。それはちゃんと厚生省も認定しているからね。じゃあ何で有害だと思われてきたかというと、昔の銅は精錬技術が良くなかったために、ヒ素などの有害不純物が緑青に残留していたんじゃないかと考えられているんだ。今はそうした不純物もないから、まったく安心というわけさ。

モンちゃん
なぁんだ、そうだったのね。じゃあその点は安心して大丈夫なんだ!…他にはどんなメリットがありますか。
アンサー氏
プラスチックと比較すると耐震性も高い。銅管は強度と変形性能が優れているから、地震に対してはバランスのとれた良い材料だと評価されているんだ。あの阪神淡路大震災でも銅管に損傷は見られなかったからね。
モンちゃん
工事の時とかはどうなのかしら。
アンサー氏
うん、うん、いい質問だね。銅管は施工性もバツグンだよ。ネジ切り作業もいらないし、ろう付けで短期間で作業できるという特長がある。それに被覆銅管なら、取付けた後に被覆工事する必要もないからね。少ない工具で施工できて、軽量だから運搬がラクで、さらに継手が少なくてすむ…などの施工における利点がいっぱいあるから施工業者にも人気が高いんだ。また、神戸製鋼のポリ塩ビ系被覆(B2,B2W,F以外)には、10cmおきにマークが記載されていて現場での切断時にもとても便利なんだよ。
モンちゃん
切るときにいちいち測らなくていいのは便利だわ!ちょっとした工夫が生きてますねぇ。それに、短期間で簡単にできるということは配管工事のコストもだんぜんお得になるってことかしら。
アンサー氏
さすがシッカリ者のモンちゃんだね。まったくその通りで、銅管そのもののコストが多少高くても、配管工事やメンテナンスのことを考えると、総合的にはとても経済性に優れていると言えるのさ。
モンちゃん
銅管って、衛生的で、施工性や耐久性にも優れていて、なおかつ経済的で…そうそう、それに忘れちゃいけないリサイクル性もあって地球にも優しい、いいことづくめの配管材料なんですね。
アンサー氏
そうだね。実は紀元前2750頃のエジプト文明の時代に、すでに給水に銅管が使われていたなんて話もあるんだよ。どうだいすごいだろう。
モンちゃん
ひゃー、エジプト文明ですか!銅管は長い間親しまれてきたんですね。そんな銅管は、これからも進化していくのかしら。
アンサー氏
また別の用途で使うような新しい品種も開発しているよ。
モンちゃん
長い歴史にその良さが裏付けされた銅管が、もっともっと普及するといいですね。今回もおもしろくって、ためになりました!次回も楽しみにしていまーす。