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トピックス
2004年

*トピックスの内容は発表時のものです。販売が既に終了している商品や、組織の変更等、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
省スペース・高機能型、ナノ薄膜分析装置の開発・販売について
(縦型高分解能ラザフォード後方散乱分析装置 タイプ:HRBS-V500)
2004年3月25日
株式会社神戸製鋼所


 当社はこのたび省スペース化、高機能化を実現したナノ薄膜分析装置として「縦型高分解能ラザフォード後方散乱分析装置」の開発を完了し、販売を開始しました。当社は98年から横型の高分解能ラザフォード後方散乱分析装置(RBS)(*1)を販売しています。このたび、小型で軽量な加速器を開発し、装置構造を横型から縦型へ変更することで面積にして30%、全長で50%の設置スペースが削減できました。更に、エネルギーの検出器を最適な角度に容易に移動・設定が出来る機構(散乱角度自在変更機構:オプション機能)や独自開発の解析ソフトによる解析作業の簡素化機能(自動フィッティング機能)も加え、使い易さや機能性を大幅に向上しました。

 高分解能ラザフォード後方散乱分析とは、ヘリウムなどの軽元素イオンを加速器を用いて高速で試料に当て、試料中の原子核に衝突してはね返ってきたイオンのエネルギーの大きさを高分解能検出器で測定することで、相手元素やその分布などを分析する装置のことです。
 当社の製造するこの分析装置は、2オングストローム(*2)(0.2ナノメートル)という世界的にも最高レベルの深さ方向識別性能(分解能(*3))を持っています。微細化・集積化の進む次世代LSI(MOSFET(*4))の開発にとって中核要素であるナノメートルレベルのゲート絶縁膜(High-k)(*5)の組成分析や、次世代半導体メモリーとして有望なMRAM(エムラム*6)の磁性多層膜を1原子層レベルの精度で計測することが可能です。

 このたびの縦型RBS装置に新たに付加された特徴・機能は以下の通りです。

(1) 本体設置寸法2.0mx1.5mとコンパクト設計。導入時の重要な要件である設置スペースの問題を解消。
(2) 分析チャンバーを低く設置し、試料の装着及び軸心出しなどの操作が椅子に座って対応可能。
(3) チャンバー内の真空状態を維持したまま、エネルギー検出器の散乱角(*7)の変更を任意の角度に容易に設定できる角度自在変更機構を開発。極めて短時間に角度変更ができる操作性。
(4) 従来の加速器には高圧(0.6MPa)の絶縁ガスを充填していましたが、今回開発した500kVの新型加速器では、充填ガス圧を0.19MPa以下に抑えることにより(第2種圧力容器の対象外)取り扱いが容易。
(5) 自動解析ソフトを独自に開発。得られた測定データから元素を特定し、その組成分布を自動的に定量化する(自動フィッティング)機能を付加したことで、解析時間の短縮化とデータの高精度化をはかり、従来機に増して機能性を向上。

 その他、各種機能薄膜の元素の定量分析、結晶性評価、水素分析、格子の歪み測定機能等に上記各種の改良を加えて一層の完成度を高め、原子レベルの分析、解析を行うツールとして、次世代半導体薄膜・磁気記録関連多層薄膜の開発を行う大学やメーカーなどの研究機関向けとして近年のナノテクノロジーに対応しています。

 これら種々のアプリケーションの適用については共同開発者である京都大学工学研究科・木村健二教授の支援、協力を得ながら高分解能ラザフォード後方散乱の更なる展開を進めています。

 尚、今回新発売する縦型高分解能ラザフォード後方散乱分析装置に搭載しました小型加速器は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)から委託され実施している、基盤技術研究促進事業から得られた開発技術を一部に採用したものです。

 当社はこの新商品の他にも、タンデム型(*8)マイクロRBSーPIXE(*9)、標準型マイクロRBSーPIXE及びマイクロビームライン(*10)、横型HRBS、エンドステーション、加速器等をラインアップし、ユーザニーズに対応しています。そして今後とも独創的な新商品の開発、高機能化・自動化の提案などを積極的に行っていく考えです。

以 上



【語句説明】

*1 RBS Rutherford Backscattering Spectroscopy(ラザフォードの後方散乱分光法)。ヘリウムなどの軽元素イオンを高速で試料に当てた時、試料中の原子核に衝突して後方へ散乱してきたHeイオンのエネルギーの大きさを測定することにより、相手の元素を知る分析手法。
*2 オングストローム 長さの単位で1x10ー8cm。水素元素1個の大きさに相当する。
*3 分解能 離れた2点間を識別できる能力。本紙の場合深さ方向の2点間を意味する。
*4 MOSFETトランジスタ Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor(金属酸化膜半導体電界効果型トランジスター)の略でLSIの基本トランジスタである。
*5 ゲート絶縁膜 MOSトランジスタのゲート電極下にある酸化膜(SiO2)。この膜を介してチャンネルの電荷を誘起させる。
*6 MRAM 記憶素子に磁性体を用いたメモリの一種。従来のメモリ(DRAM、フラッシュメモリ)が電子を用いて記録しているのに対して、MRAMはハードディスクなどと同様に磁性体を用いている。
*7 散乱角 イオンビームの入射角度に対し散乱イオンを検出する為のセンサーの検出位置によって決まる角度。この角度を真空状態を維持したまま変更できることは操作性が格段に向上する。 
*8 タンデム型 負イオンをプラス電極へ向けて加速し、ここで荷電変換し更にアース電極へ向けて再加速し加速エネルギーを増大させる方法。
*9 PIXE Particle Induced X-ray Emission(粒子励起X線放出)イオンが固体中を通過する時原子の内殻軌道電子を弾き出すと、そこに 外殻電子が遷移して特性X線が放出される現象。
*10 マイクロビームライン 当社標準機(マイクローアイ)から加速器を除いたビーム収束光学系及び分析測定系。ユーザーの既存の加速器に接続しマイクロビームによる微小領域分析を行うもの。

縦型高分解能ラザフォード後方散乱分析装置

 


特徴と新機能
従来型との比較


 
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