残留応力制御型厚鋼板『ヒズミレス』の商品化について


2001年5月21日

残留応力制御型厚鋼板『ヒズミレス』の商品化について
〜ガス切断や溶接時の工作精度を大幅に向上〜

当社はこのほど、造船用高張力鋼鈑(降伏強度32、36kgf/mm2級鋼板)を加工する際のガス切断や溶接時の変形ばらつきを従来の半分以下に低減することで、工作精度を大幅に向上できる厚鋼板『ヒズミレス』を商品化し、本格販売を開始しました。

『ヒズミレス』は従来の高張力鋼板の残留応力(加工後に、鋼板にひずみや変形などを発生させる鋼板に内在する力)をさらに制御・低減した鋼板です。本鋼板により、船舶を建造する工程で重要な、切断変形や溶接変形の安定化が図られます。つまり、造船メーカーの厳格化している工作精度の要求に対応し、工作の自動化や生産性向上などへの寄与が期待できます。

<開発ニーズ>
 造船メーカーでは、厳しい環境下でより一層のコストダウンを迫られており、作業効率を高めるために組立ラインの自動化、ロボット化が進められています。しかし、従来の高張力鋼板では、ガス切断や溶接時の変形ばらつきが生じ、最近の高度な工作精度要求には対応しきれない場合があり、自動化の妨げになることがありました。一方、船舶の大型化および軽量化に伴って、現在、大型タンカー1隻あたりの高張力鋼板の使用比率はほぼ7割に達しています。このようなことから、従来の高張力鋼板に改善を加え、さらなる工作精度の向上が可能になる鋼板が要望されています。

<製造上の特長>
残留応力制御型厚鋼板『ヒズミレス』はこうしたニーズに応えるために業界で初めて商品化したものです。従来の高張力鋼板では、製造プロセスにおける加熱・圧延・加速冷却の各工程において、鋼板内の温度分布のばらつきにより、不均一な残留応力分布が生じる場合があります。このため当社では、製造の全工程を通して残留応力を制御する以下の3点の技術を構築しました。

1.加熱・圧延・加速冷却の各工程で、残留応力の原因となる鋼板温度のばらつきを極限まで低減する技術。
2.加速冷却後の残留応力を予測・評価する技術。
3.予測・評価した残留応力を、多機能レベラーの活用により制御・低減する技術。
 
上記のように、『ヒズミレス』は当社の加古川製鉄所・厚板工場に導入された世界最大級の矯正荷重能力(5,000トン)を有する多機能レベラー(鋼板の平坦度不良を矯正する設備)を最大限に活用して製造されています。本レベラーは1998年6月より稼動しており、ロールのたわみを自在に制御できることから、鋼板の端部を含む全長の残留応力を許容値以下に均等に軽減できるという特徴があります。

<効果>
『ヒズミレス』の適用により以下のような具体的な効果が期待されます。
1.板材切断後の寸法変化量のばらつき低減による組立精度の向上。
2.短冊状切断時の横曲がり変形量の低減。
3.溶接時の幅収縮量や長さ収縮量のばらつき低減・安定化。
 上記のような、切断や溶接時の変形量の安定化・高精度化により、切り直しや再矯正などの修正工程が省略でき、工作の自動化が実現できます。また、船体ブロックどうしの接合組立時間の短縮も期待されます。
 さらに、船首部や船尾部では曲面加工が行われますが、本工法への適用についても検討中です。

 『ヒズミレス』の商品化にあたり、当社では1999年より大手造船メーカーと共同研究を実施し、これまで約7,000トンの使用実績があります。当社では、本鋼板が造船メーカーの生産性向上に大きく貢献するものと確信しており、今後積極的に営業活動を行っていく考えです。当面の販売目標は50,000トン/年と考えており、将来的には設備・技術を最大活用することによって、さらに販売量を拡大していく予定です。
 なお、本鋼板は、造船分野のみならず、他の厳しい工作精度が要求される分野への適用も目指します。

以  上

 


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