高耐熱性コンクリートキャスクの開発について


2003年3月31日
叶_戸製鋼所
大成建設

高耐熱性コンクリートキャスクの開発について
〜使用済燃料中間貯蔵容器の多様化、需要拡大に対応〜

 

 叶_戸製鋼所(以下:神戸製鋼)と大成建設梶i以下:大成建設)はこのほど、従来のコンクリートに対して耐熱性を大幅に高め(*1)、150℃の高温下でも長期的な使用が可能となるコンクリート材料を共同で開発し、これを採用した使用済燃料中間貯蔵用コンクリートキャスクの基本設計を完了しました。これにより、現在国内で中間貯蔵用に使われている金属製のキャスクと同等の安全性を維持しつつ、より安価なキャスクの製造が可能となります。今後は、早期の実用化を図り、電力会社向けを中心に販売活動を展開していきます。また、金属キャスクと同様、輸送用としても使用可能なコンクリートキャスクの開発も同時に進めて参ります。なお、今後の実用化・マーケティングは、神戸製鋼の関連会社でキャスクを専門に取り扱う「トランスニュークリア梶v(*2)と共同で進めていくことになります。

 使用済燃料の取扱いは将来にわたる大きな課題となっており、輸送から貯蔵に至るまで厳しい安全管理が求められています。同時に輸送、貯蔵に使われる容器(キャスク)などの機器については、需要の拡大が確実なものとなっています。現在、米国においては金属製とコンクリート製のキャスクがおよそ半数ずつ、欧州では金属製が主流で、一部においてコンクリート製が使用されております。日本ではこれまで金属キャスクのみが使用されており、コンクリート製については実用化に向けた検討段階にあります。

 神戸製鋼は金属キャスクの設計・製造において、国内トップの地位を確立しています。また、大成建設はコンクリートなど建設関連の材料開発において最先端の知見を有しており、早くから、共同でキャスク用コンクリートの開発を進めてきました。このほど開発した高耐熱性コンクリートキャスクは、キャスクの需要の高まりやユーザーニーズの多様化に対応すべく両社の持つノウハウ、知見を最大限に生かした設計となっています。

【新開発コンクリートキャスクの特徴】
@安全性が向上(従来のコンクリートキャスクとの比較)
従来のコンクリートキャスクは、コンクリートの温度を低く抑えるために、コンクリートキャスク本体とキャニスター(キャスク内部に入れる使用済燃料の収納缶)の間に外部空気を取り入れる構造を持つため、外気がキャニスターに直接触れることで腐食などが発生する可能性があり、その対策が必要である。耐熱性の高いコンクリートを使用した場合、外部から空気を取り入れる必要がなく、キャニスターが外気に触れない構造とすることができるため、その心配がない。また、開口部がなくなることにより放射線の遮蔽性能が向上し、金属キャスクと同様の密閉構造となる。
キャスクの内部空間、或いは二重蓋間にヘリウムを充填し、この圧力を監視することで、金属キャスクと同等のモニタリングが可能となる。

A使用済燃料の収納効率が向上(従来のコンクリートキャスクとの比較)
使用済燃料を貯蔵する際のポイントは、発生する中性子とγ線を如何に遮蔽するかにある。γ線はコンクリートの密度を、中性子は水素含有率をそれぞれ高めることで遮蔽効率を向上することが出来る。今回開発したコンクリートは密度と水素含有量の双方を顧客のニーズに応じて高めることが可能である。その場合従来材に比べコンクリートの薄肉化が可能となり、キャニスターの収納容積を増加させることができる。

【新開発コンクリートの特徴】
高温での水素含有量を確保するために高温まで水素を放出しない水酸化物を添加し、かつ、密度を確保するために金属材料を添加している。
従来のコンクリートと同等あるいはそれ以上の密度を持ち、150℃の環境でも普通コンクリートと同等あるいはそれ以上の水素含有量を保持できる。
通常のコンクリートと異なり、締め固め作業なしに、打設、充てんが可能である。
本キャスクのように多数の伝熱フィンを有する構造形式では非常に有利で、隅々まで均質な遮蔽性能を得ることが出来る。
強度が高く、ひび割れもしにくいため、耐熱性が求められる遮蔽材料の他、高強度コンクリートとしての利用が可能であり、キャスク以外の用途にも適用が期待できる。


(*1) キャスクに用いるコンクリートに関する性能規定は、現在関係各所で検討が進められている。原子力発電所で用いられるコンクリートは、一般部65℃、配管周囲で90℃以下での使用が求められている。一般的なコンクリートは100℃を越えると水分の逸散が顕著に進み所定の水素含有率を保持することが困難である。
(*2) 社長:川端皓孔、設立年月:1984年4月、資本金:80百万円
放射性物質・原子燃料物質の輸送・輸送容器関連の専門エンジニアリング会社

以 上


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