2003年8月 株式会社神戸製鋼所 高反射率・高耐久性を備えた次世代光ディスク用 銀合金薄膜 およびスパッタリングターゲット材の開発について 神戸製鋼はこのほど、反射性・耐久性(耐食性、耐凝集性)に優れた光ディスク用銀(Ag)合金薄膜およびスパッタリングターゲット材を開発しました。今回開発したAg合金の組成は、Agに極微量のBi(ビスマス)を添加した合金をベースとする「Ag−Bi系合金」です。 すでに株式会社コベルコ科研(神戸製鋼の100%出資子会社:以下 コベルコ科研)が、同組成のスパッタリングターゲット材を国内外の光ディスクメーカーにサンプル出荷しており、現在、本格採用へ向けた評価が行われております。 光ディスクは近年、大容量化・高密度化が進んでおり、パーソナルコンピュータや家庭用録画再生機器用途として、 DVD(Digital Versatile Disc、 片面4.7〜9.4GB)が普及しつつあります。さらに次世代の光ディスクとして、片面約20GBの光ディスクも市場に登場しつつあります。 このような状況の中、光ディスクに用いられる反射膜材料は従来のアルミ(Al)合金から、より高反射率、高熱伝導率を有するAgへの展開が進められており、当社も従来のAg合金より、より高い耐凝集性(耐マイグレーション性)を有するAg−Nd系合金を昨年度、上市致しました。しかしながら、昨今、光ディスク用反射膜には、より純Agに近い反射率と熱伝導率と純Agを大きく上回る耐食性・耐凝集性の相反する特性を高いレベルでバランスさせる要求が更に高まっています。 そこで、当社では"より純Agに近く、より耐久性に優れた"Ag合金を目標に従来のAg合金をさらに上回るAg合金の開発に取り組んで来ました。 今回開発した新合金ターゲット材の特長は以下の通りです。
1) 高反射率: 従来のAg合金が特に青色レーザー領域(波長400nm程度)で反射率が低いのに対し、ほぼ純Agと同等の反射率を有する(波長400nmにおける反射率差 1%程度)、 2) 耐食性: 環境試験(温度90℃、湿度90%)においても反射率の劣化がほとんどなく、塩水に対しても従来の貴金属を添加したAg合金を上回る耐食性を有する。また接着剤や保護膜などの有機材料との積層時に生じるハロゲンイオン等による腐食にも高い耐食性を有する(接着層や保護層の材料選択肢が広がる。) 3) 耐凝集性: 環境試験、熱処理後の凝集・粗面化・粒成長などの構造変化が少なく、耐凝集性に優れる。 (凝集による膜の断裂、表面平滑性の劣化、粒成長による電気伝導率・熱伝導率の変化等が 抑制されるため、反射膜の品質が安定する。) 4) 膜厚の均一性: (ターゲット材として)微細かつ均一な組織を有しており、膜厚の均一性等に優れる。 5) リサイクル性: ベースに貴金属を含まないためにリサイクル等が比較的容易である。 神戸製鋼グループにおけるターゲット事業については、神戸製鋼の技術開発本部がターゲット材料の開発を行い、コベルコ科研がスパッタリングターゲットとしてこれを製造・販売しております。特にコベルコ科研は、液晶パネル用アルミ合金ターゲット材で80%以上の世界シェアを持ち、ユーザーから高い評価を頂いております。 今後も神戸製鋼グループとしてのシナジー効果を発揮して、新規材料開発に取り組み、多様化するユーザーニーズに対応していきます。
以上
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