水素ステーション向け、世界初、1,000気圧まで昇圧可能な超高圧圧縮機の開発について


2003年12月11日

水素ステーション向け、世界初、1,000気圧まで昇圧可能な超高圧圧縮機の開発について

 当社は、水素ステーション注1)向けとしては世界で初めてとなる約1,000気圧(100MPa)まで昇圧可能な水素ガス超高圧圧縮機を開発しました。700気圧級水素タンクを搭載する次世代燃料電池車に水素を充填する水素ステーション向けに開発したもので、現在試作機の運転確認を行っています。

 燃料電池車は水素ガス燃料を大気中の酸素と反応させて得られる電気エネルギーを動力源に電気モータで走行します。エネルギー効率が良く、二酸化炭素など有害な排出ガスを出さないことから、地球環境に優しい近未来の自動車として、早期実用化に向けた研究が進められています。気体を燃料とすることから、水素ステーションでは、高い圧力にすることで体積を小さくし、より多くの水素ガスを貯蔵しようとしています。その圧力を利用することで、燃料電池車の燃料タンクに高圧で充填することが可能となります。こうした、水素ステーションでの昇圧時に、必ず水素ガス超高圧圧縮機が使用されます。現在国内においては、350気圧級水素タンクを搭載する燃料電池車に、400気圧で水素ガスを供給するステーションが建設され始めています。1回の充填でより走行距離を伸ばすために、燃料電池車に搭載する水素タンクでは700気圧級、水素ステーションでは1,000気圧級の超高圧化の研究が進められています。水素ガス超高圧圧縮機は、燃料電池車の普及にともない、ガソリンスタンドに替わる燃料供給インフラ用に需要拡大が期待出来ます。

 このたび当社は、国内圧縮機トップメーカーである(ピストン式水素圧縮機だけでも400台以上の納入実績)当社水素圧縮機の技術をベースにした無給油ピストン式圧縮機注2)と、ダイヤフラム式圧縮機注3)の世界トップメーカーであるホーファー社(ドイツ ミュルハイム市)のダイヤフラムヘッド注4)を組み合わせた一体型圧縮機とすることで、低圧から1,000気圧までを、1台の圧縮機で対応可能としました。将来燃料電池車の普及にともない大量の高圧水素ガスが必要となることを想定して、吸込ガスの体積が大きい低圧側には大容量に適したピストン式、そして高圧側には超高圧に適したダイヤフラム式を採用することで、大容量化を実現しています。加えて、ピストン式圧縮機が無給油タイプであることから、燃料として使用する際に除去する必要のある油分が入ることがなく、クリーンな高圧水素ガスが供給出来ます。

 当社は、昨年10月にホーファー社とダイヤフラムヘッドの日本国内独占供給を含む協業契約を締結しました。ホーファー社から、ダイヤフラムヘッド部分のみの供給を受け、圧縮機ケーシングやピストンなどの部品製作や組立、更にピストン式とダイヤフラム式圧縮機間のバランスを含めて一体型圧縮機として最適な稼動条件の設定は、全て当社が行っています。こうした独自開発により、将来の燃料電池車、水素ステーションの普及時に、あらゆるニーズへの対応が可能です。

 当社は、既に処理量にして50Nm3/時間の試作機をこの10月に完成させました。その後、当社高砂製作所内で1,000気圧までの昇圧試験運転を行い、性能確認を実施しています。既に自動車メーカーなどへのプレゼンテーションを開始し、並行してこの試作機を岩谷産業(株)グループ内の水素ガス製造工場へ移設し、700気圧級燃料電池車に対応した水素ステーション用に運転検証を継続する予定です。同時に、マーケットに適合した機種のシリーズ化(処理量50〜300Nm3/時間程度まで)を実施していきます。

<試作機の主な仕様>
   吸込(入側)圧 8気圧(0.8MPa)、吐出(出側)圧:1,000気圧(100MPa)
   処理量(出側) 50Nm3/時間⇒最大200〜300程度までシリーズ化を予定。
   特徴 (1)無給油シリンダを採用(2)高圧力比(吐出圧/吸込圧)100以上に対応可能(3)低振動(バランスが良い水平対抗型を採用)(4)低騒音(5)メンテナンスが容易

【語句説明】
注1 )水素ステーション:
・燃料電池車へ水素燃料を供給する、ガソリンスタンドに替わる設備。
注2 )ピストン式圧縮機:
・容積形圧縮機の中で最も一般的なもの。シリンダ内のピストンの往復動によりガスを圧縮する。
注3 )ダイヤフラム式圧縮機:
・容積形圧縮機の一種。金属ダイヤフラムの繰り返し湾曲によりガスの圧縮を行う。
注4 )ダイヤフラムヘッド:
・ダイヤフラム圧縮機のガスを圧縮する金属ダイヤフラムを含む部分。

【補足】
[ホーファー社概要]
・社名 アンドレアス・ホーファー・ホッホドラクテクニック社
(Andreas Hofer Hochdrucktechnik GmbH)
・設立 1920年
・所在地 ドイツ ミュルハイム アンデール ルアー
・事業内容 ダイヤフラム式・ピストン式高圧圧縮機事業ほか

[岩谷産業(株)概要]
・社名 岩谷産業株式会社
・設立 1945年
・所在地 本社所在地 大阪・東京
・代表者 代表取締役社長 牧野明次
・資本金 200億9600万円(2003年5月31日現在)
・売上高 4,260億円(2003年3月期)
・事業内容 エネルギー事業、産業ガス事業ほか

 



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