アルミ溶解時に発生するアルミドロスのリサイクル方法の開発について


                             平成9年3月24日
                             株式会社神戸製鋼所
                             東京電力株式会社

    アルミ溶解時に発生するアルミドロスのリサイクル方法の開発について
       ~アルミの回収率を30~40%もアップ~

 神戸製鋼と東京電力は省資源、省エネルギー、環境保全、および夜間の割安な電
力の利用拡大をねらいとして、このほど、アルミを溶解するときに発生する溶滓
(アルミドロス)から効率良くアルミを取り出すとともに残灰についても有効利用
する新たな処理技術の開発に成功いたしました。

 アルミ缶の材料やサッシなどのアルミ製品を製造する過程では、まずアルミの地
金やスクラップを溶解炉で溶解します。この時、溶湯面上に酸素化合物が生成さ
れ、その後空気と反応して窒素化合物が生成されます。これらをアルミドロスとい
います。
 このアルミドロスは、国内で年間35万トン以上も発生しており、製品にはその
まま利用できないため、炉から取り除いています。しかし、その中にはまだ使える
多くのアルミ分が残っており、しかもアルミドロスからアルミを回収する場合に必
要なエネルギーは、ボーキサイトからアルミ新地金を製造する場合のわずか3%で
すむことから、これまで灰絞り機やバーナー式回転炉を用いてアルミを回収してい
ました。ただし、この技術では、回収率は40~60%が限度でした。
 さらに、アルミドロスの一部は製鋼用脱酸剤としても使用していましたが、アル
ミを回収した後に残った年間約12万トンもの灰は、産業廃棄物として処分するし
か方法がありませんでした。この残灰は放置すると自然発火の可能性があるほか、
灰に含まれた窒化アルミが水分と反応するとアンモニアなどの有毒ガスを発生する
ため、埋立前にも十分な管理が必要であるなど、残灰を安定化させる技術の確立が
求められておりました。

 こうしたことから、神戸製鋼と東京電力は、電力を使ってアルミドロスからアル
ミを高歩留まりで回収するとともに、回収後の残灰を有効利用する技術の確立をめ
ざして、平成6年6月から共同で研究を行ってきました。その後、基礎研究の成果
をもとに、平成7年10月より神戸製鋼真岡製造所の隣接地に実証炉の建設を開始
し、平成8年4月から実証試験を経て、このほど実用化の目処をつけたものです。

 この技術により、アルミドロスからのアルミの回収率を従来の40~60%から
80~90%へと大幅に向上させるとともに、回収後に残る灰の量を減らすことが
可能となります。さらに、その残灰を改質して、タイル、耐火材、セメントなどの
原料としてリサイクルすることができ、埋立処分を要する灰はほとんどなくなります。

今回開発した処理技術の特徴はつぎのとおりです。

■電極から放電する3000~5000℃の高温のアークにより急速加熱する回転炉を使
 用することにより、炉の熱効率が75%と非常に高く、アルミ回収処理時間の短縮
 が図られます。(処理時間:120~180分/バッチ→60~80分/バッチ)

■電気で加熱するため、従来方式のバーナー式回転炉に比べて、炉内の雰囲気を自
 由にコントロールすることができます。これによりアルゴンなどの不活性ガスの
 中で加熱し、アルミの酸化などを防ぐことができます。このため、従来40~60
 %程度であったアルミの回収率が80~90%と格段に向上します。

■残灰処理においても高温のアークにより加熱するため、有害な窒化アルミや塩化
 アルミなどを含む残灰のほとんどは、無害なセラミックの一種である酸化アルミ
 の粉に分解・処理され、タイル、耐火材、セメントの原料としての利用が可能と
 なります。このため、産業廃棄物はほとんど排出しなくなります。

■電気で加熱するため、排ガス発生量が極めて少なく、NOx、SOX、CO2なども発生し
 ないため、排ガス処理に要する費用を軽減できます。

■夜間の割安な電気を使用することで、さらに低コスト運転が可能になるととも
 に、電力負荷の平準化を図れます。

 今後、神戸製鋼と東京電力は本技術の普及を図り、リサイクルによる省資源、省
エネルギーを通じた環境保全、また、電力負荷の平準化をめざしていきたいと考え
ております。なお、神戸製鋼は本プラントの販売活動を平成9年度より開始します。

<実証炉の仕様>
処理量 500kg/バッチ 
型式 電極から放電するアークにより加熱溶解するアーク式回転炉
出力 660kW
サイズ 外径φ2300、内径φ1600、長さ2700mm■
                                                                  以上


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