新チタン合金を採用した人工股関節の開発・販売について
1997年10月23日 (株)神戸製鋼所 新チタン合金を採用した人工股関節の開発・販売について 当社は、新チタン合金を採用した人工股関節(H-5)を開発し、厚生省より8月6 日に製造承認の認可を受けたため、このほど販売を開始しました。販売目標は発売開 始後1年間で10億円です。また、1セットの販売価格は約120万円です。
当社が、開発した人工股関節の主な特長は次の通りです。 <新しい人工股関節の特長> 1. 新チタン合金(KOMLLOY-5)の採用。(特許出願中) ・ 組成はTi-6Al-2Nb-1Taで、バナジウムを含まないため、安全性 ・ が高い。 ・ Ti-6Al-4Vに比べ、疲労強度が15%高く、しかも熱処理後の材料劣 ・ 化も生じにくい。 ・ネック部分の直径が9mm(世界最小)で屈曲可動範囲を拡大。 2. プラズマ溶射のポーラスとAWガラスセラミックスのボトムコーティング。 ・ 純チタン粉末のプラズマ溶射によるポーラス(凹凸)部をステム(柄)とカッ ・ プに設け、さらに生体液性度の高いAWガラスセラミックスをポーラス部の全 ・ 面ではなく、凹部のみにコーティング。このため、新生骨のポーラス層への進 ・ 入が促進され、高い結合力を実現。 3. ジルコニア骨頭の採用 ・高い疲労強度と靭性。 ・インナーカップ部のポリエチレンとの優れたしゅう動特性による摩耗の低減。 4. ステムデザイン ・日本人用に合ったサイズをラインアップ。 ・3次元テーパ形状を採用したため、髄腔内で安定的に固定されやすい。 従来、人工股関節などの医療用金属材料としてはCo-Cr合金、ステンレスなどが 多用されてきましたが、近年チタン合金が生体適合性に優れることから注目されてい ます。 当社は、10年ほど前から大学・病院の協力をいただきながら、新しいチタン合金を 主体にした人工股関節の開発を開始し、基礎的な強度試験、生体適合性などの安全性 の確認試験をおこなった上で、臨床試験を遂行してきました。その一方で、すでに厚 生省より認可を受けた製品として人工股関節システムシリーズK-MAX HIP SYSTEMの 2タイプ(H-1/H-2)を持ち、関西系の大学系列病院を中心に地域限定として 先行販売することにより、マーケティングを行ってきました。その結果、1995年には Ti-15Mo-5Al-3Zr(KOMLLOY-3)組成の新チタン合金を用いたセメント タイプの人工股関節(H-3)を全国の大学系列病院に販売を開始しており、年間数 億円規模の売り上げを上げるまでに至っています。 当社は、チタンのトップメーカーとして航空機、化学、建材、民生品など多方面にわ たって用途開発を進めてきましたが、その一環として医療分野への適用を検討し、1995 年には医療材料室(現医療材料部)を発足させ、本格的に参入しました。また、当社 の新中期経営計画『KOBELCO-21』('97-'99アクションプラン)でも新製品・新事 業育成の1案件として位置づけて取り組んでいます。 医療製品分野は高齢化社会を迎える21世紀の成長産業の一つであるとともに、景気 変動を受けにくいため、当社が保有する材料開発から品質保証までの総合技術力を生 かせる分野と考えており、今後積極的に販売活動を行う考えです。 以上
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