産業廃棄物のリサイクル技術の共同開発と実用化について
1998年5月18日 株式会社神戸製鋼所 武田薬品工業株式会社 産業廃棄物のリサイクル技術の共同開発と実用化について ~環境に優しい超臨界水技術を利用した商業プラントが世界で初めて稼動~ 武田薬品工業株式会社(以下武田薬品)と株式会社神戸製鋼所(以下神戸製鋼)は共 同で、化学工場で発生する残渣(有機廃棄物)を超臨界水を利用してリサイクルする技 術を開発し、このほどこの開発成果を採用した世界で初めての商業プラントを武田薬品 鹿島工場(茨城県鹿島郡神栖町)にて稼動を開始しました。 地球上で唯一自然に存在する溶媒である「水」を高温・高圧状態にすると、わずかな 温度・圧力の変化で密度などの物性を大幅に変化させることができるため、通常の気体 や液体とは異なる性質を示します。このユニークな流体が超臨界水です。この超臨界水 は常温・常圧では溶解しない有機物質を溶解し、しかも、酸やアルカリなどの触媒を用 いずに有機廃棄物を短時間で分解させる優れた特徴を持っています。今回実用化したリ サイクル技術は、有機溶媒や酸触媒などを用いず、水しか使わないので、廃水の処理な どが不要であり、きわめて環境に優しい技術であるといえます。 武田薬品の鹿島工場では自動車のシート、ベッドやソファーなどのクッション材、冷 蔵庫の断熱材、塗料、接着剤など幅広い用途に使用されるポリウレタン樹脂の製造原料 であるトリレンジイソシアネート(以下TDI)を製造しています。このTDIはトル イレンジアミン(以下TDA)から製造していますが、この時にTDI残渣が発生しま す。この残渣はこれまで有効な回収方法がありませんでした。 武田薬品は「環境に優しく」を目標に、神戸製鋼の有する超臨界技術に関する高い技 術力に注目し、TDI残渣の有効利用について共同開発の依頼を行ったものです。 今回、本格的に稼動を開始した商業プラントでは年間数千トンのTDI残渣を連続処 理して、TDAを80%の高効率で回収できるもので、超臨界水技術を利用したケミカ ルリサイクルプラントとしては世界で初めてのものです。本プラントの稼動で残渣の 有効利用が実現されました。 神戸製鋼は1980年代より、超臨界技術において先駆的な研究開発を続けている東 北大学の斎藤正三郎名誉教授、新井邦夫教授らの研究グループの協力を得て、この分野 でパイオニア的な役割を果たしており、これまで超臨界二酸化炭素を分離溶媒として用 いた商業プラントを納入した実績を持っています。今回、世界で初めて超臨界水の商業 プラントが稼動することになったことで、プラントの幅広い普及を目指すとともに、こ の技術を応用し、廃自動車や廃家電などの廃プラスチックのリサイクル分野にも今後 さらに積極的に展開を図っていく考えです。 以上
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