アンバランスド・マグネトロン・スパッタ(UBMS)装置の開発・販売について


                                        1998年10月15日

ハードコーティング用成膜装置
アンバランスド・マグネトロン・スパッタ装置の開発・販売について
                         (タイプ:UBMS404)


 当社はこの度、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)(*1)等の硬質皮膜形成用の
アンバランスド・マグネトロン(UBM)方式(*2)のスパッタ装置を開発し、株式会
社イオン工学センター(大阪府枚方市)に納入するとともに、販売を開始しました。
 販売価格は8千万から1億2千万円、年間の販売目標台数は10台です。

 今回開発したアンバランスドマグネトロンスパッタ(UBMS)装置は、皮膜材料
を蒸発させるスパッタリング(*3)蒸発源部分の磁場バランスを意図的にアンバランス
にして、蒸発源部分で発生したプラズマ(*4)が皮膜を形成する基板にまで到達する構
造を採用しています。これにより、成膜時に基板へ衝突するイオンが増加するため、
皮膜が緻密で且つ密着性が高くなり、また反応性に優れたコーティングが可能になる
ので、耐摩耗性、摺動性向上用の硬質皮膜形成に適しています。

 従来のDLC皮膜は、その弱点として密着性の弱さ(スクラッチ試験(*5)において
50N以下程度)が指摘されてきましたが、このUBMS装置で最適化した条件でコ
ーティングしたDLC皮膜の密着性は、超硬基板に対しては100N以上、また工具
鋼基板に対しては80N以上と非常に良好な結果を得ています。このように飛躍的な
密着性の向上によって、従来DLC皮膜が適用されてきた金型などのアプリケーショ
ンに加えて、密着性の問題で使用が見送られてきた機械部品などの用途への適用拡大
が期待できます。

 今回開発したUBMS装置の特長を以下に示します。
(1) 高品質な成膜
      UBM蒸発源の採用により、緻密で密着性の高い、反応性に優れた皮膜
      形成が可能。
(2) 多彩な成膜
      金属膜、合金膜から反応性スパッタによる絶縁膜まで、多彩な安定成膜
      が可能。
(3) 多様なプロセス
      全自動制御システムを標準装備し、多層積層膜や傾斜組成膜などの複雑
      なプロセスも容易に可能。

 これらの特長を生かして、まず手始めにUBMS装置を、DLC皮膜のコーティン
 グ用として販売展開する予定です。
 また、今後更なる用途展開として、二硫化モリブデン(MoS2)に代表される潤滑
性に優れたコーティングへの適用拡大を図るとともに、既に1986年の発売以来、
工具などの耐摩耗皮膜のコーティング装置としては国内トップシェアであるAIP
(アークイオンプレーティング)装置(*6)と併せて、ハードコーティング分野の幅広い
ユーザーニーズに応えて行きます。


<語句説明>

*1 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)
Diamond Like Carbon(ダイヤモンドライクカーボン)。その名の通りダイヤモンド
に似た特性を持つアモルファス(非晶質)状の炭素材料。DLC皮膜は、ダイヤモンド
に近い硬度を持ちつつ、表面が非常に平滑で摩擦係数が小さいことから、摺動部材等へ
のコーティング材料として、最も注目される次世代潤滑膜である。
*2 アンバランスド・マグネトロン(UBM)方式
UnBalanced Magnetron(非平衡磁場型)。従来のマグネトロンスパッタリング蒸発
源内の磁場発生機構において、外側の磁極を内側の磁極に対して強くすることにより、
磁力線の一部が基板位置まで到達するようにしたもの。
*3 スパッタリング
薄膜を形成する代表的方式でPVD(物理的蒸着法)の一種。金属ターゲットにイオン
を衝突させ、はじき飛ばされた(スパッタされた)ターゲット原子により基板上に薄膜
が形成される。
*4 プラズマ
 「イオンと電子が混在し、全体として中性を保っている状態」と定義され、スパッタ
リング等による薄膜形成はこのプラズマを応用した技術である。
*5 スクラッチ試験
 硬い針を薄膜に垂直に押し付けて荷重をかけながら引っ掻くように動かし、薄膜の密
着性を評価する試験方法。
*6 AIP(アークイオンプレーティング)
 PVD(物理的蒸着法)の一種であるが、真空中でのアーク放電による高いエネルギー
を利用してターゲット金属を瞬間的に蒸発、イオン化し、基板上に薄膜を形成する方法。

                                              以上


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