1999年5月17日

 表面皮膜処理装置『アークイオンプレーティング装置(AIP)』の

   新シリーズ「AIP-Sシリーズ」の開発・販売について

 

 当社は、表面皮膜処理装置『アークイオンプレーティング(以下:AIP)装置』(登録

商標名:AIP)の新シリーズ「AIP-Sシリーズ」5機種を開発し、5月20日から販

売活動を開始します。

 新シリーズのラインアップは小型研究用から大型生産用までと幅広く、販売価格について

は、販売の中心となる中型および大型生産用で、約9,500万円~1億2千万円です。

 販売目標台数は初年度が約10台、2000年度にはその倍増を狙っています。

 

 AIP装置は、主に金属などの耐摩耗性、摺動性などの向上を目的とした表面皮膜処理装

置で、原理としては、真空中でのアーク放電によってターゲット金属を瞬間的に蒸発・イオ

ン化し、硬質な薄膜を形成させるものです。

 AIP装置は、メッキ法に比べて環境にやさしいドライプロセスであることや、多様な皮

膜に対応できるメリットがあることなどでその応用範囲が広がってきており、主に工具、自

動車エンジン部品、金型などの用途向けとして使用されています。

 

 今回開発した新シリーズは、より高品質で、より多様な膜を求めるマーケットニーズに対

応するために開発されたものです。

 

新シリーズの特長は以下の通りです。

 

1)新型蒸発源の開発(特許申請中)により、成膜速度を犠牲にすることなくマクロパーティ

  クル(=10μm以上程度の大粒な金属粒)を最大限低減させたことで、より滑らかな

  高品質成膜が可能。

2)構成機器の能力アップによるプロセスバッチ時間の短縮やチャンバーの大型化と膜厚

  分布改善による処理空間のアップなどで高い生産性を実現。(現行シリーズ比20~30%

  UP)

3)ワーク温度管理をより簡単に、より精度良く実現できる直接測温システム(熱電対)を

  塔載。

4)予熱機能を高め、従来より高温の温度領域の処理も可能(標準装備で550℃以上)。

5)Windows対応の制御システムを塔載し、操作性を向上。

6)オプションで蒸発源の追加や他方式蒸発源の搭載が可能であり、複合プロセスにも対応

  可能なフレキシビリティを確保。

 

 当社は、1986年からAIP装置の製作販売を始めており、現行モデルや昨年上市した

UBMスパッタ装置DLC皮膜他の潤滑膜用途向け)に今回の新シリーズを追加すること

によって、販売実績120装置を誇る日本のAIP装置業界のトップメーカーとして、今後

も幅広いユーザーニーズに応えていきます。

 

 今回の新シリーズは5/20~22に東京流通センター(平和島)で開催される表面技術総合展

(METEC99)に出展し、ユーザー層に広く紹介して行く予定です。

 

【語句の説明】

表面皮膜処理

表面を物理的・化学的方法で被膜し、防錆・防食、装飾、潤滑、耐摩耗性、耐摺動性など、

目的に合った特性を持たせること。

アークイオンプレーティング

PVD(物理的蒸着法)の一種であるが、真空中でのアーク放電による高いエネルギーを利用してターゲ

ット金属を瞬間的に蒸発、イオン化し、基板上に薄膜を形成する方法。

ドライプロセス

一般に真空蒸着法と呼ぶプロセスで、加熱などにより真空中で材料を蒸発させ、基板に膜を形

成する方法。粒子は蒸発温度程度の熱エネルギーしか持たないので、到着エネルギーが小さく、基板

との付着力が小さい。物理的蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)と化学的蒸着法(CVD:

Chemical Vapor Deposition)がある。

マクロパーティクル

アークスポットの近傍においては、蒸発したカソード物質の30~80%がイオン化されるが、同時に電気的

に中性な溶滴であるドロップレット(マクロパーティクル)も発生し放出される。この副産物は皮膜の表

面粗度の観点からはデメリットとなるため、このドロップレットを抑える蒸発源の開発が盛んに行わ

れている。

UBMスパッタ装置

UnBalanced Magnetron(非平衡磁場型)。従来のマグネトロンスパッタリング蒸発源内の磁場発生機構

において、外側の磁極を内側の磁極に対して強くすることにより、磁力線の一部が基板位置

まで到達するようにしたもの。

スパッタリング

薄膜を形成する代表的方式でPVD(物理的蒸着法)の一種。金属ターゲットにイオンを衝突させ、は

じき飛ばされた(スパッタされた)ターゲット原子により基板上に薄膜が形成される。

DLC皮膜

Diamond Like Carbon(ダイヤモンドライクカーボン)。その名の通りダイヤモンドに似た特性を持つアモルファ

ス(非晶質)状の炭素材料です。ダイヤモンドに近い硬度を持ちつつ、表面が非常に平滑で摩擦

係数が小さいことから、摺動部材等へのコーティング材料として、最も注目される次世代潤滑膜。

                                      以上


   ホームへ

      一つ上のページへ