溶接材料の欧州現地製造・販売会社の開所式について

                                                              1996年6月11日        
                                                                                          
                    溶接材料の欧州現地製造・販売会社の開所式について                      
                                                                                          
        当社のヨーロッパにおける溶接用ステンレスFCW(フラックス入りコアードワイ        
      ヤ)の生産拠点である「コベルコ・ウェルディング・オブ・ヨーロッパ社」は、本日        
      6月11日、オランダのリンブルフ州ヘールレン市において開所式を行います。              
                                                                                          
        現地時間の午後に行われる開所式には、ヘールレン市長のJ.プルメーカーズ氏を        
      はじめ、オランダ経済企業誘致局(NFIA)、リンブルフ州開発公社(LIOF)、      
      地元自治体、需要家及び日本大使館の関係者など約130名ほどの御出席を頂く予定        
      で、当社からは島田博夫溶接事業部長が出席します。                                    
                                                                                          
        コベルコ・ウェルディング・オブ・ヨーロッパ社は、欧州初のステンレスFCW生        
      産拠点として '94年6月に設立され、同年11月からバイテル工業団地(オランダ最南        
      部、リンブルフ州)において、工場の建設に着手し’95年10月に完成しました。その        
      後、試運転等各種テストランを経て、12月より商業生産を開始しており、現在はフル        
      稼働(年産 800トン)しています。これまで溶接用ステンレスFCWは欧州において        
      現地生産されておらず、同社は、欧州で唯一最大のステンレスFCWメーカーとして        
      造船、海洋構造物、建設機械、化学機器などヨーロッパの主要産業向けに販売を開始        
      しているほか、一部製品は米国向けにも輸出されています。                              
                                                                                          
        当社は、欧州市場における事業拡大、高品質溶接材料の供給を目的に、ヨーロッパ        
      に生産販売拠点を設立することを決めました。立地についてオランダのヘールレン市        
      としたのは、1)内陸交通網が充実しており、欧州の集中生産拠点としてのメリットが        
      生かせること、2)マーストリヒト空港まで20分という足回りの良い場所に位置し、        
      営業マンや技術サービス要員の顧客訪問が極めて便利であること、3)欧州の中心に位        
      置し、独、仏、英等の大市場に対して48時間以内で配送が可能であること、4)レベ        
      ルの高い労働者、技術者の確保が容易であること等の理由が挙げられます。                
                                                                                          
      〔新会社の概要〕                                                                    
      ・社  名  :コベルコ・ウェルディング・オブ・ヨーロッパ                             
                  (KOBELCO WELDING OF EUROPE B.V.)                                        
      ・所在地  :オランダ/ リンブルフ州ヘールレン市バイテル工業団地                      
      ・設  立  :1994年6月27日                                                          
      ・代表者  :御崎欣哉(みさき きんや)                                                
      ・資本金  :950百万円 (15,001千ギルダー)                                         
      ・出資比率:神戸製鋼グループ 94.6%、日商岩井グループ 5.4%                           
      ・従業員  :32名(日本人3名含む)                                                
      ・生産能力:800トン/年                                                          
      ・事業内容:ステンレスFCW(フラックス入りコアードワイヤ)の生産・販売            
      ・工場稼働:1995年12月  商業生産                                                    
      ・敷地面積:33,000平米 (内建屋面積 5,300平米 )                                      
      ・投資金額:約10億円                                                                
                                                                                          
      〔ご参考〕                                                                          
      ・当社溶接事業部の海外展開:                                                        
        1968年にタイにおいて、溶接棒の現地生産・販売会社「TKW(タイ・コーベ・ウエル          
        ディング) 社」を設立(当社海外生産の第1号)して以来、1979年には「KWS(コー          
        ベ・ウエルディング・シンガポール) 社」(溶接棒生産・販売) 1988年には「KMWT          
        (コーベ・ミグ・ワイヤ・タイランド)社」(ソリッドワイヤ生産・販売)を設立          
        し、現在では、各々の国でトップメーカーに育っています。                              
        また、アメリカにおいては、1990年に各種溶材の販売拠点として「KWAI(コーベ・        
        ウエルディング・オブ・アメリカ) 社」を設立しました。さらに、1995年に韓国で        
        KWK(コーベ・ウエルディング・オブ・コリア)を設立しました。今後は、今回の欧        
        州拠点も含めて、各地域の市場特性に応じた形で、更にグローバリゼーションを進        
        めて行くことにしています。                                                        
                                                                                          
      ・溶接材料の基礎知識:                                                              
        金属材料を接合するには大きく分けて次の2種類があります。                          
          1)ボルト締め等の機械的接合法                                                    
          2)アーク熱等のエネルギーを使って金属と金属を接合させる冶金的接合法              
        溶接とは2)の冶金的接合法のことを言います。                                        
                                                                                          
        1)溶接材料の役割                                                                  
        溶接材料は「鉄をつなぐ火花」と呼ばれており、母材と同成分の材料を4000度の高        
        温で溶かし、金属と金属を接合するものです。溶接中に大気から有害成分が入ると        
        溶接欠陥がでますので、溶接部をカバーするシールド材として被覆材やガスが使わ        
        れます。                                                                          
                                                                                          
        2)FCW(FLUX−CORED  WIRE)・・ガス・メタル・アーク溶接            
        炭酸ガス又は炭酸ガスの混合ガスを溶接部に流し、大気からシールドした中でワイ        
        ヤを連続的に送給してアーク溶接を行うが、このワイヤには内部にフラックスと呼        
        ばれる特殊な化学成分を含んでいるのが特徴で、このフラックスのお蔭でソリッド        
        ワイヤで溶接するよりも美しい光沢のある溶接部が得られ、また溶接そのものが簡        
        単で、溶接技量に左右されないという利点があり、新世代のワイヤとして普及が進        
        んでいます。                                                                      
                                                                                          
                                                                                          
                                                                            以  上        
                                                                                          
                                                                                          
                                                                                          
      ┌─────┐                                                                      
      │御参考−2│                                                                      
      └─────┘    <溶接市場の概要>                              
                                                                                          
        成熟化が進んでいる溶接業界において、最も新しく、かつ技術面で進んでいる商品        
        はFCWですが、当社溶接事業部は日本最大の溶接材料の総合メーカーとして、近        
        年FCWの導入・拡販に力を注いでいます。                                          
                                                                                          
        <欧州市場>                                                                      
        欧州市場は、全溶接材料需要(94年度予想43万t)の中でFCWの占める割          
        が5%程度と高くはありませんが、市場は                                            
                                                                                          
          1)将来的に全体の需要が下がるなかで、FCWの需要は伸びていくと見込まれて        
            る。(FCW では94年度予想  23千tに対し、2000年見込み  31千t)                 
          2)特にステンレスFCWは欧州現地に本格的な生産を行っているメーカーがなく、      
            殆ど日本からの輸入に頼っている。                                              
            (ステンレスFCW では94年度予想1千tに対し、2000年見込み 1.4千t)             
        という状況です。従って当社溶接事業部としては欧州市場を当社FCWにとって最        
        も重要な市場と位置づけており、将来的にもその重要性は高まると見ています。          
                                                                                          
                                                              (単位:千t)              
        <欧州の溶材需要動向>             予想   見込   見込                      
       ┏━━━━━━┳━━━━┯━━━━┯━━━━┯━━━━┯━━━━┯━━━━┓                  
       ┃      ┃1988│1990│1992│1994│1997│2000┃                  
       ┣━━━━━━╋━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┫                  
       ┃ 電弧棒  ┃ 166│ 162│ 128│ 120│ 120│ 120┃                  
       ┠──────╂────┼────┼────┼────┼────┼────┨                  
       ┃ ソリッド ┃ 263│ 278│ 240│ 230│ 230│ 220┃                  
       ┠──────╂────┼────┼────┼────┼────┼────┨                  
       ┃ FCW  ┃  17│  24│  21│  23│  24│  31┃                  
       ┠──────╂────┼────┼────┼────┼────┼────┨                  
       ┃ その他  ┃  57│  60│  60│  60│  60│  60┃                  
       ┣━━━━━━╋━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┿━━━━┫                  
       ┃ 合計   ┃ 503│ 536│ 449│ 433│ 436│ 431┃                  
       ┗━━━━━━┻━━━━┷━━━━┷━━━━┷━━━━┷━━━━┷━━━━┛                  
                                                                                          
          ステンレスFCW (FCWの内数)                  (単位:t)                    
   ┌────────┰────┬────┬────┬────┬────┬────┐                
   │ステンレスFCW┃ 480│ 740│ 800│1000│1200│1400│                
   └────────┸────┴────┴────┴────┴────┴────┘                
        電弧棒、ソリッドワイヤは微減を続け、FCWについては軟鋼、ステンレスとも伸        
        びていくと予想される。                                                            
                                                                                          
        <日本市場>                                                                      
        日本の溶材需要量は年間約34万tで、内神戸製鋼はシェア40%(約13.5万トン)        
        を占めるトップメーカーです。尚、溶接材料の市場規模は約1000億円程度と言われ        
        ております。                                                                      
                                                                                          
            <年間需要量 1994 年見込>            (単位:万t)                          
            ┌────────┬────┬────┬─────┐                          
            │        │日本国内│神戸製鋼│神鋼シェア│                          
            ├────────┼────┼────┼─────┤                          
            │総需要量    │34.0│13.5│ 40% │                          
            ├────────┼────┼────┼─────┤                          
            │FCW     │ 6.0│ 3.3│ 55% │                          
            ├────────┼────┼────┼─────┤                          
            │ステンレスFCW│ 1.7│ 0.6│ 35% │                          
            └────────┴────┴────┴─────┘            以上          
                                                                                          


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