PEN樹脂製造中間体(2,6-DMN)に関する共同研究開発について

                               1996年10月2日
                                株神戸製鋼所
                                モービル社 
   PEN樹脂製造中間体(2,6-DMN)に関する共同研究開発について


 株神戸製鋼所(以下 神鋼)及び米国モービル社は、1993年より、PEN(ポリエチレン
ナフタレート)樹脂の製造中間体である2,6-DMN(ジメチルナフタレン) の製造プロセスの共同研究
を行ってきました。その結果、このほどベンチプラント規模の実験で、低コストでの
2,6-DMN製造プロセスを確認し、基本プロセス特許を共同出願しました。今後は、
共同研究開発を継続して各種データの蓄積を行うとともに、両社協議の上で具体的な
商業化の方法・計画についても検討していく考えです。

 PEN樹脂の製造方法には数種類があります。そのうちの一つとしてナフタレンを
出発原料として2,6-DMNを合成・精製し、さらに酸化・エステル化反応を経て2,6-
NDC(ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル)を製造後、その重合反応によってPEN樹脂を製造
するプロセスがあります。しかしながらこのプロセスでは、2,6-DMN以降の製造
(2,6-DMN→2,6-NDC→PEN樹脂)は容易であることが確認されていましたが、
2,6-DMNを合成・精製する過程が技術面・コスト面とも非常に困難とされていまし
た。2,6-DMN以外の他の中間体を経由して2,6-NDCを製造するプロセスには数種
ありますが、いずれも製造が非常に難しく高コストなため、実用化されていませんで
した。

 ナフタレンからの2,6-DMNの合成法に於ける問題点は、合成過程で2,6-DMN以
外の9種類の異性体の生成が不可避であり、また、それら異性体間の沸点差がほとん
どないため、蒸留等の通常操作で2,6-DMNのみを高純度で単離することが非常に困
難であることです。そのため、選択性・活性に優れる触媒技術と、DMN混合物から
の効率的な2,6-DMN分離精製技術の確立が鍵と言われてきました。今回の神鋼とモ
ービル社の新2,6-DMN合成プロセスは、モービル社のゼオライト触媒と神鋼の高圧
精製技術を組み合わせ、上記問題点を解決するものです。


  今回の神鋼とモービル社の共同研究開発が対象とするPEN樹脂の製造プロセスは、
以下の通りです。

    製油所 製鉄会社 ガス会社
    └─────┬─────┘
          ↓
    ┌────────────────────────────┐
    │   ナフタレン                    │
    │                            │
    │        ←ゼオライト触媒による合成と高圧精製  │
    │     ↓    (神鋼・モービル社のプロセス)   │
    │  2,6-DMNの製造                  │
    └────────────────────────────┘
          │
          │   ←酸化・エステル化反応
          ↓
       2,6-NDCの製造(化学会社)
          │
          │   ←重合反応
          ↓
       PEN樹脂の製造(化学会社)

          ↓
  ┌───────┴──────────────┐
  ボトルメーカー フィルムメーカー 繊維メーカー他

   ┌────┐
   │    │内が今回の共同研究の対象プロセス
   └────┘

 2,6-DMNの最大の用途であるPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂は、PET(ポリエチレンテレ
フタレート)樹脂の代替品として、近年注目されている樹脂です。PET樹脂は、繊維、清
涼飲料水用ボトル、ビデオ・写真・食品包装用のフィルム等として大量に使用されて
おり、1994年には世界で年間約1,400 万トンの需要があると推測されています。この様
に大量に使用されているPET樹脂に比較して、PEN樹脂は以下の特長を有してい
ます。
(1) 樹脂の強度がPET樹脂の約 1.5倍であり、フィルムの厚みを薄くすることが可
  能であるため、長時間録画ビデオテープやAPS(Advanced Photo System)対応
  フィルムの製造を可能にしている。

(2) PET樹脂の耐熱性(ガラス転移温度)が69℃であるのに対してPEN樹脂は113 
  ℃の高温であるため、PEN樹脂で飲料用ボトルを製造すればPETボトルでは
  不可能であった100 ℃以上の煮沸消毒が可能である。このことは、PENのリタ
  ーナブルボトルへの適用を可能とするため、PETボトルのリサイクル問題の解
  決にもつながる。

(3) さらに耐熱性が高いことは、電子レンジ用食品容器や食品・医療包装材分野での
  フィルムの高品質化が図れる。

(4) ガスバリヤー性はPET樹脂の約5~7倍を有しており、内容物の品質保証期間
  の延長が図れる。さらには、ビール容器への適用も可能となる。

(5) 高強度・高耐熱性を有していることから、タイヤコードや電子部品・電機絶縁材
  への適用が可能である。
 神鋼とモービル社の共同研究開発が対象とする範囲は、2,6-DMNの製造技術に関
するものですが、下流側の酸化・エステル化技術(2,6-NDCの製造)及び重合技術
(PEN樹脂製造技術)は既に確立されており、今回の2,6-DMN製造に関する技術
の共同開発及び商業化によって2,6-DMNが低コストで生産可能となり、PEN樹脂
の需要は急激に拡大するものと考えられます。

<ご参考>
(モービル社の概要)
(1) 社 名:MOBIL CORPORATION
(2) 本 社:米国バージニア州フェアファックス市
(3) 会長兼社長:LUCIO A.NOTO(ルチオ A ノート)
(4) 従業員:約50,000名
(5) 売上高:約753億7千万ドル(1995年)
(6) 事業内容:石油・ガス・石油化学事業


                                   以 上




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