世界最高磁場のNMR装置(1020MHz)が「超伝導科学技術賞」を受賞

2016年4月21日

株式会社神戸製鋼所

当社、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、国立研究開発法人理化学研究所(理研)、(株)JEOL RESONANCE(日本電子(株)の子会社)の4社は、2015年7月に開発完了済みの「世界最高磁場のNMR装置※1(1020MHz)」が(一社)未踏科学技術協会超伝導科学技術研究会主催の「第20回超伝導科学技術賞」を受賞しました。本日、第42回超伝導科学技術シンポジウム(開催場所:タワーホール船堀)にて授賞式が執り行われました。

賞の概要

超伝導は境界領域の学問であるがゆえに既存の大きな学協会組織を持たず、学会賞・協会賞に相当するものが存在していませんでした。こうした状況に鑑み、本賞は超伝導分野で日々たゆまぬ努力を続けている研究者の方々を励まし、その一層の発展の一助となることを目的として平成8年に創設されたものです。

受賞製品・技術の背景、概要

NMR装置は、発生させる磁場が強磁場である程より速く正確な分析が可能となります。従来の最高磁場は2009年開発のドイツ製1000MHzでした。使用された中心部品であるNMR磁石※2は、ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)などの金属系超電導体で作った線材を多層コイル構造に巻いて作られていました。しかし、これらの金属系超電導体では理論上1000MHzの磁場の発生が限界とされており、これを越えるには金属系超電導体に代えて、セラミックス系の高温超電導体を用いる事が唯一の解決策である事が1980年代より分かっており、既に電導体が発見されていましたが、セラミック系は割れやすい、線材の継ぎ目の接続技術が無いなど様々な技術的な課題からNMR磁石への応用はこれまで実現していませんでした。
その様な中、当研究チームは下記3点の新たな技術開発により、セラミックス系高温超電導体を用いたNMR磁石の開発に成功し、世界最高磁場となる1020MHzを達成しました。

今回、世界で初めてセラミックス系超高温超電導線材の使用に成功し1000MHzを突破した事で、今後、研究が進むと1200MHz、更には1500MHz達成も不可能では無いと言われています。その様な事から、今回の1020MHz達成は更なる高磁場への扉を開け、新たなステージに進んだと考えられます。

今回の開発により、今後応用が期待される分野としては、主に以下が挙げられます。

当研究チームは、NMR装置の高磁場化による更なる分析能力の向上を目指し、今後も研究開発を進めて参ります。

※1:NMR装置(nuclear magnetic resonance)
物質へ磁場をかけ、発生した原子核の磁気的エネルギーを精密に測定する事により、分子構造を調べる事が可能な装置です。磁場が高い程感度が高くなり、従来は困難であった複雑な構造の解析することが可能です。具体的な使用例は、人体内部の疾患や組織の状態を解析する為に使用されるMRIや水素の比率の差異を分析する事が可能なため、食品の産地証明や化学薬品の中にある分子の特定・分析等があります。

※2:NMR磁石
NMR装置における中心部分です。超電導線を多層巻きにしたコイルに電流を通し、中心位置に強磁場を発生させるための装置です。他の磁石と比較し、磁場の安定度と均一度に優れます。

電子技術研究所超電導研究室長 斉藤一功

NMR装置外観

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