2020年 年頭の辞(要旨)

2020年1月6日

株式会社神戸製鋼所
代表取締役社長 山口 貢

新年あけましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶を申し上げます。

2019年の振り返り

昨年は春に令和が幕開けし、秋にはラグビーワールドカップが日本で開催され、大いに盛り上がりました。一方、大型台風や豪雨など、連続して大きな自然災害が発生し、各地で甚大な被害が発生した一年でした。被災された方々・企業・地域の一日も早い復旧・復興を心から願っています。当社グループは、品質不適切行為の再発防止策の実行と信頼回復に向けて引き続き全社を挙げて取り組んだ一年でした。訴訟に関しては、国内では不正競争防止法違反について有罪が確定しました。北米では、米国司法省の調査が終了し、その他の集団訴訟も概ね収束に向かっています。

一方、当社グループを取り巻く経済環境は大変厳しいものとなりました。2017年以降、個人消費の持ち直しや、積極的な設備投資を受けて緩やかな回復基調が続いていましたが、米中貿易摩擦・日韓関係の悪化などにより、昨年半ば以降、半導体をはじめ自動車や造船産業などの需要の停滞が顕著になりました。このような経済環境の下、当社グループの2019年度の業績は大変厳しいものとなっています。事業別には、鉄鋼事業は「自動車や造船分野などの需要低迷」や、「原料コストなど変動費の上昇」により利益水準が下がっています。アルミ・銅事業でも「半導体需要の回復遅れ」や「自動車用端子向け需要の低迷」に加え、「サスペンション事業の海外拠点における生産不調」や「新規設備の立ち上げ遅れ」などにより、収益力が大幅に低下しています。また、ここ数年グループの業績を牽引していた建設機械事業でも「対ユーロ・対人民元の円高影響」や、「中国・東南アジアでの競争激化」などにより採算レベルが下がっています。これらの結果、機械、エンジニアリング、溶接、電力などの事業が頑張っているものの、当初見通しに比べて大幅な減収減益となっています。先行きの不透明感が増している今、素材系事業における収益力の回復が2020年における最大かつ喫緊の課題です。

2020年について

2020年度は「KOBELCO VISION G+」の最終年度です。当社グループは2016年以降、鋼材の上工程集約、中国における建設機械事業の再構築、自動車軽量化に資する戦略投資、電力事業における新規プロジェクトなどを進めました。しかし、「原材料価格やエネルギー価格の上昇」「設備トラブルの発生」「品質不適切行為の発覚」など、当社グループを取り巻く環境に大きな変化もあり、新たな課題に対応するため中期経営計画の残り2年間とその先に向けた重点課題及び対策を、昨年5月に「中期経営計画ローリング」としてまとめました。まずは「ソリューション提案を含む高付加価値商品の販売強化」を図り、併せて「各事業所における生産トラブルの防止と生産性の向上」により、大きな課題である“ものづくり力の強化”を図ります。また、「海外を含む戦略投資案件の早期収益化」に加え、「真岡発電所1、2号機の確実な立ち上げと安定稼働」により、収益基盤を盤石にします。加えて、経営資源の効率化と経営基盤強化の一環として、グループ会社再編を含むグループガバナンスの強化にも引き続き取り組みます。その一つが4月に実施予定の素材系事業の組織再編です。これにより、自動車軽量化戦略・ソリューション提案力を強化し、要素技術と品質管理に横串を通し、調達・システム・物流などの共通機能を共有し、管理機能の強化・効率化を図ります。次期中期計画に向けてこれらの課題をやりきるためにも、企業の存立基盤である「安全」「品質」「環境」「コンプライアンスの遵守」「働き方改革」「ダイバーシティの推進」について、継続して取り組みます。「安全衛生ガイドラインの運用」「気づきカメラの活用」「品質キャラバン隊の活動」「eラーニングを含む各種研修」や「QCサークル大会」など各担当部署がリーダーとなり、夫々の事業所が鋭意努力をした成果が出てきています。今年も各事業所・各部署において、安全・品質・環境をはじめとする企業存立基盤の底上げを図り、「仕事の質」を高め、「企業の質」を高める努力を継続して下さい。

当社グループは、1905年の創立から110年を超える歴史の中で、独自の事業領域を作り上げてきました。特に、素材系事業や機械系事業は事業の裾野が非常に広く、これらの事業分野を構成する個別事業の多様性を前提としてはじめて創出されるシナジーが存在します。また、これらの事業は、研究開発や生産現場で果敢な挑戦を続ける従業員の皆さんをはじめ、長年に亘り信頼関係を培ってきた国内外の協力会社や取引先様など、様々なステークホルダーの皆様によって支えられています。更に、当社グループは素材系事業における「代替困難な素材や部材」、機械系事業における「省エネルギーや環境に配慮した製品」など、多彩な製品群を幅広くお客様に提供しています。電力事業においても「極めて重要な社会インフラである電力の供給」という、公共性の高いサービスを提供しており、社会的に大きな責任を担っています。こうした「事業間における技術の融合」や、「高付加価値製品の提供」と「これにより構築されたステークホルダーの皆様との信頼関係」、そして「社会インフラ提供の責務と社会からの信頼」こそが企業価値の源泉です。事業環境における課題の多い今だからこそ、素材系・機械系・電力の3本柱による事業成長戦略を一層深化させ、中長期的に伸張する成長分野に経営資源を集中し、グループ独自の付加価値を高めていくことで、事業を拡大・発展させるとともに、社会への貢献を目指していきます。

結び

私をはじめ経営陣は、信頼回復と業績改善に向け、Next100プロジェクトを軸にしてあらゆる工夫と努力を重ねていきます。社長就任以来続けている事業所対話も継続します。皆さんも、部署内はもちろん、部署の垣根を超えてコミュニケーションを活性化させ、アイデアや悩みを共有し、明るく風通しの良い、誇りや愛着を持てる会社を目指して下さい。最後になりますが、東京オリンピック・パラリンピックが成功し、地震・豪雨などの災害が少なく、世の中が活気に溢れた明るい2020年となり、そして当社グループの従業員とその家族、また、当社グループに関係する多くの方々にとって素晴らしい一年となることを祈念しまして、私の年頭のご挨拶とさせて頂きます。

(注記)プレスリリースの内容は発表時のものです。販売がすでに終了している商品や、組織の変更など、最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。

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