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プレスリリース

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世界初アルミ微細多孔箔を用いた屋外防音壁の開発と、本格販売の開始について

〜 孔を通過する際の摩擦により、音エネルギーを熱エネルギーに高効率に変換して吸音 〜

2007年3月27日

株式会社神戸製鋼所

当社は、小さな孔を無数に開けたアルミ箔を用いた吸音構造による屋外用防音壁を、神鋼建材工業(株)(本社 兵庫県尼崎市、代表稲葉嘉昭社長)と共同で、世界で初めて開発しました。既に、アルミ微細多孔箔による吸音構造とそのしくみに関しては2000年に当社単独で、またこのしくみを使った吸音構造物に関しては2006年に同社と共同で特許の出願を行っています。
当社グループの建材製品を製造・販売している同社が、現在試作品の製造を開始しており、2007年度上期中に本格的な製造・販売を開始する予定です。道路や鉄道の沿線、あるいは工場の外周などに設置することで、従来から多く使用されている繊維系材料(グラスウールなど)を用いた屋外防音壁を上回る効果が得られます(当社実験データによる)。2011年度に10億円程度の売上を目指します。

一般的に屋外防音壁は、騒音が直進的に拡散するのを壁により阻止する「遮音部分」と、その内壁側に設けられ、直進する騒音の吸収や、壁または車体に反射された音が拡散するのを防止する「吸音部分」から構成されています。[図1ご参照]このほど開発した屋外防音壁は、「遮音部分」にアルミ板や鋼板を用いることは従来と変わりませんが、「吸音部分」に従来から多く使用されている繊維系吸音材料の替わりに、小さな孔を無数に開けたアルミ箔を用いています。薄いアルミ箔に、箔の厚み程度の直径の孔を無数に開け,そのアルミ箔と遮音用のアルミ板との間に適度の空気層を確保した構造としています。[図2ご参照]

原理としては、音の圧力により振動する空気が微細な孔を通過する際の摩擦と生じる渦により、騒音の音エネルギーを熱エネルギーに変換させることで高効率な吸音を実現しています。また繊維系吸音材料を使用した場合と同等、あるいはそれ以下の厚みの適度な空気層を確保することで、孔を通過して入ってきた音を空気層内で共鳴させ、「音の入り込み易さ」と「空気の振動速度」の両方を増幅させています(気圧の違いによる吸い込みのイメージ)。更に開口率をより小さくすることによる通過速度アップ効果により、より大きな摩擦や渦を発生させ、吸音効率を上げています。[図3ご参照]

新製品は従来から使用されている繊維系の屋外防音壁に比べ、
(1) 高周波(500Hz以上)域での吸音率低下がなく,高い吸音性能を発揮。[図4ご参照]
(2) 吸音性能の向上により、防音壁の高さを低くしても、同等の防音効果の達成が可能。[図5ご参照]
(3) 水分を含み易い繊維系に対して、その懸念がなく耐久性が高い。
(4) リサイクル性に優れる。
(5) 繊維のような飛散防止材の経年変化やフィルム破損による飛散がない。
  などの点で、優位性があると考えています。(当社実験データによる)

当社は1960年代から様々な分野における静音化の研究を行ってきました。現在では、発生する音の諸条件をデータ入力すれば、その音の伝わり方や各種防音壁による効果などを、ほぼ実測値と近いレベルでシミュレーションすることが出来ます。既に、当社の空気圧縮機械や建設機械の静音化、および新幹線車両の車内静粛化などに当社の技術が採用されています。
当社グループの強みや特長を最大限発揮する「オンリーワン製品」の1つとして、今後採用の拡大に注力して参ります。