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商業機第一号プロジェクトの開始について

〜次世代製鉄法 ITmk3(アイティ・マークスリー)〜

2007年11月21日

株式会社神戸製鋼所

当社と、米国電気炉メーカー スチール・ダイナミックス社(以下、SDI社)は、当社が開発した次世代製鉄法(以下、ITmk3)による年産50万トンの粒鉄(アイアン・ナゲット)製造プラントを建設し稼動させることに合意しました。建設地は米国・ミネソタ州Hoyt Lakes(ホイット・レイクス)で、2009年中頃に操業を開始する予定です。
ITmk3は、従来の高炉法とは全く異なるプロセスで、高品位のアイアン・ナゲットを短時間で製造することができる画期的な次世代製鉄法です。当社は2004年7月にこの技術を確立し、SDI社と共に商業機第一号の建設に向けた検討を進めてきましたが、現地時間11月20日13時30分に、米国インディアナ州SDI社本社で、合弁事業にかかわる契約書に調印しました。

本プロジェクトは、当社とSDI社が合弁でMesabi Nugget Delaware,LLC(以下、MND社)を設立し、ITmk3プロセスのプラント操業と管理、アイアン・ナゲットの販売を実施するものです。当社は20百万ドル、SDI社は85百万ドルの出資をMND社に対して実施し、プロジェクトの総工費は235百万ドル(約260億円)を予定しております。
当社は、本プロジェクトに対し、ITmk3プロセスのライセンスを供与し、エンジニアリングと主要な機器の供給、指導員の派遣等を行ないます。また、プラントの操業を通じて、設備及び操業技術のさらなる蓄積を行なうことを目指しています。
一方SDI社は、同プラントで生産されるアイアン・ナゲットの全量を引き取り、自社の電炉工場で鉄源として使用します。また、 SDI社は、プラント建設予定地近隣の休眠鉱山を買い取り、新たに選鉱設備等を稼動させることにより、本プラントに鉄鉱石を供給する予定です。

《ITmk3プロセスの概要と特長》
1.ITmk3の製造プロセス
  (1)粉鉱石、一般炭を造粒機で粒状に固める
  (2)回転炉床炉に投入し加熱、約10分で還元・溶融・スラグ分離を行なう
  (3)高品位のアイアン・ナゲット(5〜25mm)を生産
2.ITmk3の利点
  (1)CO2排出量を約20%削減(高炉+転炉法とITmk3+電炉法の比較)
  (2)原料事前処理設備(コークス炉、焼結炉、ペレットプラント)が不要
  (3)鉄鉱石の山元での立地メリット大
3.ITmk3で製造されるアイアン・ナゲットの特長
  (1)高炉銑鉄並みの高品質(金属鉄:96〜97%、スラグフリー)
  (2)電気炉での生産性の向上(優れた溶融性、連続投入が可能)
  (3)輸送/ハンドリングが容易(高密度=再酸化なし、粉化なし)

当社は、ITmk3の商業機第一号プロジェクトが開始されることで、同プロセスが次世代の新製鉄法として広く認知され、その評価が世界的に高まることを期待しております。さらに、米国クリーブランド・クリフス社(CCI社)と検討を進めている米国ミシガン州での合弁プロジェクトについても早期実現を図り、同時に、既に引合いを受けている他の案件についても積極的に展開を図っていく所存です。

世界各国の鉄鋼需要の高まりに対応して、世界の粗鋼生産量は年率6千万トン〜1億トンペースで増加しており、2006年には12億4千万トンに達しています。また、需要は今後も中長期的視野で増加し続けていくものと予想されており、冷鉄源(高炉で生産される溶銑以外の鉄源)への期待も一層高まってきています。この新規需要に対応する最も効率的なプロセスの一つとしてITmk3が挙げられると考えております。

ITmk3プロセスは、CO2排出量と設備投資額を低く抑えられることから、特に新興国での環境に配慮した鉄鋼産業の育成に効果を発揮するものと考えられます。また、高炉製鉄法で使用することが難しかった、比較的低品位の鉄鉱石や石炭を活用できることから、鉄鋼メーカーにとって相対的に原料コストを低く抑えることが出来るという利点があります。そして、それらのメリットを享受しつつ、高炉法で製造された銑鉄に匹敵する高品位のアイアン・ナゲットを生産できることにITmk3プロセスの真価があるといえます。
一方、鉱山会社にとっては、ITmk3プロセスを自社鉱山に建設しアイアン・ナゲットを生産することによって、資源に付加価値を付けることができるというメリットがあります。これにより、従来、高炉メーカーに限定されていた市場(需要家)を電炉メーカーにまで拡大することが可能となります。

現在、世界の鉄鋼業界は、地球規模での環境問題への対応に加え、急激な鉄鋼生産の増大に伴う原料需給の逼迫とコスト上昇に直面しています。このような困難な状況の中でこそ、ITmk3プロセスはさまざまな解決策を提示出来ると考えております。当社は鉄鋼業界の一員として、また、還元鉄の世界シェア60%を占めるMIDREX社を子会社に抱える、直接還元鉄製造プロセスのリーディングカンパニーとして、時代の要請に合致した革新的な製鉄技術を世に送り出し、企業価値の向上と社会への貢献を実現したいと考えています。


【ご参考】
Steel Dynamics社の概要
社名   Steel Dynamics, Inc. (スティール・ダイナミックス社)
代表者   Keith Busse(キース・バッシ会長兼CEO)
設立   1993年
本社   米国 インディアナ州 フォート・ウェイン市(州の東北部)
社員数   約3,490名(2006年12月末)
売上   32億ドル(約3,700億円)(2006年12月末)
事業活動   電気炉鉄鋼メーカー(電炉 5基)
粗鋼生産能力   520万トン
2009年には670万トンに増強の予定

Mesabi Nugget Delaware 社の概要
社名   Mesabi Nugget Delaware, LLC (メサビナゲット・デラウェア社)
設立   2006年6月
本社   米国 インディアナ州 フォート・ウェイン市(州の東北部)
事業活動   アイアン・ナゲット製造プラントの操業・管理とアイアン・ナゲットの販売
ナゲット生産能力   50万トン