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世界で唯一、常温で超塑性を発現する「亜鉛-アルミ合金」の制振ダンパーへの採用について

プレスリリース

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【大地震や風などによる振動に備える】
世界で唯一、常温で超塑性を発現する「亜鉛-アルミ合金」の制振ダンパーへの採用について

~(株)竹中工務店 設計・施工、九州最高層集合住宅で使用~

2008年8月28日

株式会社神戸製鋼所

当社が開発した「亜鉛−アルミ合金」を用いて、(株)竹中工務店が開発した「超塑性合金制振ダンパー」が、同社の設計・施工で、この8月に竣工した九州最高層の地上42階建て3棟連結超高層集合住宅「アイランドタワースカイクラブ(福岡県福岡市)」に採用されました。金属でありながら常温下で飴のように著しい伸びを示す(超塑性)同合金のエネルギー吸収特性を活かし、竹中工務店に制振ダンパーとして採用頂いたものです。現在一般的に制振ダンパーとして使用されている鋼製ダンパーに比べて、メンテナンスフリーであること、また、免震ダンパーに使用される鉛に比べて環境負荷が小さいことが特徴です。
尚、同合金は、01年に同じく竹中工務店に制震ダンパー用材料として採用頂いており、採用事例としては2例目となります。1例目では、地震の揺れ対策を目的としたダンパーでしたが、近年超高層マンションなどの居住性や安全性が求められる中、地震だけではなく風揺れにも効果を発揮できるブレースタイプ制振ダンパー向けに、今回同合金が採用されました。当社は、この特徴ある素材特性を活かし、このたびの高層ビル以外の建物や、各種エネルギー吸収材料などとしての採用の拡大を期待しています。

当社は、阪神・淡路大震災に伴う被害への対応として、地震エネルギー吸収材料の必要性から、「亜鉛−アルミ合金」の開発に着手しました。亜鉛78%とアルミ22%の合金です。元々比較的微細な結晶粒で構成される同合金に、鉄鋼材料の高強度化・高性能化で培った加工熱処理技術(TMCP技術)を用いて、狭い温度範囲の中で繰り返し圧延することで、合金の結晶粒の寸法を更に微細なナノメートル(nm=10億分の1m)単位で制御すること(ナノ結晶化)に成功しました。これにより、常温下で飴のように伸びる超塑性を発現させ、制振部材として必要な特性を得ることが出来るようになり、更に当社グループ会社である神鋼メタルプロダクツ(株)(本社:福岡県北九州市、代表取締役社長 尾崎幸一)にて工業的な生産プロセスを確立し、同社にて製造・販売を行うこととしました。尚、同合金の超塑性現象に関しては、大阪府立大学工学研究科の東健司教授に、学術的検証など御指導いただきました。
同合金を用いた制振ダンパーは、変形性能に優れ、地震などにより繰り返し大きな変形を受けても、ひずみ劣化や加工硬化が極めて少ない特性を有していることから、設計当初の性能をほぼ完全維持出来、メンテナンスフリーでそのまま継続して使用出来ます。

当社は、鉄・チタン・アルミ・銅などといった金属材料に関する技術蓄積をベースに、様々なニーズに対応する合金の開発を行っています。このたびの「亜鉛−アルミ合金」につきましても、特徴ある素材特性を活かし、各種エネルギー吸収材料などとしての採用の拡大を期待しています。
亜鉛−アルミ合金 特性
  成分 機械的性質
降伏強度 引張強度 伸び
亜鉛-アルミ合金 亜鉛78%
アルミ22%
100〜240MPa 140〜320MPa 50〜300%
極軟鉄   80〜250 MPa 200〜400 MPa 〜50%
引張特性:伸び
従来金属(軟鉄)
従来金属(軟鉄)
亜鉛−アルミ合金
亜鉛−アルミ合金
結晶粒微細化イメージ図
結晶粒微細化イメージ図