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プレスリリース

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H-IIBロケットと日本初の無人宇宙輸送機に神戸製鋼のチタン合金が採用

2009年9月28日

株式会社神戸製鋼所

国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)へ補給物資を運ぶ日本初の無人宇宙輸送機「HTV」(H-II Transfer Vehicle)を載せた国産ロケットH-IIB 1号機が9月11日に打ち上げに成功し、「HTV」が9月18日にISSへのドッキングに成功しました。今回打ち上げられたH-IIBロケットと「HTV」に神戸製鋼のチタン合金製品が採用されています。今回採用されたチタン合金は数種類あり、いずれも強度と延性のバランスに優れ、一部は極低温の環境においても強靭さを維持する特殊なチタン合金です。

当社の製品は、H-IIBロケットでは極低温ヘリウムタンク、その第一段エンジンのLE-7A及び第二段エンジンのLE-5Bのターボポンプ部品・姿勢制御部品、搭載されたHTVの推進薬タンクに使用されています。

<当社製品の適用部位>
機器名称 適用部位 納入先 納入製品
H-IIBロケット 極低温ヘリウムタンク 三菱重工業殿 チタン合金鍛造品
LE-7Aエンジン 姿勢制御装置 三菱重工業殿
液体ターボポンプ IHI殿
LE-5Bエンジン 液体ターボポンプ IHI殿
HTV 推進薬タンク IHIエアロスペース殿


今回ISSへのドッキングに成功したHTVは、日本で初めて打ち上げられた無人の宇宙輸送機で、ISSへ生活物資や実験器具を運搬します。国産ロケットによる国産輸送機の成功により、日本の宇宙開発は大きな一歩を踏み出したことになります。来年退役予定の米スペースシャトルに代わるISSへの輸送手段として、国際的にも大きな役割を担うことになり、2015年まで年1機ずつ、計7機を打ち上げる計画となっています。また、将来的には有人宇宙船への発展も期待されます。

当社のチタン製品は、日本の宇宙開発と共に歩んで参りました。当社は国内で初めて1949年に研究開発に着手した日本におけるチタン製造のパイオニアであり、トップメーカーです。1982年にH-Iロケット部品の納入を開始し、その後着実に実績を重ね、高い品質と信頼性が評価されております。

宇宙での過酷な使用環境に耐えるには、厳しい品質管理が要求されます。当社は航空宇宙産業の品質マネジメントシステムであるJIS Q 9100の認証を取得しており、万全の品質管理体制のもと、製造を行っております。

チタン合金鍛造製品に関しては、国内唯一のインゴット溶解から製品まで手掛ける総合一貫メーカーとして、高い製造技術を誇り、中でも高い品質が要求される航空機用途においては、国内外の機体メーカー、エンジンメーカーから多数のサプライヤー認定を受けています。

神戸製鋼は、今後も高品質の製品を世界の空に、宇宙に提供して参ります。

【納入先会社概要・・・各社ホームページより】

社名: 株式会社IHI
本社: 東京都江東区豊洲3-1-1 豊洲IHIビル
資本金: 957億円
従業員数: 7,670名(単体)
事業内容: 航空/宇宙エンジン機器、船舶、陸上機器・プラントの製造及び販売など

社名: 株式会社IHIエアロスペース
本社: 東京都江東区豊洲3-1-1 豊洲IHIビル
資本金: 50億円
従業員数: 約1,000名
事業内容: 宇宙機器、防衛機器等の設計、製造及び販売など

社名: 三菱重工業株式会社
本社: 東京都港区港南2-16-5
資本金: 2,656億円
従業員数: 33,614人
事業内容: 船舶、発電プラント、環境装置、産業用機械、航空宇宙機器、エアコンなどの製造・販売


【H-IIBロケット概要…JAXAホームページより抜粋】

H-IIAロケットの打ち上げ能力を高め、国際宇宙(ISS)ステーションや月面への物資輸送など、将来のミッションへの可能性を開く新しいロケットがH-IIBロケットです。H-IIBロケットの主要な目的は二つあります。一つは、ISSに宇宙飛行士の生活に必要な物資、ISS内の定期交換機器、実験装置・実験用サンプルなどの研究用資材を運ぶ、HTVを打ち上げることです。もう一つの目的は、H-IIAロケットとH-IIBロケットを併せて運用することにより幅広い打ち上げニーズに対応することです。また、高い打ち上げ能力を活かして複数の衛星を同時に打ち上げることでコストの削減を図り、わが国の宇宙産業の活性化に貢献します。

<H-IIBロケット諸元>
全長 56.6m
最大外径 5.2m
質量(人工衛星除く) 531トン
最大打ち上げ能力
(宇宙ステーション軌道)
約16.5トン
(高度350Km~460Km)


【HTVプロジェクト概要 … JAXAホームページより抜粋】

HTVは、H-IIBロケットで打ち上げられる無人の軌道間輸送機で、食料や衣類、各種実験装置など最大6トンの補給物資を地上約400キロメートル上空の国際宇宙ステーションに送り届け、補給が済むと用途を終えた実験機器や使用後の衣料などを積み込み、大気圏に再突入して燃やします。一連の補給作業には、国際宇宙ステーションとのランデブーやドッキングも行われるため、優れた安全技術が要求されますが、日本は技術試験衛星VII型(おりひめ・ひこぼし)で培った技術を基に、H-II/H-IIAロケットの開発で得られた機体設計技術なども適用し、低コストで信頼性の高い輸送手段としての実用化を目指しています。また、HTVの運用を通じて、将来のフリーフライヤーや有人輸送の基盤となる技術の蓄積が可能となります。

HTVは直径約4メートル全長10メートル弱、観光バスが納まる大きさです。機体は大別して3つの部分から成り立っています。最後部には軌道変換用のメインエンジン、姿勢制御用のRCSスラスタとそれらに推進薬を供給する燃料/酸化剤タンク、高圧気蓄器等が搭載される「推進モジュール」。中程には、誘導制御系・電力供給系・通信データ処理系の各電子機器が搭載される「電気モジュール」。そして先頭には、補給物資を格納する「補給キャリア」という構成です。

<HTV主要諸元>
全長 10.0m
最大外径 4.4m
質量(補給品除く) 10.5トン
搭載補給品質量 約6トン
輸送目標軌道
(宇宙ステーション軌道)
高度350Km~460Km


H-IIBロケット拡大図