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北米における自動車用鋼板事業の新プロジェクトについて

2010年12月2日

株式会社神戸製鋼所

(株)神戸製鋼所(以下神戸製鋼)はこのほど、北米における自動車用冷延ハイテン(*1)の需要増に対応するため、米国United States Steel Corporation(以下USS社)との合弁拠点「プロテックコーティング社(PRO-TEC Coating Company)」(オハイオ州リープシック市、以下プロテック社)に、自動車用冷延ハイテンの連続焼鈍設備(CAL:Continuous Annealing Line)(*2)を建設することでUSS社と最終合意に達しました。

年内にも正式契約に調印し、2011年初頭には建設着工する予定です。尚、新設備の営業運転開始は、2013年初頭を目指しています。

<新プロジェクトの概要>

総投資額 : 約4億米ドル
生産能力 : 年間約50万ショートトン(*3)
稼動 : 2013年初頭
主要製品 : 自動車用冷延ハイテン(引張強度590MPa以上)
原板供給 : USSの各製鉄所

近年、日本・米国・欧州において衝突安全規制の厳格化に対応した車体構造の強化が求められていることに加えて、車体の軽量化を通じた燃費向上や排出ガス低減も同時に実現する必要があることから(*4)、自動車メーカー各社では、ハイテンの採用を車体構造全体に拡大する傾向が強まっています。

このような中、神戸製鋼とUSS社は北米マーケットにおいて、両社イコールパートナーシップの現地拠点であるプロテック社から最新型の自動車用溶融亜鉛めっきハイテンを自動車メーカー各社に供給し、車体下部(プラットフォーム部分)を中心とした車体軽量化に貢献してきました。

プロテック社は、自動車用ハイテンや自動車用外板を中心に溶融亜鉛めっき鋼板を年間100万ショートトン生産する、世界最大級の自動車用高級鋼板供給拠点です。現在、日系自動車メーカーおよび米国デトロイト3向けを中心に製品を納入しており、需要家から製品の品質および供給体制の両面で北米NO.1との高い評価を得ています。

一方、ここ数年、車体構造全体をさらに強化するためには、車体上部(アッパーボディー部分)に自動車用冷延ハイテンの採用を拡大したい、とのニーズが日系自動車メーカーを中心に強まってきましたが、現在は、北米で当該製品を供給出来るメーカーが限定されていることから、プロテック社でも同品種の供給体制構築が大きな課題となっていました。

今回の新プロジェクトは、このようなニーズに対応して、神戸製鋼が日本国内でこれまで培ってきた自動車用冷延ハイテンに関する様々なノウハウを北米に展開し、プロテック社を通じて日本国内と同等の品質・機能を有する製品の現地生産化を実現するものです。これによりプロテック社では、現在の自動車用溶融亜鉛めっきハイテンに加えて自動車用冷延ハイテンについても供給体制が整うこととなり、日本・北米・欧州における神戸製鋼の“ハイテングローバル供給ネットワーク”がさらに強化されることになります。

設備面では、当社の自動車用冷延ハイテンの技術優位性の原動力となっているウォータークエンチ(WQ,水焼入れ)装置に加え、超高速ガスジェット(GJ)冷却装置も併設した最新鋭の連続焼鈍設備を導入します。この設備は、現在自動車分野で採用されている多様な冷延ハイテンが製造出来るだけでなく、加工性を飛躍的に向上させた次世代製品についても対応可能な仕様となっており、引張強度590MPa以上のハイテンを中心に製造していきます。

(ご参考)

<USS社の概要>

会社名 : United States Steel Corporation
会長兼CEO : ジョン P. サーマ(John P. Surma)
本社所在地 : ペンシルバニア州ピッツバーグ市
粗鋼生産能力 : 約3,170万ショートトン(2009年12月時点)
設立 : 1901年
従業員数 : 42,984人(2009年12月時点)
主要拠点 : ゲーリー製鉄所、グレートレイクス製鉄所、グラナイトシティ製鉄所、モンバレー製鉄所、USS Kosice (Slovakia)、USS Serbia (Serbia)、USS Canada (旧ステルコ)

<プロテック社の概要>

会社名 : PRO-TEC Coating Company
社長 : ブライアン・P・ヴォーン (Bryan P. Vaughn)
所在地 : オハイオ州リープシック市
資本比率 : 神戸製鋼50%、USS社50%
生産能力 : 100万ショートトン/年
設立 : 1990年3月
従業員数 : 約230名
主要製品 : 溶融亜鉛めっき鋼板(純亜鉛)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(自動車用外板、自動車用ハイテン等)
生産開始 : 1993年5月 (第1溶融亜鉛めっきライン)
1998年11月(第2溶融亜鉛めっきライン)
主要顧客 : 日系自動車メーカー・米国デトロイト3など北米に存在する完成車メーカー

(語句説明)

(*1)自動車用冷延ハイテン

「冷延ハイテン」とは、TS≧340MPaの冷延鋼板の総称。その中で、TS≧780Mpaの製品を特に「冷延超ハイテン」と呼んでいる。
一方、「複合組織(Dual Phase)鋼」や「TRIP鋼」など、鋼材内部の組織を制御することで、特に加工性に優れた機能を持つハイテンを、強度クラスとは別に、Advanced High Strength Steel (AHSS)と呼称している。
なお、今回新設するCAL設備にて生産する主な製品は、AHSSを含むTS≧590MPaの「自動車用冷延ハイテン」の予定。(TS=引張強度)

(*2)連続焼鈍設備(CAL:Continuous Annealing Line)

冷間圧延後の鋼板を連続的に焼鈍することで、優れた加工性を付与した冷延鋼板を造り込む設備。1970年代より設置が始められたが、当初は従来のバッチ型焼鈍と比較して処理時間が短いことから、生産性向上を主な目的に導入が進められた。
1980年代後半より神戸製鋼は、CALに設置したWQ装置を活用した組織強化型ハイテンの開発に注力してきた。この組織強化型ハイテンは、それまで主流であった合金元素を使用した析出強化型ハイテンと比較し、加工性・溶接性・引張強度などで大きく優位に立つものであり、今日の超ハイテン製品の根幹を為すものである。
組織強化型ハイテンは、WQ法・高速GJ法などの技術を駆使して造り込むが、今回北米に建設するCALは、この双方を備えた最新鋭設備であり、ここに当社の持つ最新のノウハウを投入することによって、現在、市場に存在する多様な自動車用冷延ハイテンのみならず、加工性を飛躍的に向上させた次世代製品までも製造可能とするものである。

(*3)ショートトン

1ショートトン=0.9メトリックトン

(*4)車体構造強化と車体軽量化を同時に実現させる必要性

米国においては、2003年にSUVとの側面衝突を想定した安全規制が強化され、今後さらに前面衝突に関する規制の強化が検討されている。欧州においても、新しい側面・前面衝突に関する規制強化が検討されており、欧米ともにそれらの規制に対応するため、車体構造のさらなる強化が必要になっている。
一方で、燃費・CO2排出量規制も年々厳格化されており、例えば、EU域内で販売する新車から排出されるCO2排出量については、2015年までに現状比約▲20%の水準までの削減を義務付けるとの法案が欧州議会において採択されている。また今後とも、日本・欧州・米国の各地域で燃費規制のさらなる強化が予想される。
多くの自動車メーカーは、このような衝突安全規制の厳格化による車体構造強化と燃費向上・CO2排出量削減のための車体軽量化という相反する要求を満足するため、ボディ骨格部品やシート骨格部品を中心にハイテンの適用を拡大しつつある。

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