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プレスリリース
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燃料電池用チタン製セパレータ素材の開発
~チタン箔にカーボン系材料を表面コーティングすることで、長期耐久性と高導電性の両立を実現~
2012年5月23日
株式会社神戸製鋼所
当社は、カーボン系材料を表面コーティングした、燃料電池用チタン製セパレータ素材を開発しました。元来、耐食性に優れ、且つ軽く強度の高いチタン箔の表面に、安価なカーボン系材料をコーティングすることで、高い導電性を付加しました。従来使用されている金属系セパレータ素材のステンレスと比較すると、約1/2の接触抵抗注1)を実現し、燃料電池の水素イオン伝導膜注2)を劣化させると言われている鉄イオンの溶出もないことから、燃料電池の長寿命化が期待されます。加えて、燃料電池自体の小型化や軽量化にも寄与します。(ご参考資料、重量比較をご参照下さい。)
燃料電池とは、水素と酸素の化学反応により水を生成する過程で電気を作り出す装置で、大量の電気を発生させるために、水素と酸素を反応させるセルと呼ばれるユニットを何層も積み重ねて形作られています。各セルを流れるガス(水素または酸素)の混合を遮断し、セルで発電した電気を集めて流すために、セルの間に挟み込まれるのがセパレータと呼ばれる板状の部品で、主にカーボン系素材と金属系素材が使用されています。近年では、ガス遮断性やコスト、軽量化の観点から、表面処理を施したステンレスなどの金属製が注目されています。
セパレータには、ガス遮断性や、発生した電気を効率良く流すための高導電性に加えて、ガスを流すための流路溝を形成するための成形性や、燃料電池を小型・軽量にするための薄型・軽量化が求められています。
従来のステンレスやチタンを使用したセパレータは、元来の特性として、ガス遮断性、耐食性、成型性や高強度性を有する反面、腐食の進行を防ぐために自ら形成する酸化保護皮膜(絶縁膜)が、導電性を阻害していました。
このたび開発したチタン製セパレータは、高耐食のチタン表面に安価なカーボン系材料をコーティングすることで、3~4mΩ・cm2(ミリオーム・平方センチメートル)と低い接触抵抗を実現し、長期耐久性と高導電性を両立することに成功しました。また、軽く高強度のチタンを使用することで、燃料電池の小型・軽量化にも寄与します。
将来的には、自動車や家庭向けに燃料電池の普及が期待されていることから、早期の実用化を目指します。
尚、当社は、5月23~25日に、パシフィコ横浜・展示ホールで開催される「人とくるまのテクノロジー展」にて、当該内容に関してパネル展示を行っています。
【語句説明】
注1)接触抵抗:
セパレータは水素や酸素のガスを水素イオン伝導膜表面の触媒層に満遍なく行きわたらせる役割のカーボン繊維層(ガス拡散層)と接しており、電気がセパレータとカーボン繊維層の接触界面を横断して流れる。カーボン繊維層とセパレータが接触した部分の電気抵抗を接触抵抗としている。
接触抵抗が低いと、電力ロスが少なくなり、燃料電池の発電効率が上がる。
注2)水素イオン伝導膜:
イオン伝導性を有する高分子膜で、水素極で発生した水素イオン(H+)を酸素(空気)極に移動させ、導線を伝わって移動してくる電子(e-)と反応し、水を生成する。