神戸製鋼HOME > プレスリリース > 2013年 > 農業用資材向けの新抗菌技術について

プレスリリース

*プレスリリースの内容は発表時のものです。販売が既に終了している商品や、組織の変更等、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

農業用資材向けの新抗菌技術について

~ 農作物の水耕(養液)栽培における衛生管理手段として
高機能抗菌めっき技術「KENIFINE®(ケニファイン)」の有効性を確認 ~

2013年5月13日

株式会社神戸製鋼所
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
森村商事株式会社

概要

株式会社神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)は、神戸製鋼が開発した高機能抗菌めっき技術「KENIFINE®(ケニファイン)」(以下、ケニファイン)の様々な用途を探求し、現在、飲食品や医療福祉、電機・空調、一般消費財、漁業などの分野で、優れた抗菌技術として利用されています。
今回、水耕栽培作物の生産安定化と生産物の安全などを研究している地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所および森村商事株式会社と共同で農業分野におけるケニファインの抗菌性や防藻性を検証し、水耕(養液)栽培の衛生管理手段として有効であることを確認しました。農業分野へのケニファインの応用は初めてであり、今後、農業用資材向けの新抗菌技術として、さらにデータ整備をすすめ、ケニファインの利用を進めていきたいと考えております。
この研究成果は、5月23日に発行される農業専門紙「関西病虫害研究会報(第54号)」に掲載される予定です。
なお、本件につきましては、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所も同時刻に報道資料提供を行っています。

(1)高機能抗菌めっき技術『KENIFINE®(ケニファイン)』について

  • ケニファインとは、(株)神戸製鋼所が独自開発した高機能ニッケル系合金めっき技術で、同社が得意とする各種合金開発技術の一つです。同社はライセンスビジネス(めっき業者もしくは自社にめっきラインを有するメーカーに技術を供与)を実施しています。
  • 従来の抗菌技術(抗菌塗装、抗菌ステンレスなど)に対して10倍以上の滅菌スピードとその後の菌の増殖を抑制する効果があります。かびの生育を抑制する作用は、銀系抗菌剤の50倍以上です。抗ウイルス(SARS系コロナウイルス、A型インフルエンザウイルスなど)や防藻、サケマス魚卵のミズカビ抑制などの効果も認められています。
  • 1996年7月、大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157による大規模集団食中毒事件を機に、その対策技術として、同社技術開発本部の中の材料研究所と(当時の)生物研究所と共同で開発をスタートさせたのがきっかけです。
  • 開発が完了した2001年に最初の技術供与先が決まり、2002年より量産を開始しました。その後、めっき技術の改良(耐変色処理や粉末化技術の開発、樹脂への適用化など)を行ない、現在10社にライセンス供与しています。
  • すでに、食品・飲食産業や医療関係、家電・エアコン部品、漁業用金網などの産業分野や、台所用品、グルーミンググッズなどの一般消費財、さらにはアミューズメント分野などの民生用途で採用されています。

(2)ケニファインの水耕(養液)栽培の衛生管理手段としての有効性について

  • 「養液栽培」は、土を使わずに栄養源を培養液で供給して農作物を栽培するものです。従来の「土耕栽培」で問題となっている天候や土壌などの自然環境の影響を受けにくく、高品質で安定な生産技術として定着しています。その方式として、「水耕栽培」が普及していますが、最近では、肥培管理の自動化、作業の省力化などが進んでおり、「植物工場」といわれる生産システムも登場しています。ところが、水耕(養液)栽培では、培養液中に病原菌が侵入すると防除手段がないために、施設内の作物が全滅するなどの被害がしばしば発生しており、その有効対策が求められています。最近では、食の安全性指向から、無農薬栽培に取り組む生産者も多くなってきており、農薬を使用しない防除対策や栽培管理法がますます重要になってきています。そこで、ケニファインを用いた水耕(養液)栽培の衛生管理手段としての可能性を検討しました。
  • 水耕(養液)栽培では、栽培用資材の表面に病原菌や藻などが付着し、病害発生や病原菌を媒介する昆虫の温床となっていることから、代表的な植物病原菌と藻の発生に対するケニファイン効果を調べました。その結果、ステンレス基材に『ケニファインめっき』することで、植物病原菌糸状菌であるトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum 小型分生子)やトマト根腐病菌(Pythium aphanidermatum 遊走子)の発芽を抑制できることが確認されました。『ケニファイン粉末』を用いても、同様の効果が見られました。また、ロックウールによるレタス栽培において、ロックウール表面に適度な濃度の『ケニファイン水系コート(スプレー)』することで、レタスの生育に影響を与えずに、マット表面の藻の付着を抑制できることがわかりました。ロックウールを用いたチンゲンサイ栽培実験結果の例を以下に示します。ケニファイン水系コートを適用することで、ロックウール及び培養液中の藻の発生が著しく抑制されていることが明らかです。
    ケニファインによるチンゲンサイ栽培における藻の発生抑制効果
  • 以上の結果から、今後、ケニファインが植物工場を始めとする水耕(養液)栽培分野における新しい衛生管理手段としての利用が期待されます。すなわち、先に述べましたように、水耕(養液)栽培では、培養液中に侵入した植物病原菌によって根腐病や萎凋病が発生し、大きな被害が発生しています。被害が発生すると病原菌は施設全体に蔓延し、資材等を消毒しても再発することが多く、水耕(養液)栽培における培養液殺菌とともに、使用する資材に病原菌が付着、残存を防止する抗菌化が必要となっています。とくに、水耕(養液)栽培では、無機栄養培地を使うことから、ロックウールやウレタン、発泡スチロール等への藻の発生が多く見られ、藻で繁殖する病原菌の媒介が問題となっており、新抗菌技術としてのケニファインの利用が期待されます。今後、ケニファインを農業現場に取り入れていくためには、病害切除効果および作物の生育への影響なども踏まえつつ、事業規模での現場検証試験を経るなどのいくつかの段階を踏む必要がありますが、その動向には全国の農作物生産現場や植物工場の関係者から注目される可能性があるものと考えています。

地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所について

大阪府環境農林水産総合研究所は、平成19年に大阪府の3つの試験研究機関、「環境情報センター」、「食とみどりの総合技術センター」、「水産試験場」を統合して発足し、平成24年4月1日から、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所として新スタートした研究所である。農林分野では、安全で豊かな食と農を支える調査活動に注力しており、農林業の振興並びに農空間の保全・都市緑化等の総合的な調査研究を展開するとともに、残留農薬の分析、農作物・食品の品質評価や農業の担い手の育成などを行っている。

URL:
http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/

【備考】

共同研究者の草刈眞一氏(農学博士)は、養液栽培の病害と対策分野の日本の権威者。同研究所では、食の安全研究部長などを歴任し、平成17年には第61回農業技術功績賞を受賞。著書に「病害防除の新戦略」、「養液栽培の新マニュアル」、「養液土耕と液肥・培地管理」、「養液栽培の病害と対策」など。

森村商事株式会社について

社長:
森村裕介
資本金:
1億8,000万円
従業員数:
269人
所在地:
〒105-8451東京都港区虎ノ門1-3-1 森村ビル
事業内容:
貿易商社
(耐火物・電子・半導体・化成品・樹脂・香料食品原料、金属素材、その他原料、製品)
URL:
http://www.morimura.co.jp/

【備考】

かねてより、ケニファインについても取り組んでおり、KBBコート剤の開発・販売をしている。現在、ケニファインめっきについても取り扱っている。農業分野へのケニファイン取り組みでは、農業用ハサミをはじめとする各種農業用資材や水系エマルジョンスプレー塗料などの製造販売を計画。