神戸製鋼HOME > プレスリリース > 2013年 > 微細粒ペーストを用いた鋼構造物の延命化技術の開発について

プレスリリース

*プレスリリースの内容は発表時のものです。販売が既に終了している商品や、組織の変更等、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

微細粒ペーストを用いた鋼構造物の延命化技術の開発について

~高度経済成長期に造られ老朽化対策が課題となっている
 橋や建造物などの社会インフラへの適用に期待~

2013年6月19日

株式会社神戸製鋼所

当社は、橋梁や大型機械設備等を中心とした鋼製構造物に生じる疲労亀裂の進行を遅らせることによって延命化する技術を開発しました。この技術は、微細粒のアルミナとオイルを混合したペースト(※図1参照)を亀裂表面に塗布することにより、進展速度を最大で1/10まで低減するものです。こうした技術はこれまで研究段階のものはありましたが、開発まで至ったのは当社が初めてとなります。今後マーケティング調査を進め、2014年度からの事業化を目指します。

本技術では、疲労亀裂の表面に微細粒ペーストを塗布します(※図2参照)。塗布されたペーストは、オイルを媒体とする毛細管現象によって自動的に亀裂内に運ばれ、微細粒が亀裂の先端に噛みこむことにより、外からの力が作用したときに亀裂の先端が開閉する動的振幅の幅を小さく抑える仕組みです。抑制効果は作用する負荷の状況によって変わりますが、亀裂進展速度を最大で1/10以下に抑えることが可能です。

当社は、社内大型機械設備の保全向けに開発を行った本技術について、道路橋の鋼床版への適用に向けて2011年に財団法人災害科学研究所の松井繁之研究員(大阪大学名誉教授)および独立行政法人土木研究所寒地土木研究所との共同研究を開始し、この程有効性を確認し開発に至ったものです。
わが国の道路橋の多くは高度経済成長期に建設されたもので、近年では老朽化対策が課題となっており,年間補修費用は約1,000億円と言われております。長さ15m以上の道路橋が15.7万橋あり、その中で、疲労亀裂が顕著になりつつあるのが2200橋ある長支間の鋼橋で、その橋面を構成する鋼床版の疲労亀裂発生は世界的な問題となっています。アスファルト下の構造はデッキプレートと呼ばれる鋼板の下面に補剛材(横リブ・縦リブ)が溶接されることにより、車両の通行による荷重に耐えられる設計となっていますが、一方で長年の使用によりその溶接部に疲労亀裂が発生することが問題となっております(※図3参照)。

現在の国道橋の管理基準では5年毎に点検が実施されており、補修工事はその点検結果に応じて補修計画や補修設計を経て行われています。
そのため、簡便かつ短時間での施工が可能な本技術を応急対策として点検時に活用することで、疲労亀裂の進展が遅延され、補修工事までの間、補修計画を慎重にすることができます。加えて将来的に、本技術の適用により、亀裂発見~補修実施までの期間を計画的に長期化することが可能となれば、その期間に発生する複数の亀裂を一度に補修することも考えられ、補修工事を一括で実施できれば数千万円規模のコスト削減も視野に入ってきます。橋梁分野で実績ができれば、今後他の社会インフラへの適用拡大も期待されます。
当社グループでは今後も社会インフラの整備に貢献できる技術・製品の開発を積極的に推進し、社会の安心・安全に貢献して参ります。

図1 微細粒ペーストの製作方法
(アルミナ粉末とオイルを混合・攪拌してペースト状の物質を得る)

図2 微細粒ペーストの適用状況(図3のデッキプレートと縦リブの溶接部が対象)

図3 鋼床版の構造と主要な亀裂発生部分