生物多様性ー地球に息づく豊かな生態系を守ることは、環境活動の重要なテーマであると認識し、2010年12月に独自の「コベルコ生物多様性指針」を策定し、生物多様性の保全や貢献に取り組んでいます。
当社グループは、生物の多様性の保全が重要であることを認識し、ここに指針を定め、生物多様性の保全のための活動を推進する。
また、当社は、(一社)日本経済団体連合会の一員として、2018年10月に改定された「経団連生物多様性宣言・行動指針」に賛同しています。
「環境経営・防災部会」の下部組織として生物多様性対応チームを設け、その中で生物多様性に係るリスク・貢献に関する検討を行っています。その結果はサステナビリティ推進委員会を通じて経営審議会に報告しています。
当社グループの生産拠点で事業を行うことが、周辺の生物多様性保全上重要な地域に影響を及ぼす可能性について、IBAT*1を用いて評価を行いました。
結果、半径3km以内に自然保護地域(ラムサール条約で登録された湿地、世界自然遺産、IUCN*2が規定する自然保護地域カテゴリーⅠa(厳正保護地域)~Ⅲ(天然記念物)のサイト)がないことを確認しています。
*1 IBAT( Integrated Biodiversity Assessment Tool ) 自然保護に関する基礎データや最新情報にアクセスできるツール
*2 IUCN ( International Union for Conservation of Nature ) 国際自然保護連合
(一社)日本経済団体連合会及び経団連自然保護協議会は、「経団連生物多様性宣言・行動指針」を策定し、自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現を目指しています。当社も2019年12月にこの宣言に賛同しました。
JBIB*3が開発した「企業と生物多様性の関係性マップ🄬」を活用して当社グループの事業活動と生物多様性への影響、貢献について整理しています。
当社グループの事業活動は素材系、機械系、電力等の多岐にわたりますが、主要事業である鉄鋼事業に係る生物多様性の関係性は次のページのとおりです。当社グループの原料調達から製造、廃棄に至る事業活動が生物多様性に影響を与える可能性があることを認識するとともに、生物多様性の保全に資する活動に取り組んでいきます。
*3 JBIB:(一社)企業と生物多様性イニシアティブ
気候変動に伴う生態系の変化等生物多様性への影響を低減するため、2050年カーボンニュートラルを目指して製鉄プロセス、電力事業におけるCO2削減のロードマップを策定し、活動を推進しています。
水資源への依存を低減するため、生産工程における水の効率使用、水の循環利用等を徹底することで、水使用量の削減を進めており、水のリサイクル率95%以上を維持することを目標としています。
また、排水の汚濁負荷量については、閉鎖性海域で排水リスクのある地域に立地する事業所を対象に、COD、総りんについて目標を設定しています。
限りある資源を有効に活用するために、生産工程・オフィスにおいて廃棄物の発生抑制に取り組むとともに、生産工程から発生する副産物等の付加価値向上や新規利用用途の開発により積極的にリサイクルを推進しています。
当社の生産活動に伴う主な副産物であるスラグ、ダスト、スラッジの再資源化率を2025年度には99%とする目標を設定しています。
原料の調達先のうち、主要な鉄鉱石鉱山と石炭鉱山での操業が周辺の生物多様性保全上の重要な地点に影響を及ぼす可能性について、IBATを用いて評価を行いました。その結果、すべての主要な鉱山についてIUCNが規定する自然保護地域カテゴリーⅠa(厳正保護地域)~Ⅲ(天然記念物)のサイト内部ではないことを確認しています。ただし一部鉱山では保護地域に近接しているものがあることから、今後も保護地域の自然を直接改変する恐れがないこと、及び操業に伴う排水や排ガスによる当該保護地域へ著しい影響がないことを確認していきます。
また、原料の調達先に対しては、資源乱獲防止など生物多様性に配慮した生産活動について、お取引先の皆様へ当社グループの考え方などをご説明し対応を求めています。
鉄鋼スラグは、これまでの実証試験により、海藻が繁茂するなど、海洋環境の修復に効果があることが確認され、漁業者から評価を得ています。その結果、鉄鋼スラグ水和固化体が須磨地区潜堤築造工事の潜堤構築材として採用されました。今後も、鉄鋼スラグ製品の海域環境改善材としての利用実績を活かし、海域工事・港湾工事用資材として利用を進めていきます。
当社グループの独自技術であるMIDREX🄬プロセスは、天然ガスを用いた直接還元により、原料鉱石を溶融させることなく還元鉄を得る技術です。電気炉との組み合わせで、従来の高炉-転炉法よりもCO2排出を2~4割低減した鉄鋼生産が可能であり、鉄鋼業におけるCO2排出削減に貢献しています。さらに天然ガスの代わりに水素を用いたプロセス(MIDREX H2TM)を展開し、大幅なCO2排出削減に貢献していきます。
エンジニアリング事業部門では、主として公共事業に関わるプラント設計においてCO2排出削減を目指しています。
例えば、下水処理場におけるバイオガス生成、下水汚泥炭化による化石燃料の代替を行うほか、木質バイオマス発電を手がけています。
機械事業部門では、LNGを燃料として用いる船舶のエンジン用圧縮機を販売しており、船舶のCO2排出削減に貢献しています。
また、コンプレッサは日本の工場で使われる電力の約25%を占めると言われています。世界最高レベルの省エネ性能を持った汎用エアコンプレッサをお客様へ供給することで、世界中でCO2排出削減に貢献しています。
電力事業部門では、停泊中の一部の船舶へ陸上から電力を供給することにより、船舶での燃料使用に伴うCO2排出、大気汚染物質排出低減に貢献しています。
また、神戸市内の酒造会社等近隣企業へ蒸気の供給を行い、地域の省エネルギー及びCO2排出削減に貢献しています。
燃料輸送に関しては、2021年に低環境負荷型の石炭輸送船舶を導入しました。
溶接事業部門では、LNG燃料タンク向けの自動溶接システムや洋上風力発電向け新溶接施工法の開発でカーボンニュートラル社会の実現に向け貢献しています。
また、環境負荷低減の観点から銅めっきなしソリッドワイヤ「SEワイヤ」を開発。同製品は銅めっき処理工程の省略により環境負荷低減に貢献するとともに溶接時のスパッタ発生量の低減とヒュームの発生低減により溶接作業環境の改善にも貢献しています。
この他に溶接用ワイヤ包装形態の大容量化による包装資源の有効活用や回収再利用、プラスチックスプールへの再生原料の利用等リサイクルに努めています。
アルミ製品の製造段階では原料の一部としてアルミスクラップを利用しており、リサイクル利用に努めています。また、製造時に副産物として発生するアルミドロスからアルミを抽出する技術を開発するなど省資源化を推進しています。
瀬戸内海の兵庫県海域(播磨灘)では排水規制により、水質が改善された一方で、のりの色落ちや漁獲量の減少などが深刻な課題となっています。この現状を受け、瀬戸内海環境保全特別措置法の改正が行われ、2022年に兵庫県は「栄養塩類管理計画」を策定しました。当社の加古川製鉄所は本計画に基づく「栄養塩類増加措置実施者(窒素)」として選定されており、栄養塩類管理計画に沿った操業を行い、豊かな海づくりに貢献していきます。
当社の地域交流施設「灘浜サイエンススクエア」(神戸市灘区)では、施設内にビオトープを設けて、兵庫県版レッドデータブック2020に登録されている貴重植物であるナガボノワレモコウ・オキナグサ・ハバヤマボクチ等を生育しており、生物多様性の保全に努めるとともに、「(特非)六甲山の自然を学ぼう会」や専門家と連携を図りながら、地域の子どもたちを対象とした生き物の観察会等を定期的に開催しています(2020~2022年度の観察会等は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から中止していましたが、2023年度より再開しています)。
今後もビオトープを保全し、豊かな生態系の維持に貢献していきます。
環境・社会貢献活動として、生物多様性の保全と促進に資する森林整備活動や、子どもたちの自然への想いを育む「KOBELCO森の童話大賞」「児童館出前エコ教室」への参画を行っています。
2011年から社員のボランティアによる森林整備活動を兵庫県内2ヵ所(約5.6ha)で行っています。
KOBELCOの森(三木市:4.7ha)では、兵庫県、(公社)兵庫県緑化推進協会が推進する「企業の森づくり」に参加し、豊かな森林づくりへの貢献のために、兵庫県立三木山森林公園で活動を実施しています。
一方、ECOWAYの森(神戸市灘区:0.9ha)では国土交通省が実施している「六甲山系グリーンベルト整備事業」に参画し、土砂災害の防止や、良好な都市環境、風致景観、生態系及び種の多様性の保全・育成等に取り組んでいます。この活動では「(特非)六甲山の自然を学ぼう会」のご指導のもと、いろいろな樹種・樹齢により構成された豊かな森を目指して、伐採・下草刈りや植樹等を行いながら生物多様性の保全を推進しています。