気候変動への対応

TCFD提言に基づく気候変動関連情報開示

当社は、2020年12月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」へ加入することを決定しました。

tcfd

tcfd

基本的な考え

KOBELCOグループはCO2削減への取組みを経営上の最重要課題であると認識しており、2021年5月にKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の中で、2050年のカーボンニュートラルへ挑戦し、カーボンニュートラルへの移行の中で企業価値の向上を目指すことを表明しました。

当社グループはこれからもCO2削減を通じて、「KOBELCOが実現したい未来」である「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界。」の実現に貢献していきます。

気候変動関連のガバナンス

当社では、気候関連リスク及び機会に係る課題を専門的に取り扱う組織として、サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役副社長執行役員)の下にCO2削減推進部会(部会長:経営企画部担当役員)を設置し、気候変動に関する戦略的な検討を行うこととし、気候関連のリスクと機会について全社横断的に検討・活動を行っています。

気候関連リスク及び機会の評価・管理は重要な経営課題と位置付けており、CO2削減推進部会での重要な意思決定にあたっては関係役員ステアリング会議の承認を得ることとしています。気候関連に関する課題は、事業、経営、法務、技術開発等の幅広い視点・観点からの知見が求められることから、関係役員ステアリング会議は、本社及び事業部門の取締役及び執行役員で構成されています。

CO2削減推進部会の検討結果や活動成果は、サステナビリティ推進委員会を通じて四半期に一度、取締役会へ報告を行い、取締役会の監督・指導を受けています。また、気候関連の重要な意思決定については、サステナビリティ推進委員会を通じて経営審議会に提言し、経営審議会の審議を経て、社長決裁や取締役会決議を得ることとしており、経営幹部が直接ガバナンスを行う体制としています。

気候変動関連のガバナンス体制

気候関連のガバナンス体制

気候変動関連の戦略

当社グループでは、国際エネルギー機関(IEA)等が提示する社会シナリオ、(一社)日本鉄鋼連盟や(一社)日本アルミニウム協会等の業界団体が策定・公表している長期ビジョンや、国のエネルギー政策等を考慮し、中長期的な気候関連のリスクと機会の分析を進めています。また、その分析により当社グループの実行項目の適正性を評価しています。

短・中期、長期の気候関連のリスク及び機会

短・中期、長期の気候関連のリスクおよび機会

リスクと機会への対応(研究開発)

リスクと機会への対応(研究開発)

事業・戦略・財務に及ぼす影響

当社の温室効果ガス排出量は、「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(環境省)」によれば日本で上位の排出量となっています。また、当社は地球温暖化対策税(石炭・石油・LPG・LNG使用により排出されるCO21tあたり289円)を支払っており、今後、地球温暖化対策税の増税やカーボンプライシングの導入による新たな課税がなされた場合、経営に非常に大きな影響を与えることが予想されるため、これらの動向は常に注視しています。今後、二酸化炭素等の排出に関連して規制や税の賦課が導入された場合には、鉄鋼を中心に当社グループの事業活動が制約を受け、売上高の減少やコストの増加等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、カーボンプライシングの影響を緩和するための方策として、省エネ対策を進めてきています。当社グループにおいて、2022年度に実施した省エネ設備投資額は約3.8億円となります。

2022年度の投資の例としては、加古川製鉄所の高炉空圧機クーラーの更新等です。その他の取組みは本データブック26ページの「当社グループ 省エネルギー、CO2排出削減の取組み事例(2022年度)」をご参照ください。

また、当社グループは社会全体のCO2削減に貢献するため、「生産プロセスにおけるCO2削減」と「技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献」に関する様々な技術開発に取り組んでいます。2022年度の当社の気候変動関連の研究開発費は約36億円でした。

気候変動関連の研究開発費についての詳細は、以下をご参照ください。

シナリオ分析

将来の気候関連のリスクと機会を把握するため、中期(2030年)及び長期(2050年)におけるシナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析にあたっては、国際エネルギー機関(IEA)が公表する2℃シナリオ(SDS)、1.5℃シナリオ(Net Zero by 2050)、IPCC第6次評価報告書の4℃シナリオを用いており、それに加えて(一社)日本鉄鋼連盟や(一社)日本アルミニウム協会等当社所属の業界団体が公表する長期ビジョンも参照して分析・評価を実施しています。なお、電力事業については、日本国のエネルギー政策と密接に関係するため、日本政府のエネルギー政策をベースとしてシナリオ分析を実施しています。また、外部環境の変化も踏まえ、定期的にリスクと機会の分析・評価の見直しを行っています。

  • ビジネスへの影響

当社グループのCO2排出量の90%以上は製鉄プロセスに由来するため、鉄鋼業の中長期的な動向は当社グループのビジネスに最も大きな影響を与えます。(一社)日本鉄鋼連盟の「長期温暖化対策ビジョン『ゼロカーボン・スチールへの挑戦』」によると、経済成長と1人当たりの鉄鋼蓄積量には一定の相関があり、また人口が増えれば鉄鋼の蓄積総量は拡大することが示されています。したがって、今後、世界の経済成長と人口増加により鉄鋼の需要は増加し続けると予測されます。

鉄鋼の生産は、天然資源(鉄鉱石)からの生産(主に高炉、直接還元鉄)と、スクラップの再利用(主に電炉)による生産に大別することができ、(一社)日本鉄鋼連盟の予測によれば鉄鋼の蓄積総量の拡大によりスクラップの再利用が大きく増加することが見込まれています。一方で、スクラップの再利用だけでは鋼材需要を満たすことはできず、天然資源(鉄鉱石)からの生産も引き続き現在と同程度に必要となることが予測されています。

気候変動への対応やその情報開示に対する関心が高まる中、鉄鋼業においてもCO2削減への取組みの重要性は今後も高まることが見込まれています。そのため、政府・地方自治体の皆様、投資家様、お客様等のステークホルダーの皆様から、自社設備からのCO2排出量の削減への取組みと、CO2削減貢献メニューの拡販に対する関心等がさらに増加するものと予測しています。

  • リスクと機会

当社グループは、主力事業の一つとして鉄鋼製品の生産・販売を行っており、エネルギー多消費型の素材産業に該当します。当社グループのエネルギー起源CO2排出量は15.6百万(t 2022年度、Scope1,2)であり、日本の製造業の中でも上位に位置しています。そのことから、カーボンプライシングをはじめとする将来の気候変動に係る政策、法令・規制の動向は、経営に重大な影響を与える可能性がある移行リスクと認識しています。

当社グループは、2021年5月にKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の中で、2050年のカーボンニュートラルへ挑戦し、カーボンニュートラルへの移行の中で企業価値の向上を目指すことを表明しました。当社グループは、自社の生産プロセスにおけるCO2削減と、当社グループ独自の技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献の2つの側面で、2030年目標及び2050年ビジョンを設定しています。

自社の生産プロセスにおけるCO2削減に関しては、製鉄プロセス、電力事業について、カーボンニュートラルに向けたロードマップを策定して、CO2削減の取組みを推進し、リスクを低減していきます。一方、当社グループ独自の技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献に関しては、MIDREX®プロセスによるCO2排出削減貢献ロードマップを策定して、機会を最大限に活用していきます。

また、物理的リスクとして地球温暖化の進行により、大気中の水蒸気が増加することで降水量が増加し、大雨や台風による被害が激甚化する傾向があることが各種研究機関や気象庁等から報告されています。当社グループでも、近年の台風や大雨の激甚化による生産停止やサプライチェーンの混乱のリスクが顕在化しつつあり、気候変動に伴う台風や洪水等の自然災害の激甚化は、生産活動の停止につながる経営に重大な影響を与える可能性があるリスクと認識しています。

当社グループでは、全社のリスク管理規程上、「気候関連規制」と「自然災害への備え、復旧」を事象発生時の影響が特に重大と予想されるリスクである「トップリスク」に位置付け、リスク管理の強化を図っています。

一方で機会に関しては、気候関連問題の国際的な関心の高まりを背景に、CO2排出量が少ない製品・サービスへの需要が増加しており、自動車軽量化に貢献する素材・部品やMIDREX®といった当社のCO2削減貢献メニューの需要が中長期的に増加することが期待されます。

KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に公表した目標・ビジョン

中期経営計画(2021~2023年度)に公表した目標・ビジョン

  • ※1 削減目標の対象範囲の大半が製鉄プロセスでの削減。
    2020年9月公表時から見直し(BAUベースから総量ベースへ変更したうえで、当社独自ソリューションの活用拡大を加味)。
    BAU:Business As Usual、追加的な対策を講じなかった場合の温室効果ガスの排出量、または排出原単位。

    ※2  当社グループ独自の技術・製品・サービスを通じて社会の様々な分野でCO2排出削減に貢献。

    ※3  2020年9月公表時の算定式を見直し。

製鉄プロセスのカーボンニュートラルに向けたロードマップ

製鉄プロセスのカーボンニュートラルに向けたロードマップ

電力事業のカーボンニュートラルに向けたロードマップ

電力事業のカーボンニュートラルに向けたロードマップ

MIDREX®プロセスによるCO2排出削減貢献ロードマップ

MIDREX®プロセスによるCO2排出削減貢献ロードマップ

気候変動関連のリスク管理

気候関連リスクに関しては、「移行リスク:政策・法規制」と「物理的リスク:自然災害の備え・復旧」が当社グループ及びステークホルダーの皆様に重大な影響を及ぼし、グループを横断した対応が必要なリスクである「トップリスク」と識別・特定し、それぞれにリスクオーナーをおいてリスク管理の強化を図っています。

リスクマネジメントの基本的な考え方やマネジメント体制については、以下をご参照ください。

気候変動関連の指標と目標

指標

当社グループでは、CO2削減活動の具体的な指標として、生産プロセスにおけるCO2削減(指標A)と技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献(指標B)を設定し、それぞれについて目標値を定め管理しています。

当社はこれら2つの指標を事業管理指標のKPIと位置付けて管理しています。CO2削減を含む事業管理指標は1年に一度、予算書の重要な項目として経営審議会にて事業計画、目標、実績を審議され、その後取締役会にて審議・承認されます。

エネルギー使用量

✓:これらの指標に対して第三者保証を受けており、保証を受けている指標および保証報告書はESGデータブック2023をご参照下さい

単位 2020年度 2021年度 2022年度
エネルギー使用量 PJ 182 192 187
連結売上高 百万円 1,705,566 2,082,582 2,472,508
エネルギー原単位(連結売上高当たり) GJ/百万円 107 92 75
生産量(粗鋼、アルミ圧延品、銅圧延品) 百万t 6.3 7.2 6.7
エネルギー原単位(生産量当たり) GJ/生産量t 28.7 26.6 27.9
 
    <算定方法>
  • 「経団連カーボンニュートラル行動計画」に基づき算定。ただし、(株)コベルコパワー神戸、(株)コベルコパワー神戸第二、(株)コベルコパワー真岡(以下、電力事業部門の子会社3社)は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づき算定。
  • エネルギー使用量に、電力事業部門の子会社3社及び当社製鉄所が外部に販売した電力に相当するエネルギー使用量(166PJ)は含まない。
 
    <集計範囲>
  • 当社、国内連結子会社17社、海外連結子会社12社並びに持分法適用関連会社1社のコークス製造工場
  • 国内:各年度の4月1日~3月31日、海外:1月1日~12月31日
 
    <熱量換算係数>
  • 資源エネルギー庁「エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数一覧表」(総合エネルギー統計)(2020年1月31日改訂)。
  • ただし、電力事業部門の子会社3社は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」を適用。
    ※算定方法の見直しに伴い、2021年度の数値を遡及して修正。

温室効果ガス排出量(スコープ1,2,3)

エネルギー起源CO2排出量(Scope1,2)

✓:これらの指標に対して第三者保証を受けており、保証を受けている指標および保証報告書はESGデータブック2023をご参照下さい

単位 2020年度 2021年度 2022年度
Scope1
自社の燃料の使用に伴う排出(直接排出)
百万t-CO2 14.6※1 15.3 14.7
Scope2
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う排出(間接排出)
百万t-CO2 0.8 0.9※1 0.9
Scope1+2※2 百万t-CO2 15.4※1 16.1 15.6
連結売上高 百万円 1,705,566 2,082,582 2,472,508
エネルギー起源CO2排出原単位(連結売上高当たり) t-CO2/百万円 9.0 7.8※1 6.3
生産量(粗鋼、アルミ圧延品、銅圧延品) 百万t 6.3 7.2 6.7
エネルギー起源CO2排出原単位(生産量当たり) t-CO2/生産量t 2.4 2.2 2.3
 
    <算定方法>
  • 「経団連カーボンニュートラル行動計画」に基づき算定。ただし、(株)コベルコパワー神戸、(株)コベルコパワー神戸第二、(株)コベルコパワー真岡(以下、電力事業部門の子会社3社)は、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき算定。
  • Scope1、Scope1+2に、電力事業部門の子会社3社及び当社製鉄所が外部に販売した電力に相当するCO2排出量(12.8百万t-CO2)は含まない。
 
    <集計範囲>
  • 当社、国内連結子会社17社、海外連結子会社12社並びに持分法適用関連会社1社のコークス製造工場
  • 国内:各年度の4月1日~3月31日、海外:1月1日~12月31日
 
    <CO2排出係数>
  • 燃料:「日本国温室効果ガスインベントリ報告書(NIR)2022年」の炭素排出係数×CO2換算係数(44/12)
  • 電気:国内は、電気事業低炭素社会協議会の2021年度(速報値)を適用。海外は、「IGES List of Grid Emission Factorsversion11.1」を適用。ただし、アメリカは「EPAのeGRID(2021年度)」を適用。
  • ただし、電力事業部門の子会社3社は、燃料、電気ともに「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を適用。
    ※1 算定方法の見直しに伴い、2020年度、2021年度の数値を遡及して修正。
    ※2 四捨五入の結果、合計が一致しない場合があります。

温室効果ガス排出量の内訳(単位 千t-CO2

項目 2020年度 2021年度 2022年度
エネルギー起源CO2(Scope1) 14,591 15,292 14,687
非エネルギー起源CO2 498 568 887
メタン(CH4 5 6 5
一酸化二窒素(N2O) 50 7 5
ハイドロフルオロカーボン類(HFC) - - -
パーフルオロカーボン(PFC) - - -
六ふっ化硫黄(SF6 18 18 16
三ふっ化窒素(NF3 - - -
非エネルギー起源CO2及び
CO2以外の温室効果ガス 計
571 598 913
 
    <非エネルギー起源CO2及びCO2以外の温室効果ガスに関する算定方法>
  • 「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき算定
  • 集計範囲は当社。各年度の4月1日~3月31日。
    ※四捨五入の結果、合計が一致しない場合があります。

サプライチェーンにおけるその他の間接排出(Scope3)(単位 千t-CO2

✓:これらの指標に対して第三者保証を受けており、保証を受けている指標および保証報告書はESGデータブック2023をご参照下さい

カテゴリ 2020年度 2021年度 2022年度 算出方法
1 購入した製品・サービス 5,547※1 6,530※1 5,888 当社の主要な原料(鉄鉱石、原料炭、購入コークス、アルミ原料、銅原料、チタン原料)の使用量にCO2排出原単位を乗じて算出
2 資本財 262 113 144 設備投資額にCO2排出原単位を乗じて算出
3 Scope1、2に含まれない
燃料及びエネルギー関連活動
317 305 338 電力、蒸気、燃料等の年間購入量にCO2排出原単位を乗じて算出
4 輸送、配送(上流) 180 217 225 「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」で定める荷主による貨物輸送に係るエネルギー起源CO2排出量の算定方法で算出
5 事業から出る廃棄物 30 30 30 種別ごとの廃棄物量にCO2排出原単位を乗じて算出
6 出張 2 1 1 社員数にCO2排出原単位を乗じて算出
7 雇用者の通勤 5 5 5 社員数にCO2排出原単位を乗じて算出
10 販売した製品の加工 2,445※1 2,705※1 2,563 主要な鋼材生産量(t)に鋼材種別毎の加工に伴うCO2排出原単位を乗じて算出
11 販売した製品の使用 36,985 21,478 17,696 当社が販売している主要な機械製品(使用時のエネルギー:電気)について、販売台数、予想平均寿命、平均消費電力、電力のCO2排出原単位より、生涯排出量を算出
12 販売した製品の廃棄 56 63 60 粗鋼・アルミ・銅製品の生産量にCO2排出原単位を乗じて算出
合計※2 45,829※1 31,447※1 26,950
 
    <算定方法>
  • サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省・経済産業省)に基づき算定。
 
    <集計範囲>
  • 当社。各年度の4月1日~3月31日。
 
    <CO2排出原単位の出典>
  • カテゴリ1、3、10:「LCIデータベース IDEA Ver.3.3(2023/04/15)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門IDEAラボ」
  • カテゴリ2、5、6、7、12:「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver3.3)」
  • カテゴリ11:「電気事業者別排出係数」(環境省・経済産業省公表)の全国平均係数
    ※1 算定方法の見直しに伴い、2020年度、2021年度の数値を遡及して修正。
    ※2 四捨五入の結果、合計が一致しない場合があります。
    ※3 カテゴリ8はScope1、2で計上し、カテゴリ9、13、14、15は該当しない。

リスクと機会の目標と実績

2021年5月にKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の中で、2050年のカーボンニュートラルへ挑戦し、カーボンニュートラルへの移行の中で企業価値の向上を目指すことを表明しました。その中で、生産プロセスにおけるCO2削減と、当社グループ独自の技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献の、これら2つの側面で、2030年目標及び2050年ビジョンを設定しました。

指標 A:生産プロセスにおけるCO2削減

2050年ビジョン:
カーボンニュートラルへ挑戦し、達成を目指す
2030年度目標:
2030年度に2013年度比で30~40%削減※1※2 (目標開始年:2019年度)
実績:
生産量減少に伴い、2022年度のCO2排出量は前年度と比較して減少しました。その結果、2013年度比20%削減※1※2になりました。
  • ※1 スコープ1、2の合計
  • ※2 削減目標の対象範囲は当社及びコベルコ建機(株)の主要事業所であり、当社グループ全体のCO2排出量の約93%をカバーしています(2022年度実績)。
  • 対象範囲のCO2排出量:
    2013年度 18.2百万t
    2022年度 14.5百万t
取組み:
  • 日本の鉄鋼業はオイルショックを契機として1970年代以降1990年代までに、工程の連続化や工程省略等による省エネルギーや排熱回収設備の設置によるエネルギーの有効利用を進めてきました。1990年代以降も排熱回収設備の増強や設備の高効率化を進め、廃棄物資源の有効利用の対策にも取り組み、近年では高効率ガスタービン発電設備の導入等を行ってきました。
  • 当社グループは、これまで積極的な設備投資により、様々な省エネルギー・CO2削減対策を講じてきました。例えば、2009年度から2014年度にかけて、加古川製鉄所に高炉ガスを利用した高効率ガスタービン発電設備を導入し、CO2排出量を大幅に削減しました。
  • 製鉄プロセスにおいては、MIDREX®プロセスで製造したHBI(還元鉄)を高炉に多量に装入し、高炉工程でのCO2排出量を約20%削減できることを実証試験で確認完了しました。今後も引き続き、このHBI装入技術やAI操炉技術をさらに追求し、高炉でのCO2排出量を削減して2030年度の目標達成に向けて取り組んでいきます。また、2050年カーボンニュートラルに向けては、「高炉を活かしたCO2削減」と「大型電炉での高級鋼製造」の複線アプローチで検討を進め達成を目指します。

指標 B:技術・製品・サービスによるCO2排出削減貢献

当社グループはCO2削減に貢献する様々な製品・サービスを保有しており、これらの拡販により、使用段階でのCO2削減に貢献しています。

2050年ビジョン:
1億t以上のCO2の排出削減に貢献していくことを目指しています。
2030年度目標:
61百万tの排出削減に貢献していくことを目指しています。
実績:
CO2削減推進部会において承認された当社グループの技術・製品・サービスによる2022年度のCO2排出削減貢献量は58.9百万tと推計しています。

CO<sub>2</sub>排出削減貢献量

CO<sub>2</sub>排出削減貢献量

取組み:
排出削減に貢献する技術・製品・サービスについては、排出削減貢献量を社内認定する制度を設けています。なお、認定における計算式については、国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 IDEAラボ 田原聖隆ラボ長にご指導いただくことで、公正性・客観性を担保しています。

認定の流れ

その他CO2排出削減に貢献している主な技術・製品・サービス

技術・製品・サービス 削減のコンセプト
自動車/輸送機分野 燃料電池セパレータ素材、航空機用チタン 自動車/輸送機の軽量化による燃費改善効果、次世代自動車のガソリン車からの置き換え効果
水素利活用分野 水電解式高純度水素発生装置(HHOG) 水素活用による化石資源使用量削減効果
発電分野 下水汚泥の燃料化と石炭火力発電所での活用(予定) カーボンニュートラルに寄与する資源活用による化石資源使用量削減効果

指標A、指標Bの2030年目標を含む定性的目標・定量的目標の進捗

実施項目 長期方針 中期での目標 2022年度の実績
自己評価
〇:計画どおりに進捗 △:課題あり ×:計画未達
地球温暖化 対策 あらゆる事業活動において省エネルギー、CO2削減を推進し、地球温暖化防止に貢献する。
<2030年目標>
生産プロセスにおけるCO2排出量を30~40%削減(2013年度比)
<2050年ビジョン>
カーボンニュートラルに挑戦し、達成を目指す
2030年目標及び2050年ビジョンの達成に向け、ロードマップに基づく中長期的な技術開発を推進するとともに、引き続き省エネルギー活動に取り組んでいく。

製鉄プロセス、電力事業のカーボンニュートラルに向けた ロードマップに沿った取組み・検討を実施。

  • 2022年度実績:20%削減(2013年度比)
技術・製品・サービスでの環境への貢献 すべての技術開発・製品開発において、環境に配慮し、環境調和型製品や新たなビジネスを創出する。
<2030年目標>
CO2排出削減貢献:6,100万t(うちMIDREX® 4,500万t以上)
<2050年ビジョン>
CO2排出削減貢献:1億t以上
輸送機の軽量化、水素社会の実現、電源の多様化等、環境・エネルギー分野の課題に関して、当社グループ全体で取り組み、低炭素社会の実現に貢献する。

2022年度実績:5,891万t CO2排出削減貢献

所属する気候関連の団体

当社はGlobal CCS Instituteや(一社)カーボンリサイクルファンドZの会員となり、CCU/S(Carbon Capture Utilization/Storage)に関する最新情報を積極的に取得し、将来の実用化に向けてCO2の分離・回収、リサイクル、固定化に関する技術開発や調査に取り組んでいます。

所属する気候関連の団体 概要
Global CCS Institute グローバルCCSインスティテュートは国際的なシンクタンクであり、その使命は、気候変動に取り組み、気候中立性を実現するために不可欠な技術である二酸化炭素回収貯留(CCS)技術の展開を加速することです。本部はオーストラリアのメルボルンにあり、東京、ワシントンDC、ブリュッセル、北京、ロンドンにも拠点を設置しています。
(一社)カーボンリサイクルファンド (一社)カーボンリサイクルファンドは、地球温暖化問題とエネルギーアクセス改善の同時解決を目指し、CO2を資源として捉え再利用する研究助成や広報活動を推進しイノベーションの創出を図ります。

また、当社グループの所属する以下の業界団体はそれぞれ、カーボンニュートラル行動計画を策定しています。当社グループは生産プロセスにおける省エネルギーとCO2削減の推進により、所属する各業界団体のカーボンニュートラル行動計画の目標達成に貢献していきます。

所属する業界団体 カーボンニュートラル行動計画に記載の生産プロセスにおける2030年度目標CO2削減業界目標値
(一社)日本鉄鋼連盟 2013年度比30%削減
(一社)日本アルミニウム協会 2013年度比31%削減
(一社)日本伸銅協会 2013年度比33%削減
(一社)日本産業機械工業会 2013年度比10%削減
(一社)日本建設機械工業会 2013年度比17%削減(エネルギー原単位)

加盟する業界団体との一貫性を示す方針・コミットメントに関して

当社グループは、一貫性をもって気候変動への対応を行うために、サステナビリティ推進委員会が中心となるガバナンス体制を整備しています。

サステナビリティ推進委員会は、当社グループの企業理念、ESGに関する方針や各種取組みに関して、社員に対して周知・教育を行い、社員がこれらの方針を十分に理解するよう努めています。

加えて、日本国の政策だけでなく、当社事業に関係する業界の指標や取組み、当社グループがビジネスを展開する各国の規制等の動向についても、情報収集を行い、取締役、経営陣を含む社内関係者に情報共有を行っています。

当社グループが政府、地方自治体、業界団体等に対して働きがけ等を行う場合は、サステナビリティ推進委員会に事前に報告することとしており、サステナビリティ推進委員会が、当社グループの企業理念やESGに関わる方針と整合したものかについて確認を行い、重要性に応じて、経営審議会や取締役会へ報告し、監督を受ける体制としています。

また、仮に業界団体等の取組みが当社グループの企業理念やESGに関わる方針から逸脱することがあった場合は、業界団体等に対して当社グループの意見を伝え、業界団体等の取組みが適切なものになるよう働きかけを行う方針としています。

省エネルギー、CO2排出削減の取組み

当社グループ 省エネルギー、CO2排出削減の取り組み事例(2022年度)

事業所名/会社名 事業所所在地 取組み事例
(株)神戸製鋼所 加古川製鉄所 兵庫県加古川市 高炉空圧機クーラー更新
(株)神戸製鋼所 真岡製造所 栃木県真岡市 工場照明の一部をLED照明に更新
(株)神戸製鋼所 長府製造所 山口県下関市 工場内一部建屋の熱源転換
運用改善による冷却ファン停止
(株)神戸製鋼所 大安製造所 三重県いなべ市 工場照明の一部をLED照明に更新
(株)神戸製鋼所 茨木工場 大阪府茨木 工場照明の一部をLED照明に更新
空調更新
フォークリフトの電動化
(株)神戸製鋼所 西条工場 広島県東広島市 集塵機更新
トランス更新
(株)神戸製鋼所 福知山工場 京都府福知山市 工場照明の一部をLED照明に更新
工程改善により電動機負荷低減
工程改善によりクーリングタワーファン停止
(株)神戸製鋼所 藤沢事業所 神奈川県藤沢市 電動機のインバータ化
製造ラインの連動化
(株)神戸製鋼所 高砂製作所 兵庫県高砂市 工場照明の一部をLED照明に更新
トランスの高効率化更新
(株)神戸製鋼所 神戸総合技術研究所 兵庫県神戸市 空調更新
照明の一部をLED照明に更新
神鋼鋼線工業(株)尼崎事業所 兵庫県尼崎市 空調更新
炉断熱性改善
神鋼鋼線工業(株)尾上事業所 兵庫県加古川市 工場照明の一部をLED照明に更新
トランス更新
電動機のインバータ化
神鋼鋼線工業(株)二色浜事業所 大阪府貝塚市 天井照明の一部をLED照明に更新
高周波鋳造(株) 青森県八戸市 高効率コンプレッサへ更新
神鋼アルミ線材(株) 大阪府堺市 工場照明の一部をLED照明に更新
神鋼リードミック(株) 福岡県北九州市 空調更新
神鋼機器工業(株) 鳥取県倉吉市 照明の一部をLED照明に更新
阪神溶接機材(株) 岡山県岡山市 照明の一部をLED照明に更新
コベルコ・コンプレッサ(株)播磨工場 兵庫県加古郡 事務所・工場照明の一部をLED照明に更新
神鋼造機(株) 岐阜県大垣市 エア漏れの補修
(株)神鋼環境ソリューション 播磨製作所 兵庫県加古郡 コンプレッサの台数制御
照明の一部をLED照明に更新
(株)コベルコパワー神戸 兵庫県神戸市 駆動蒸気削減
ファン動力の低減
(株)コベルコパワー神戸第二 兵庫県神戸市 ファン動力の低減
コベルコ建機(株) 広島事業所 広島県広島市 コンプレッサ電力削減
塗装ポンプ電動化
コベルコ建機(株) 大久保事業所 兵庫県明石市 塗装ライン更新による電力・ガス使用量削減
神鋼汽車铝材(天津)有限公司 中国 工場照明の一部をLED照明に更新
神鋼新确弾簧鋼線(佛山)有限公司 中国 工場照明の一部をLED照明に更新
Kobe Precision Technology Sdn Bhd マレーシア 工場照明の一部をLED照明に更新
空気圧縮機の更新
駐車場に太陽光照明を設置
Kobe Aluminum Automotive Products(KAAP) アメリカ 工場照明の一部をLED照明に更新
神钢汽车铝部件(苏州)有限公司 中国 高効率モーターへの更新による省電力
フォークリフトの電動化
空調機を最新機に更新
純水装置逆洗排水の再利用
KOBELCO ALUMINUM PRODUCTS AND EXTRUSIONS INC. アメリカ コンプレッサのインバータ化
THAI KOBELCO WELDING Co., Ltd. タイ エア漏れ補修
空調機をインバータタイプへ更新
KOBELCO MIG WIRE (THAILAND) Co., Ltd. タイ エア漏れ補修
工場照明の一部をLED照明に更新

CDP気候変動への回答

当社は2009年度から国際的なNGOである「CDP※1」からの調査に回答しています。2023年度の気候変動質問書回答は以下をご参照ください。

  • ※1 環境分野に取り組む国際NGO。企業への環境に係る質問書送付及びその結果を取りまとめ、共通の尺度で分析・評価している。

ページトップへ