水資源の適正管理

基本的な考え方

当社グループの製造事業所においては、冷却用や洗浄用等に多くの水を使用しており、水不足をリスクと認識しています。また激甚化の傾向にある豪雨等の水害については、操業への影響が生じるリスクがあります。さらに、環境法令・条例・協定の違反については、公共用水域の環境や生物等へ影響するリスクがあると認識しています。一方、水を浄化し、安全な水を提供する事業は機会として捉えています。

当社グループにおいては、国内の生産事業所での水不足・水害に関してWRI Aqueductの評価ではリスクは低い結果となっています。ただし、万が一に備え、生産工程において水使用の効率化、水の循環利用・リサイクル率の向上を促進することで、水資源使用量の削減に取り組みます。また、排水リスクへの対応として、生産工程からの排水の特性に適した処理システムで浄化することで、規制を遵守することは勿論、公共用水域への汚濁負荷物質の排出抑制に取り組みます。

マネジメント体制

当社グループの水資源の適正管理に関する取り組み方針や実行計画、取り組み結果については、環境経営・防災部会で年1回以上審議、報告、評価しており、マネジメントサイクルを回しています。重要な事項については、上部組織であるサステナビリティ推進委員会(委員長:取締役執行役員)を経て経営審議会に報告、提言されます。

目標・実績

1.目標

水不足リスク、排水リスクへの取組みとして、以下のとおり目標を設定し、取り組んでいます。

2.実績

過去3年間の取水・排水・リサイクル率データ (単位万m3※1

項目 2019年度 2020年度 2021年度
水源別取水量
淡水(上水及び工業用水)※2 4,899 4,782 5,067
地下水 481 510 525
冷却用海水 267,406 257,072 263,576
取水合計※3 272,786 262,364 269,169
放流先別排水量
河川 169 183 190
海域 270,012 259,652 266,145
下水道 63 56 71
排水合計 270,245 259,891 266,406
排水処理方式別排水量※4
無処理(下水道含む) - 471 426
一次  - 900 902
二次 - 17 21
三次 - 1,433 1,481
淡水の取水量、排水量
取水量 4,899  4,782  5,067 
排水量 2,297  2,820  2,829 
消費量 2,541  2,472  2,763 
総循環水量 117,171 124,441 125,392
リサイクル率※5 96% 96% 96%
  • ※1:グループ全体で水使用量が99%以上を占める範囲を集計しています。(当社生産事業所及びグループ会社の内水使用量が1,000千m3/年以上のグループ会社が対象)

  • ※2:上水及び工業用水の取水源は主に河川です。

  • ※3:各項目は、単位未満を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

  • ※4:一次処理:汚濁物質及び浮遊物質を沈殿等で物理的に除去する方法です。
    二次処理:生物処理により有機物を分解するプロセスです。
    三次処理:一次、二次処理後に残留する懸濁、コロイド及び溶解成分(栄養素、重金属、無機汚染物質、その他の汚染物質)を処理する方法です。

  • ※5:リサイクル率は、(総循環水量)÷(総循環水量+総取水量)で算出しています。総循環水量の算出にあたっては、設備仕様から推測している部分があります。

水質汚濁負荷量データ※1(株)神戸製鋼所及び国内グループ会社)

 項目 目標 2020年度 2021年度
 排水量 - 259,813万m3 266,406万m3
 COD 474t 243t 224t
 総窒素 2,513t 1,915t 1,887t
 総りん 23t 3t 3t
  • ※1:汚濁負荷量の総量規制が適用される地域の10事業所を対象にしています。

当社グループの取組み

水リサイクル率の向上と汚濁負荷量の低減

当社グループの水の管理計画の策定

当社グループ(国内)の主要生産事業所32事業所のうち、44%にあたる14事業所が水の管理計画を策定し、取排水量、リサイクル量を把握し、水資源の適正管理や、環境負荷の低減に取り組んでいます。

事業所での水使用量削減の取組み

加古川製鉄所では、排水口において流量の連続測定を行うなど取排水量を把握するとともに、各生産プロセスからの排水を凝集沈殿、砂ろ過等により浄化した後、再び所内で循環利用するなど、水資源の有効利用を進めており、水リサイクル率は約97%にのぼります。

水の使用量を削減するための外部との協働取組み

日本高周波鋼業(株)が所在する富山県においては、企業に割り当てられる水量は確保されるものの、消雪用水の確保に余裕を持たせるべく、県では毎年12月から2月に、工場・事業場、オフィス、消雪設備管理者等に自主的な節水が呼びかけられます。

日本高周波鋼業(株)は、これに貢献すべく、水量を可能な限り低減するよう取り組んでいます。

水害を中心とした自然災害への備え

事業所により自然災害の種類やリスク程度が異なることから、事業所では所在地する自治体が発行する最新のハザードマップを定期的に確認し、自然災害のリスクに備えています。

水不足・水ストレス評価

毎年、各事業所において次年度の水使用量見通しを算出し、工業用水の契約量等が妥当であるかを判断することで、水量が十分であるか把握しています。また、渇水が予想される場合には、代替手段の確保とそれに伴う生産影響を評価しています。

また、本社ではWRI Aqueductを用いて各事業所所在地域の水ストレス評価を行い、課題があれば関係する取締役・執行役員に報告する体制をとっています。

WRI Aqueduct 2021年度の評価では全ての社内事業所及び国内グループ会社において、Water Stressがhigh以上である地域はなく、課題のある生産事業所はありませんでした。また、供給元からの水量は確保されていることもあり、現状、取水が生産に影響を与えるリスクは低いと考えています。

例えば、加古川製鉄所で使用する水の上流側には、加古川工業用水の安定供給を目的として建設された権現ダム(総貯水量1,112万m3)及び工業用水流量の確保を目的に建設された加古川大堰(総貯水量196万m3)、平荘ダム(総貯水量 940万m3)が存在するため、生産に影響を与えるリスクは低いと考えています。

サプライチェーンの水不足・水ストレス評価

過去の原材料調達地域で発生した水害事例からリスクを特定すると共に、主要原材料調達地域の水リスクをWRIAqueductにより分析しています。これらのリスク分析の結果を踏まえ、原材料調達先の分散化を図り、リスクの低減に努めています。

水関連のリスクに関するコスト及びリスクを軽減するための投資(2021年度)

異常排水の防止や水処理施設の点検・維持等に使用した水質汚濁防止費用及び水処理関連事業の研究開発費用を以下に示します。

項目 2019年度 2020年度 2021年度
設備投資額 費用額(経費) 設備投資額 費用額(経費) 設備投資額 費用額(経費)
水質汚濁防止費用 6.2 49.4  2.1  39.4  0.8  46.6 
水処理関連事業の研究開発費用 7.9  - 5.3  3.2 
  • ※(株)神戸製鋼所の実績。詳細は「環境マネジメント」ページを参照。

法規制への対応

法令により定められた規制値を遵守するよう努めています。また、地元行政との間で協定等により、さらに厳しい規制値を設定している場合は、その値を遵守するよう努めています。

2021年度は水質に関する規制超過が国内で3件、海外で1件発生しましたが、自ら発見し、所管行政に速やかに報告を行い、対応しました。なお、罰金・罰則の適用はありませんでした。

CDP 水セキュリティへの回答

(株)神戸製鋼所は2009年度から国際的なNGOである「CDP※1」からの調査に回答しています。2023年度の水セキュリティ 質問書回答は以下をご参照ください。

  • ※1:環境分野に取り組む国際NGO。企業への環境に係る質問書送付及びその結果を取りまとめ、共通の尺度で分析・評価している。

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