Online edition:ISSN 2188-9013
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正誤表付加(2022年9月6日)
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当社グループの多様な最新機能材料とそれらを支える技術
近年、自動車など輸送機器の電動化・ICT化の進展は目覚ましく、私たちの日常生活においてもDXへの要求がますます高まっています。このような時流の中で、材料や部品に対しても高機能化・複合機能化が求められています。当社グループではこの要求に対応すべく、電気・電子・磁気の分野においても高付加価値材料を創出して社会に提供しています。また、高度な分析・評価技術を保有することにより、これら分野における製品の信頼性・安全性を正しく評価できるように努めています。本特集号では、当社の各種最新機能材料、分析評価技術、最新機能材料を支えるプロセス技術をご紹介いたします。
社会の多様なニーズを支える機能性材料とそのソリューション特集の発刊にあたって
P.01
後藤有一郎
【冒頭】
カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーションなど大きな社会変革が進む中で、産業を支える材料にも新たな機能や特性が求められるようになっている。本特集号では、当社の幅広い製品分野の中で、これらの変革を支える磁性材料、半導体材料、電池材料など「機能性材料とそのソリューション技術」に焦点をあてた。(続きは右下のダウンロード)
純鉄系軟磁性材料の鍛造加工ひずみの影響を考慮した磁場解析による効果検証
P.03
笠井信吾・千葉政道・森田晋也・北山 巧
環境意識の高まりからカーボンニュートラルを目指す動きが拡大している。電動化の進展により使用量の増加が見込まれる軟磁性材料では、磁気焼鈍とよばれる熱処理工程の省略がCO2排出低減対策の一つに挙げられる。当社の純鉄系軟磁性材料ELCH2シリーズは、磁気焼鈍無しでも低炭素鋼の磁気焼鈍材並みの磁気特性を持つため、低炭素鋼の熱処理省略材として期待できる。本稿では、鍛造解析と磁場解析を用いて、ソレノイド鉄心を低炭素鋼の磁気焼鈍材からELCH2の冷間鍛造/焼鈍省略品に変更した場合の部品特性を比較した。その結果、低電流時の電磁力は同等となり、高電流時の電磁力はELCH2磁気焼鈍省略材の方が低炭素鋼の磁気焼鈍材より高くなったので紹介する。
純鉄系軟磁性細線を用いたアキシャルギャップ型モータ
P.07
森田晋也・松本拓也・笠井信吾
圧粉コアを用いたアキシャルギャップモータの性能に及ぼす加工方法の影響
P.12
加藤弘樹・三谷宏幸・漆畑里美・笠井信吾・吉田大祐・北条啓文
アキシャルギャップモータを大量生産する量産段階において、圧粉コアは金型成形により作製されるが、試作段階では単純形状の塊を切削加工して作製・評価されることが多い。このような加工方法の違いから、切削加工した圧粉コア(試作方式)と金型成形した圧粉コア(量産方式)では磁気特性が異なり、モータ特性が変わることが懸念される。本稿では、各コアを使用したアキシャルギャップモータをそれぞれ試作し、モータ性能に及ぼす圧粉コアの加工方法の影響を定量化した。それぞれのモータのトルクが増すにつれ、試作方式のモータ効率は量産方式よりも低下することが明らかになり、その差異要因を特定することにより、圧粉コア加工において配慮すべき点を明確にした。
純鉄系軟磁性鋼板
P.18
土田武広・森田晋也
カーボンニュートラルへの世界的な流れのなか、自動車をはじめとするあらゆる分野において、モータや各種電磁制御部品の高性能化ニーズが高まっている。当社は、冷間鍛造用線材や鉄粉を中心に培ってきた純鉄系軟磁性材料の技術を鋼板に適用し、新たな用途への展開をめざしている。
開発中の純鉄系軟磁性鋼板は、一般の軟鋼板より不純物量を低減し、結晶粒径などの材質を最適化することにより磁気特性を向上させており、とくに高い磁束密度を特長としている。板厚を薄くすることにより、交流磁気特性も改善可能であることから、ソレノイドや電磁リレーなどの直流用途のほか、モータコアなどの交流用途への適用も視野に入れている。
車載端子用すずめっきの性能向上技術
P.22
上田雄太郎・鶴 将嘉
電子電気部品用銅合金の熱的性質2
P.29
野村幸矢
電子電気部品用銅合金の熱的な性質を説明するために、導電率と熱伝導率が比例することを示したヴィーデマン・フランツの法則を詳細に説明するとともに、この法則の適用範囲と銅合金の組織変化による注意点を示した。熱伝導の観点から、はんだ付け性、溶接性、端子の接触抵抗と導電率の関係を解説し、浸漬はんだ付け性と抵抗溶接性は導電率の低い銅合金を用いるほど良好であることを示した。端子・コネクタの接触抵抗と接点発熱温度の関係について、その基本的な考え方を詳細に解説し、ジュール発熱を抑制する銅合金、すなわち導電性のより高い銅合金を用いるほど、接触信頼性は良好になることを示した。
高移動度酸化物半導体a-IGZTOを用いたトップゲート型
薄膜トランジスタの水素プラズマ処理による特性安定性
P.37
西山功兵・越智元隆・寺前裕美・後藤裕史
ディスプレイ分野で高い関心を集めている高移動度酸化物半導体a-IGZTOを用いたトップゲート型薄膜トランジスタに対して、低抵抗ソース・ドレイン形成プロセスに対する水素プラズマ処理の有効性を明らかにした。水素プラズマ処理によりa-IGZTO膜のシート抵抗は減少し、この低抵抗状態は熱処理に対して安定性が高いことを示した。また、X線光電子分光分析から、a-IGZTOが物理的にスパッタリングされていることを示唆するOH基がアルゴンプラズマ照射後に観測されるが、水素プラズマを照射した場合にはa-IGZTOが水素ラジカルによって還元され、金属成分が生じる還元反応であることが示された。この還元反応により、水素プラズマを用いたトップゲート型TFTの熱処理に対する安定性が高められたと考えられる。
SiCパワーデバイスのマルチスケール分析
P.42
中尾博樹・猪口憲一・佐々木美幸
パワーデバイスには従来はSiが使用されていたが、より高効率な次世代パワー半導体としてSiCやGaNが実用化され、またGa2O3の開発も進められている。その中でもSiCは最も大きな市場を有しており、自動車・電装などに使用されている。SiCパワーデバイスの一つであるトレンチ構造のSiC金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide
Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)は、従来のプレーナ構造のものに比べて小型・高性能化が可能なことから主流になりつつある。
本稿では、トレンチ構造のSiC MOSFETについて、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)、透過電子顕微鏡(Transmission Electron
Microscope:TEM)、ラマン分光による分析事例を紹介する。複数の分析手法を組み合わせることにより、光学顕微鏡レベルからnmレベルまでのマルチスケールでの構造、組成、欠陥の評価を行った。
シリコンウェーハ用高精度ナノトポグラフィ測定技術の開発
P.48
原野敬久・甘中将人・田原和彦・松岡英毅・篠田達昭
半導体シリコンウェーハ製造において、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程で加工される STI(Shallow Trench Isolation)の品質はナノトポグラフィの影響を強く受けることが知られており、半導体素子の微細化に伴い高精度のナノトポグラフィ測定装置が求められるようになっている。近年は直径300mmのシリコンウェーハ使用が主流であり、大型シリコンウェーハは無重力条件下で30μm程度の反り(warp)形状を持つ。そのため、光の波長を使った形状測定手法であるフィゾー干渉計によりウェーハ全体で干渉縞を写すと、縞模様が密となり過ぎて測定ができなくなる恐れがある。そこで、測定範囲を分割して画像取得することにより、通常発生しうる反りに対応させ、300mmシリコンウェーハの形状測定が可能なナノトポグラフィ測定システムを開発した。
機能性セラミックス・炭素系材料の成膜・装置技術の展開
P.54
高橋哲也・久次米 進・磯村良幸・二井裕瑛
真空成膜技術の代表的手法の一つであるAIP(Arc Ion Plating)法で形成される皮膜の特性は、アーク蒸発源で生成されるプラズマ特性に依存する。最新の蒸発源では、優れた表面粗度を有する窒化物系皮膜の形成が可能であり、皮膜の応力制御範囲が広いため、厚膜化にも適している。本稿では、最近の装置技術の展開として、少量多品種の成膜処理に適した小型成膜装置の機能と基本性能について概説する。また、AIP法による水素フリーDLC(Diamond-Like Carbon)専用のカーボン蒸発源に関して、その特徴と膜質におよぼす成膜条件の影響についても紹介する。
高電流分散Sn法による超電導マグネット向けNb3Sn線材
P.59
川嶋慎也
本稿では、分散Sn法によって臨界電流密度(JC)を高めた、高性能なNb3Sn超電導線材について報告する。SnおよびTiの拡散を均一化し、さらにTiの添加量を改善することにより、温度4.2K、外部磁場16Tにおいて1,100A/mm2のJCを達成した。CERN(欧州原子核研究所)で計画されているFCC(Future Circular Collider)の目標は、4.2K、16TでJCが1,500A/mm2と設定されている。この目標達成を目指して、複数あるNb3Snの製法の中から分散Sn法を選択した。この製法は内部Sn法の一種であり、断面積内に多くのNbとSnを配置できることから、大量のNb3Snを生成することで高いJCを得ることが期待できる。本研究により、Snの拡散状況と添加元素を制御することにより、Nb3Sn組成が均一に微細な組織となり、16Tにおいて高いJCを達成することが可能となった。
二次電池の技術動向と分析・評価技術
P.64
坪田隆之・阿知波 敬・林 良樹・森 拓弥・大園洋史・常石英雅
走行中CO2削減のために、自動車のEVシフトが世界的に加速している。再生可能エネルギーの導入も拡大しており、二次電池の需要が高まっている。このため、EVや定置型蓄電池で使用されるリチウムイオン電池に対して, さらなる高エネルギー密度化の検討が行われている。エネルギー密度をよりいっそう向上できる全固体電池、資源確保の観点から希少金属であるリチウムに替えてナトリウムを使用したナトリウムイオン電池などの新型電池の開発も活発である。当社は「リチウムイオン電池、全固体電池、ナトリウムイオン電池の試作」、「電池特性評価技術」、「電極内の反応分布解析技術」、「酸化還元反応解析技術」、「リユースのための非破壊劣化診断技術」などの評価・解析技術により電池開発を支援しており、カーボンニュートラルの実現に貢献している。
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正誤表付加(2022年9月6日)
固体高分子型燃料電池セパレータ用材料の最近の開発動向と当社の取り組み
P.70
佐藤俊樹
固体高分子型燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell:PEMFC)は、輸送機用のクリーンなエネルギー源として期待されている。PEMFCの重要部品であるセパレータはPEMFCの耐久性、発電性能、コストに大きく影響するため、セパレータの耐久性や性能を向上させてコストを下げるための多くの努力がなされている。当社も2004年からセパレータの耐久性と特性に関係する耐食性と界面接触抵抗(Interfacial Contact Resistance:ICR)の向上を狙って、従来にない皮膜とプロセスによるコーティングチタンの開発に取り組んでいる。本稿では、耐食性とICRに絞ってセパレータ材料として検討されているカーボン-樹脂複合材とコーティング金属の最近の開発を概観する。さらに、当社のチタンセパレータ用皮膜開発のこれまでの取り組みについても述べる。
P.77
神戸製鋼技報掲載 社会の多様なニーズを支える機能性材料とそのソリューション関連文献一覧表
(Vol.62, No. 2 ~Vol.71, No. 1 )
耐食性・導電性と成形性に優れた燃料電池セパレータ用NCチタン
P.78
長田 卓
P.82
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