世界最高磁場のNMR装置(1020MHz)が「市村産業賞」を受賞

2016年4月25日

株式会社神戸製鋼所

当社、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)、国立研究開発法人理化学研究所(理研)、(株)JEOL RESONANCE(日本電子(株)の子会社)の4社は、2015年7月に開発完了済みの「世界最高磁場のNMR装置※1(1020MHz)」が公益財団法人新技術開発財団主催の第48回市村産業賞において「貢献賞」を受賞しました。本日、帝国ホテルにて表彰式と祝賀会が執り行われました。

賞の概要

公益財団法人新技術開発財団は、リコー三愛グループの創始者である市村清氏によって創設され、科学技術の研究開発に対する助成、優れた科学技術の顕彰および国際交流の促進、科学技術に関する創造性の育成などによって科学技術の振興をはかることにより、我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に寄与する事を目的としています。
本賞は、優れた国産技術を開発することで産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループを表彰するために1968年に創設されました。本賞、功績賞、貢献賞の3カテゴリーに分かれています。選考に当たっては、主に以下3項目の観点から選出されます。

  1. 独創的・画期的で世界的に見て高い水準にあるもの
  2. その技術の実用化で新たな産業分野の創生や市場の拡大に効果が顕著なもの
  3. 産業・社会の発展に先導的な役割を果たし、波及効果が大きく期待できるもの

受賞製品・技術の背景、概要

NMR装置は、発生させる磁場が強磁場である程より速く正確な分析が可能となります。従来の最高磁場は2009年開発のドイツ製1000MHzでした。使用された中心部品であるNMR磁石※2は、ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)などの金属系超電導体で作った線材を多層コイル構造に巻いて作られていました。しかし、これらの金属系超電導体では理論上1000MHzの磁場の発生が限界とされており、これを越えるには金属系超電導体に代えて、セラミックス系の高温超電導体を用いる事が唯一の解決策である事が1980年代より分かっており、既に電導体が発見されていましたが、セラミック系は割れやすい、線材の継ぎ目の接続技術が無いなど様々な技術的な課題からNMR磁石への応用はこれまで実現していませんでした。
その様な中、当研究チームは下記3点の新たな技術開発により、セラミックス系高温超電導体を用いたNMR磁石の開発に成功し、世界最高磁場となる1020MHzを達成しました。

今回、世界で初めてセラミックス系超高温超電導線材の使用に成功し1000MHzを突破した事で、今後、研究が進むと1200MHz、更には1500MHz達成も不可能では無いと言われています。その様な事から、今回の1020MHz達成は更なる高磁場への扉を開け、新たなステージに進んだと考えられます。

今回の開発により、今後応用が期待される分野としては、主に以下が挙げられます。

当研究チームは、NMR装置の高磁場化による更なる分析能力の向上を目指し、今後も研究開発を進めて参ります。

※1:NMR装置(nuclear magnetic resonance)
物質へ磁場をかけ、発生した原子核の磁気的エネルギーを精密に測定する事により、分子構造を調べる事が可能な装置です。磁場が高い程感度が高くなり、従来は困難であった複雑な構造の解析することが可能です。具体的な使用例は、人体内部の疾患や組織の状態を解析する為に使用されるMRIや水素の比率の差異を分析する事が可能なため、食品の産地証明や化学薬品の中にある分子の特定・分析等があります。

※2:NMR磁石
NMR装置における中心部分です。超電導線を多層巻きにしたコイルに電流を通し、中心位置に強磁場を発生させるための装置です。他の磁石と比較し、磁場の安定度と均一度に優れます。

電子技術研究所超電導研究室長 斉藤一功

NMR装置外観

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