神戸製鋼所企業倫理綱領


2003年3月改定

『企業行動基準』

 『企業倫理規範』を企業活動の中で具体化していくために、以下の16項目に及ぶ『企業行動基準』を策定しました。『企業倫理規範』は当社および役員・社員が企業活動を行ううえで、遵守すべき普遍的な考え方を定めていますが、『企業行動基準』ではそれらを日々の業務活動の中で実践できるよう、とりわけ重要な行動の基準となるべき内容について定めています。

第1 事業活動について

1. 優れた製品・サービスの提供と安全性に関すること
 当社が提供する製品やサービスの価値が社会から求められているものであることが、当社の経済的な存立の基盤であることは言うまでもありません。この基盤を強固なものとするため、製品開発力や製造技術力の向上に努め、新たな価値を創造していきます。
 また、優れた製品やサービスであるためには、そのもの自体が安全であり、生命、身体や財産に対して害を及ぼさないことが当然の前提となります。当社は、この前提を満足させるため、最大限の努力を惜しみません。

(1)顧客ニーズの的確な把握
 社員一人一人が常に市場の声に耳を傾け、顧客のニーズに敏感に反応するという心構えを持つことが必要です。特に、当社の場合、一般消費者向けの製品があまり多くないこともあり、一部の営業担当以外の社員は顧客ニーズの取り込みに消極的になりがちであることを認識し、社員全員で顧客ニーズの的確で迅速な取り込みに積極的に行動しましょう。

(2)アフターサービス、ユーザーサポート体制の充実とマニュアル化
 次の注文に結びつけるためにも、また、新たな製品開発に役立てるためにも、販売した製品・サービスのアフターケアが重要であることは言うまでもありません。このため、各部門においては、

  • サービスマニュアルの充実
  • サービスネットワークの充実
  • ユーザーサポート体制の充実
に取り組みましょう。

(3)安全性に関する法令、ガイドラインの遵守
 製品の欠陥により利用者の生命、身体や財産に被害を生じさせるようなことがあってはなりません。製品の安全性を確保するため、研究段階から設計、製造、流通および販売段階にいたるまで、製品の安全性に配慮することが必要です。また、法令や公的なガイドラインが設けられている場合には、厳密にそれらを遵守しなければなりません。

(4)安全性に関する自主基準の制定と遵守
 法令や公的なガイドラインが設けられていない分野においては、各部門において実態に即して製品の安全性に関する自主基準を策定するとともに、それを遵守しなければなりません。

(5)わかり易い取扱説明書の作成
 使用方法を誤ったために事故が起こることはしばしばあることです。また、危険部分に適切な警告表示をすることによって事故を防止することもできます。製品の取扱説明書は、わかり易く、読み易くすることで、利用者が正しい使い方ができるよう心がけましょう。

(6)被害拡大の防止
 不幸にして、製品に欠陥が発見された場合は、被害の拡大を防止するための迅速な措置を取らなければなりません。製品の利用者へ情報を速やかに伝え、必要に応じて製品のリコール等の措置をしなければなりません。被害の拡大を防止することが当社に課せられた責任であり、この責任を全うすることが極めて重要であることを認識しなければなりません。

(7)トラブルの再発防止
 製品に欠陥が生じた原因を究明し、これを除去しなければ過ちが繰り返されることになります。事故・トラブルの原因究明と、その記録が適切に蓄積され、利用されることで、その後の同様の事故・トラブルが防止されることになります。各部門の責任者は、こうした情報が迅速に利用できる体制の整備を心がけましょう。

2. 取引先・関係先との健全で良好な関係に関すること
 当社は、内外の商取引において不当な利益を与えたり、得たりすることを厳に戒めていきます。役員、社員は、世間から誤解や不名誉な評価を受けることがないよう、正しい判断と節度ある行動をとりましょう。

(1)販売取引先との関係
 販売先に対する接待や贈答については、社会的常識の範囲内で行わなければなりません。また、個人的・恣意的なリベート(値引き等)やコミッション等の便宜供与は絶対に行ってはなりません。会社として正式に行う便宜供与は、あくまでも各部門における正規の決裁ルールに則って行う必要があります。

(2)購買先との関係
 購買先の選定にあたっては、価格、品質、納期等合理的な基準に基づいて行う必要があります。購買先からの接待や贈答は、社会的常識の範囲内とし、その事実は必ず上司に報告をしなければなりません。社会的常識を超えるものは、時機を失せず辞退、返却をしなければなりません。

(3)関係会社・協力会社との関係
 関係会社や協力会社との取引においては、第三者との公正で透明な競争をふまえた取引条件と比較して、不当に異なるようなことのないようにしましょう。また、接待や贈答についても、社会的常識の範囲内としなければなりません。

(4)官公庁・地方自治体等公共団体との関係
 官公庁・地方自治体等の職員との関係では、国家公務員倫理法(1999年8月13日公布、法律第129号)、国家公務員倫理規程(2000年3月28日、政令第101号)を尊重しなければなりません。

3. 公正で自由な競争の維持促進に関すること
 独占禁止法は、公正かつ自由な競争の維持、促進を通じて消費者利益を保護し、国民経済の健全な発展を確保することを目的としています。特に、競争事業者間で価格や販売数量を拘束しあうカルテル行為(入札談合もそのひとつ)は、会社の名誉を傷つけるばかりでなく、行政制裁である課徴金の賦課はもとより、刑事罰や住民訴訟等の民事損害賠償の対象にもなり、違反企業がこうむる損失は計り知れません。
 当社は、その事業活動にあたり日本国内はもとより諸外国の独占禁止法を守っていきます。また、購買部門においても優越的地位を利用して取引先に不公正な取引を要請する行為等は下請法で禁止されており、これも同様に遵守していかなければなりません。

(1)独占禁止法の遵守
 独占禁止法の遵守の徹底を図るため、1999年10月、当社は社内規程「独占禁止法遵守規程」を制定しました。この規程では、当社の事業活動を適正なものとすべく、事業活動についての事前審議や、法務部による事後監査を定めるとともに、独占禁止法違反者に対する懲戒処分を定めています。社員は、業務遂行にあたっては、独占禁止法を遵守し、1999年11月に配布した「独占禁止法遵守マニュアル」の記載内容を十分に理解して行わなければなりません。

(2)下請法の遵守
 購買担当者やその関係者は、1999年5月に制定した「下請法遵守規則」を遵守し、各事業所に設置されている下請法遵守委員会の活動に前向きに取り組む必要があります。また、業務遂行にあたっては、2000年3月に配布した「下請法遵守マニュアル」の記載内容を十分に理解して行わなければなりません。

4. 知的財産権の保護に関すること
 知的財産権とは、人の知的活動によって生まれた創作物や営業上の信用に関する権利のことです。法律によって、明確に権利として定められている特許、実用新案、意匠、商標等の工業所有権、芸術作品やコンピューターソフト等の著作権の他、法律では具体的で明確な規定はありませんが、各社が秘密として管理しているノウハウ、技術・営業情報等の企業秘密がこれに含まれます。
 知的財産権は、今日の経済社会においては、価値を生み出す源泉であり、世界的にこれを幅広く保護しようという動きが強まっています。社員は、当社の知的財産権の創造と保護に全力を尽くさなければなりません。また、他者の知的財産権を不当に侵害しないよう十分な注意を払う必要があります。

(1)当社に属する企業秘密の取り扱い
 企業秘密にはそのものに財産的価値のあるものとそうでないものがありますが、企業秘密が外部に漏洩されることで、当社の利益や信用等が損なわれることがあります。その形態は文書に限らず、電子媒体や物品自体、その他口頭によって伝達されるものを指しています。企業秘密の管理上重要なことは、どの情報を秘密として管理すべきかをきっちりと区分し、第三者にも分かるような形でその機密レベルを表示することです。当社規程「企業秘密管理規程」を参照し、業務はこれに準拠して行わなければなりません。

(2)他者の知的財産権の取り扱い
 当社は、他者の知的財産権について、自社のものと同様に尊重します。また、不正に入手された他者の企業秘密に触れると、知的財産関連法規に抵触することは当然ですが、加えて不正競争防止法違反や民事上の不法行為とされる可能性もありますので十分な注意が必要です。

第2 会社と社員の関係について

1. 社員の人格・個性の尊重に関すること
 当社は、社員一人一人の人格や個性を尊重しつつ、豊かさと達成感が実感できるような人事制度や労働条件の維持向上に努めます。また、成果・業績主義に基づく客観的で公正な人事評価を行うとともに、専門性と創造性に富む個性豊かな人材を育成します。

2. プライバシーの尊重に関すること
 当社は、社員一人一人のプライバシーを尊重し、個人の情報を扱うにあたっては慎重かつ細心の注意を払い、その適正な管理に努めます。

3. 人権の尊重とあらゆる差別的取り扱いの禁止に関すること
 当社は、人種、信条、肌の色、性別、宗教、国籍、言語、身体的特徴、財産、出身地等の理由で嫌がらせや差別を受けない健全な職場環境を確保します。特に、今日的に社会問題化している性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)については会社として容認しません。問題発生時には、迅速に調査し、被害者の救済と再発防止に向けた断固たる処置をとっていきます。

4. 安全で健康的な職場環境の確保に関すること
 当社は、すべての事業活動をはじめ製造機械、部品、資材等の使用、廃棄に至る全てのプロセスにおいて人の安全、健康の確保を最優先します。そのため関連する各種の法令の遵守をはじめとして社内の規程、ルール、標準等を遵守します。

(1)労働災害の撲滅
 人の安全と健康は何物にも換えることのできない価値です。特に、厳しい作業環境にある製鉄所や各製造所、建設現場等の職場を擁する当社にとって、安全で健康的な職場環境の確保は、大きな課題です。幸いなことに、当社ではこれまで重大な事故が頻発するようなことはありませんでしたが、これからもその歴史の上に継続的な改善を積み重ねていくことが必要です。労働災害の撲滅には、関係法令はもとより、「安全衛生管理規程」、「安全衛生管理組織規程」等のルールを遵守することが大前提です。また、日々の業務遂行において、危険性と有害性を未然に察知していく感性を磨いていくことと、それらの排除措置が組織的に必要となります。

(2)環境保全と防災
 環境関連法令の遵守は、地域社会に根付く企業の責務です。事業所および地域の環境保全のため、「環境管理規程」を再度チェックし、各自の業務遂行に活かしましょう。  災害の予防や、災害発生時の被害拡大の阻止のため、「防災管理規程」、「危険物災害予防規程」、「消防規程」等の防災関連規程を社員一人一人が今一度チェックし、業務遂行に役立てていきましょう。

第3 会社と社会の関係について

1. 法令の遵守に関すること
 当社は、法令や社会的規範、社会的良識に基づいた企業活動を行います。独占禁止法等については前述のとおりですが、とりわけ刑罰が適用される重大な違反行為は、会社存亡の危機に直結しかねないことを、社員の一人一人がしっかりと認識し、そのような行為は絶対に行ってはいけません。特に、次のような法令の遵守が企業に強く求められていることを厳粛に受け止め、遵守のための真摯な取り組みが求められます。

(1)外国為替及び外国貿易法
 「安全保障貿易管理プログラム規程」を遵守し、輸出業務に関係する者は、国際情勢の動きに対して、常に鋭敏な感覚を養うことが必要です。

(2)証券取引法
 「インサイダー取引防止規程」を遵守しなければなりません。投資家の投資判断に影響を及ぼすような重大な会社情報が公表される前に、その情報を知って株式等を売買するような行為は決して行ってはなりません。

(3)政治資金規正法および公職選挙法
 政治資金規正法および公職選挙法を遵守し、企業としての政治活動に関する公明性と公正さを確保していきます。

(4)贈収賄等をめぐる禁止法令
国内外の公務員の職務遂行に関して、不正な利益の供与等は決して行ってはなりません。

2. 反社会的勢力との絶縁に関すること
 当社は、社会的秩序や企業の健全な活動に悪影響を与えるあらゆる個人・団体とは一切関わりません。特に、経営に携わる者はこのような勢力を恐れることなく、率先して襟を正した行動をとります。
 暴力団等が、製品クレーム等種々のきっかけを作って関わってきたり、脅しをかけて不法な金銭的利益を得ようとする行為を民事介入暴力といいます。当社は民事介入暴力に対しては、「恐れない」「金を出さない」「利用しない」を原則として、社員一人一人を孤立させず組織的に対応していきます。また、最大限、警察や法律家等の支援を得ていきます。社員は2000年5月に配布した「企業対象暴力対策マニュアル」を精読し、実践しましょう。

3. 情報の開示に関すること
 当社は、企業秘密や契約上守秘義務を負っている情報を除き、社会が真に必要としている情報を適時に適切な方法で開示することで、常に社会とのコミュニケーションを行い、企業活動を社会の常識から決して逸脱させず、公正で透明性のあるものに保ちます。社会が真に必要としている情報とは、単に法制上開示が必要とされる情報にとどまるものでないことは言うまでもありません。顧客、取引先、社員、株主、投資家、地域社会等がそれぞれの立場で当社に関わる者として必要とする情報全般を主体的に発信していきます。社員は、日ごろのコミュニケーションを通じて、それぞれの立場の人がどのような情報を必要としているのかを的確に把握し、営業、購買、事業所の総務等の各担当部署を通じて、誠意を持って対応しましょう。また、情報開示の要請等に対しては、次の考え方で対処しましょう。

  • 正当な理由のない限り断らない
  • 事実に反することは決して言わない
  • 言えないことは、はっきり言えないと言う
  • 相手によって対応を変えたり、開示する内容を使い分けたりしない

4. 地球環境の保全に関すること
 当社は、その事業活動に必要な資源・エネルギーを含め、この地球から様々な恩恵を受けており、地球環境をより良い状態に保全することが自らの義務であるとの自覚を持つとともに、この取り組みが重要な経営課題の一つであると位置付けています。従って、環境関連の法令を遵守するのはもちろんのこと、事業活動や提供する製品・サービスが地球全体の環境にできる限り負荷を与えないよう最大限の努力をします。そのため、「環境経営委員会」(1992年に設置した地球環境委員会を2002年に発展的に改組)を中心に、1993年に策定した「地球環境保全基本方針」の下、省エネや廃棄物の削減、リサイクルを徹底して行うとともに、地球環境保全に役立つ技術の開発と製品開発に努めます。今後も次のような事項を中心に地球環境保全活動を継続・強化していきます。

  • 社員教育の徹底
  • 事業所やオフィスでの省エネ、廃棄物の削減およびリサイクルの徹底
  • ライフサイクルで評価した環境配慮型製品の開発
  • 環境関連情報の開示

5. 地域貢献に関すること
 当社は、地域社会との密接な連携と協調を図り、良好な関係を維持します。また、当社は、1995年の阪神・淡路大震災の被災企業として、社会から受けた様々な支援を決して忘れてはなりません。今後不幸にして発生するかもしれない災害等に対しては、地域社会との密接な連携を図り、救援・防災活動を積極的に行います。また、地域社会との交流を主体的・積極的に行っていくため、以下を具体化していきます。

  • 体育館、グランド等の会社施設の開放
  • スポーツ、文化、芸術活動等に関わる各種貢献
  • ボランティア活動に対する社内環境整備

6. 海外における事業活動に関すること
経済のグローバル化・ボーダレス化が進むなか、当社も海外での事業活動を円滑に展開していくには、国際ルールや現地法の遵守はもとより、現地の習慣・文化を尊重しつつ、現地の発展に貢献することが大切です。また、当該国の法令を十分調査し遵守するだけでなく、不正競争防止法(外国公務員への利益供与の禁止)や外国為替及び外国貿易法などの国内法を現地企業が理解しておくことも必要です。当社は、現地が抱える社会事情や固有の問題を理解し、文化や慣習に十分配慮した事業活動を行っていきます。さらに、原料・部品の現地調達など現地企業との相互協力関係を緊密化したり、技術指導や技術移転を積極的に行ったりすることにより現地産業の発展・育成に努めます。

7.  企業倫理の徹底に関すること
企業として、倫理の徹底を推し進めていくには、役員ならびに従業員一人一人が常に企業倫理を意識して行動できるような環境づくりに向けた不断の努力が必要です。そのために当社として、以下のような制度・組織を設けます。

(1)  全社的な取り組み体制の整備
●全社的なコンプライアンス活動を推進する常設のコンプライアンス委員会を設置する。コンプライアンス委員会は独立した取締役会の諮問機関であり、コンプライアンスに関する方針、監査、コンプライアンス違反事例についての対応策・再発防止策を審議・策定したうえ、これらを取締役会に上程し、さらに、重大な法令違反について、違法行為是正のため取締役会に対して勧告する権限を有する。
●コンプライアンスに関連するコードの策定、体制の整備、教育の実施など全社コンプライアンス活動の取り纏めを行うコンプライアンス統括室を設置する。また、コンプライアンス統括室は、コンプライアンス委員会の事務局を担当する。

(2)  内部通報制度の整備
●コンプライアンス違反についての内部通報制度として、社外の弁護士を受付窓口とする「内部通報システム」を設置する。

8. 経営トップによる取り組みに関すること
経営トップは、企業倫理綱領に反するような事態が発生したときには、被害の拡大防止と社会的信頼を維持するため、強いリーダーシップを発揮しなければなりません。具体的には、経営トップ自ら指揮をして、速やかに事実調査、原因究明、再発防止策の策定などを行い、企業としての責任ある適切な対応を打ち出します。また、人の健康または安全が危険にさらされる場合には、社会に対して明確な説明を迅速かつ的確に行います。さらに、責任の所在を速やかに明らかにし、社会的に十分理解される形で厳正な処分を行うこととします。事案によっては、経営トップとしての責任を十分認識したうえで、自らに対し厳しい処分を課すこととします。

(注)この『企業行動基準』の制定、廃止および変更は取締役会の決議による。


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