2024年10月15日
株式会社神戸製鋼所
この度、当社100%米国子会社であるミドレックス社が提供するMIDREX FlexTM直接還元鉄プロセス※1(以下、MIDREX FlexTM)が、ドイツのStahl-Holding-Saar (SHS) グループのAktien-Gesellschaft der Dillinger Hüttenwerke及びROGESA Roheisengesellschaft Saar mbH (以下、Dillinger Group)に採用される事が決定し、10月11日にドイツのDillinger Group本社にて契約調印式が開催されました。
今回受注したMIDREX FlexTMは、ミドレックス社とPrimetals Technologies(以下、Primetals社)により、Dillinger GroupのDillingen製鉄所に建設され、その生産能力はHot DRIとCold DRI※2合わせて200万トン/年を計画しています。
MIDREX FlexTMは、天然ガスから水素へと柔軟に還元剤を転換できるプロセスで、トランジション期間(段階的なCO2排出量の削減)に対応可能であり、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献します。
本プロジェクトでは、操業当初は還元剤として天然ガスと水素を混合して使用する予定で、高炉ベースの製鉄に比べて50%以上のCO2排出量削減が可能です。更に、直接還元鉄プラントと電気炉間をHot Transport Conveyorという特殊な装置で接続することにより、Hot DRIを、その温度を保ったまま次工程の電気炉へ直接投入する事が可能であり、電気炉での省エネ性と生産性に優れたプロセス・プラントとなっております(電気炉は、今回のMIDREX FlexTMと同時にPrimetals社によりDillinger社に提供される予定)。
またCold DRIは近郊のVölklingenにあるSHSグループ傘下のSaarstahl社にも供給される予定です。
Dillinger Groupは2045年までにカーボンニュートラルを達成することを発表しており、Dillingen製鉄所における現在の高炉ベースの生産ラインをグリーンスチール生産ラインに置き換えるプロジェクトを開始しています。今回のMIDREX FlexTM採用もその一環であり、同社のCO2排出量削減に向けて重要な役割を担っております。また既に同グループは、本目的のためにドイツ政府、ザールラント州からの補助金を得ており、それらについてEUから承認を得ていることも公表されています。
ミドレックス社が持つMIDREX®プロセスは、世界の還元鉄生産量の約80%(天然ガスベースの直接還元鉄)を占める直接還元法のリーディングプロセスです。当社は、天然ガスを改質したガス(CO+H2)を還元剤とするMIDREX NGTM※3、天然ガスを水素に柔軟に置き換えることが出来るMIDREX FlexTM、100%水素を還元剤とするMIDREX H2TM※4という3つのプロセスを保有しています。当社及びミドレックス社はこれらプロセスの提供を通じて、世界の鉄鋼業界のカーボンニュートラルへの取り組みに貢献し、持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。
当社グループは、KOBELCOならではの技術・製品・サービスのかけ算を通じて、社会課題の解決に挑み続けています。今後も、すべてのステークホルダーの皆さまにとって“魅力ある企業”へと変革をすすめ、「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界。」の実現を目指してまいります。
※1:今回採用されたMIDREX FlexTMは、MIDREX NGTMの技術をベースに、還元に利用する天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることができるプロセスで、MIDREX NGTM直接還元鉄プラントに比べ、更なるCO2排出量の削減が可能。
※2:鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。炉内で還元したDRI(Direct Reduced Iron)を、冷却せずに炉から排出したものをHot DRI(HDRI)、冷却したものをCold DRI (CDRI)という。
※3:従来の天然ガスベースのMIDREX NGTM直接還元鉄プロセスは、世界で90基以上が稼働しており、天然ガスを改質した水素リッチガスを還元剤として用いることにより、従来の高炉法に比べ製鉄工程でのCO2排出量を最大40%削減することが可能。
※4:100%水素を還元剤としたMIDREX H2TM直接還元鉄プロセスは、ほぼCO2排出量ゼロで還元鉄を生産することが可能。ミドレックス社はスウェーデンのH2グリーンスチール社(2024年9月に社名をStegraに変更)向け世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機を2022年に受注し、現在プロジェクト遂行中です。
契約調印式の様子
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