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プレスリリース

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高機能抗菌めっき技術『KENIFINE®(ケニファイン)』の植物プラントへの初採用について

~ 農作物の水耕(養液)栽培における、藻や微生物を抑制する新抗菌技術 ~

2014年1月22日

株式会社神戸製鋼所
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
森村商事株式会社

概要

株式会社神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)は、同社が開発した高機能抗菌めっき技術「KENIFINE®(ケニファイン)」(以下、ケニファイン)の様々な用途を探求することで、現在、飲食品や医療福祉、電機・空調、一般消費財、漁業などの分野で、優れた抗菌技術として利用を広めています。
昨年5月に発表の通り、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所および森村商事株式会社と共同で農業分野におけるケニファインの抗菌性や防藻性を検証し、水耕(養液)栽培の衛生管理手段として有効であることを確認しました。

このたび、兵庫県伊丹市で、地元経済の活性化や日本の食料自給率の向上などを目指して植物プラントを新設した田中住建株式会社グループの株式会社TJクリエイト(以下、TJクリエイト)殿に、ケニファインを農業分野としては初めてご採用頂きました。同社では、本格的な植物プラントを建設するにあたって約1年間テストプラントで食用野菜などを栽培されています。新鮮な野菜を洗わずにそのまま食べることを目指し、微生物に対する抗菌やその繁殖の温床となる藻の抑制のため、植物プラント内の床や壁などにケニファイン水系コート注1)を塗布されています。今後は、その有効性と使用条件を検証しながら、使用範囲の拡大を進めて頂く計画です。

TJクリエイト殿植物プラント

TJクリエイト殿植物プラント

ケニファイン使用箇所例

ケニファイン使用箇所例

今後、ケニファインの農業現場での採用を拡大していくためには、このたびのTJクリエイト殿のような本格的な事業規模での現場検証試験を経るなどのいくつかの段階を踏む必要がありますが、その動向には全国の農作物生産現場や植物プラントの関係者から注目される可能性があるものと考えています。

(1)高機能抗菌めっき技術『KENIFINE®(ケニファイン)』について

  • ケニファインとは、(株)神戸製鋼所が独自開発した高機能ニッケル系合金めっき技術で、同社が得意とする各種合金開発技術の一つです。同社はライセンスビジネス(めっき業者もしくは自社にめっきラインを有するメーカーに技術を供与)を実施しています。
  • 従来の抗菌技術(抗菌塗装、抗菌ステンレスなど)に対して10倍以上の滅菌スピードとその後の菌の増殖を抑制する効果があります。かびの生育を抑制する作用は、銀系抗菌剤の50倍以上です。抗ウイルス(SARS系コロナウイルス、A型インフルエンザウイルスなど)や防藻、サケマス魚卵のミズカビ抑制などの効果も認められています。
  • 1996年7月、大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O157による大規模集団食中毒事件を機に、その対策技術として、同社技術開発本部の中の材料研究所と(当時の)生物研究所と共同で開発をスタートさせたのがきっかけです。
  • 開発が完了した2001年に最初の技術供与先が決まり、2002年より量産を開始しました。その後、めっき技術の改良(耐変色処理や粉末化技術の開発、樹脂への適用化など)を行ない、現在10社にライセンス供与しています。
  • すでに、食品・飲食産業や医療関係、家電・エアコン部品、漁業用金網などの産業分野や、台所用品、グルーミンググッズなどの一般消費財、さらにはアミューズメント分野などの民生用途で採用されています。

補足

注1)ケニファイン水系コート:ケニファイン粉末を水溶性溶液と混ぜることで、スプレーでの塗布を可能とした抗菌コート剤。

(2)ケニファインの水耕(養液)栽培の衛生管理手段としての有効性について

  • 「水耕(養液)栽培」は、土を使わずに栄養源を培養液で供給して農作物を栽培するものです。従来の「土耕栽培」で問題となっている天候や土壌などの自然環境の影響を受けにくく、高品質で安定な生産技術として定着しています。ところが、水耕(養液)栽培では、培養液中に病原菌が侵入すると防除手段がないために、植物病原菌によって根腐病や萎凋病などが発生し、施設内の作物が全滅するなどの被害がしばしば発生しています。資材等を消毒しても再発することが多く、水耕(養液)栽培における培養液殺菌とともに、使用する資材に病原菌が付着、残存を防止する抗菌化が必要となっています。
  • 水耕(養液)栽培では、栽培用資材の表面に病原菌や藻などが付着し、病害発生や病原菌を媒介する昆虫の温床となっていることから、代表的な植物病原菌と藻の発生に対するケニファイン効果を調べました。その結果、ステンレス基材に『ケニファインめっき』することで、植物病原菌糸状菌であるトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum 小型分生子)やトマト根腐病菌(Pythium aphanidermatum 遊走子)の発芽を抑制できることが確認されました。『ケニファイン粉末』を用いても、同様の効果が見られました。また、ロックウールによるレタス栽培において、ロックウール表面に適度な濃度の『ケニファイン水系コート』することで、レタスの生育に影響を与えずに、マット表面の藻の付着を抑制できることがわかりました。
  • 最近は、食の安全性指向から、無農薬栽培に取り組む生産者も多くなってきており、農薬を使用しない防除対策や栽培管理法がますます重要になってきています。今後、ケニファインが植物プラントを始めとする水耕(養液)栽培分野における新しい衛生管理手段として利用が期待されています。

(ご参考)

株式会社TJクリエイト殿について

社長:
田中弘章
資本金:
5,800万円
従業員数:
25名
本社所在地:
〒664-0008 兵庫県伊丹市荒牧南3-4-15
野菜プラント所在地:
〒664-0001 兵庫県伊丹市荒牧5-15-6
事業内容:
野菜等の生産・生産指導、植物プラントの企画・設計・施工
URL:
http://tj-create.co.jp/index.html

【備考】

田中住建グループ(URL:http://www.tanaka-jyuken.co.jp/)のこれまで培ってきた建築の技術を活かし、植物プラントとして空き倉庫活用を行い、植物栽培用施設の取組みを始めています。地元経済の活性化、日本の食料自給率の向上を目指し、安全・安心・新鮮な野菜の提供を行います。

地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所について

大阪府の「環境」「農業」「食品」「水産」など幅広い分野にわたる調査研究を実施。水耕栽培における病害虫防除技術の開発にも力を入れている。

本部・食とみどり技術センター所在地:
〒583-0862 羽曳野市尺度442
URL:
http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/

森村商事株式会社について

社長:
森村裕介
資本金:
1億8,000万円
従業員数:
269人
所在地:
〒105-8451 東京都港区虎ノ門1-3-1 森村ビル
事業内容:
貿易商社
(耐火物・電子・半導体・化成品・樹脂・香料食品原料、金属素材、その他原料、製品)
URL:
http://www.morimura.co.jp/

【備考】

かねてより、ケニファインについても取り組んでおり、KBBコート剤の開発・販売をしている。現在、ケニファインめっきについても取り扱っている。農業分野へのケニファイン取り組みでは、農業用ハサミをはじめとする各種農業用資材や水系エマルジョンスプレー塗料などの製造販売を計画。