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鉄鋼業を取り巻く環境・神戸製鋼の取り組み

鉄鋼業を取り巻く環境

急激に世界が変化する今日、鉄鋼業を取り巻く環境も日に日に変化しています。鉄鋼業は現在、どのような状況下に置かれているのでしょうか。

粗鋼生産量の増加

2008年の粗鋼生産量は、図1のとおり約13.2億トン(出典:World Steel Association)と、2000年の約8.4億トンと比較して大幅に増加しており、今後もこの傾向は続くものと予想されます。中でも中国・インドをはじめとする新興国の発展は目覚しく、特に中国の粗鋼生産量(2009年)は図2のとおり約5.6億トンと、2000年の1.2億トンに比べて4倍以上の増加を見せており、これにより中国の鉄鉱石・石炭等の原料輸入量は年々急激に増加しています。この結果、各原料価格やその輸送費などが高騰し、以前に比べて原料を入手しにくい状況が顕在化しつつあります。このような状況の中、原料の多様化に対応するために高炉法以外のプロセスも登場しています。

図1 世界の粗鋼生産量と製法別内訳

図1 世界の粗鋼生産量と製法別内訳(出典:World Steel Association )

図2 中国の粗鋼生産量と鉱石輸入量

図2 中国の粗鋼生産量と鉱石輸入量(出典:テックスレポート)

世界的な粗鋼生産量の増加の中、電気炉法による生産も増加しており、現在では全体の3割を占めています。電気炉法は、鉄鉱石(焼結鉱・ペレットを含む)と還元剤として石炭(コークス)を使用する高炉 - 転炉法とは異なり、鉄スクラップを原料に、電気のエネルギーにより溶解・精錬します。鉄スクラップのリサイクルとしての面を持つだけではなく、粗鋼1t製造あたりのCO2排出量が約2tの高炉 - 転炉法に比べ、電気炉法では0.5トン以下と約4分の1に抑えることができます。しかしスクラップ中には銅やスズなどの不純物が多く含まれるため、一般的には高級鋼の製造が難しいと言われております。そこで不純物を希釈するための清浄鉄源として、直接還元鉄(DRI: Direct Reduced Iron)の需要が高まっています。

直接還元鉄(DRI)とは?

高炉 - 転炉法のように、高炉で鉄鉱石(焼結鉱・ペレットを含む)に一度炭素を加え、溶融・還元させた銑鉄(溶銑)を、転炉で酸素を吹き込むことによって余分な炭素を除き、鋼を製造する間接製鉄法に対し、鉄鉱石(塊鉱石・ペレット)を高炉に比べ低温で、天然ガスなどをもとに製造された還元ガスや石炭などの還元剤により直接還元する製鉄法により得られたものを直接還元鉄(DRI)といいます。

還元時に鉱石から酸素が抜けるため、DRIは多数の気孔が空いた形状をしており、その形状からスポンジ・アイアンとも呼ばれています。炉内で還元したDRIを、冷却せずに炉から排出したものを、Hot DRI(HDRI)、冷却したものをCold DRI(CDRI)といいます。DRIは再び酸素と結び付きやすく(再酸化)、空気や水、特に海水に触れると発熱・発火するという欠点があり、ハンドリングが難しく海上輸送のような大量かつ長距離の輸送や長期間にわたる屋外保存には不向きでした。そのためプラントを製鋼設備に隣接して建設する必要があるなど、立地上の制約がありました。この問題を解決するために開発されたものがHot Briquetted Iron(HBI)です。
HBIは、見掛け比重が3.4~3.6t/m3程度のDRIを700℃前後の熱間で見掛け比重5.0~5.5t/m3程度に圧縮・成型(ブリケット化)し、活性比界面積を減らしたものです。このブリケット技術の開発によって大量かつ長距離の輸送・屋外での長期保存が可能となり、製鋼設備に隣接せずともプラントを建設することができるようになり、立地上の制約を解消しました。

HBI

HBI

DRI

DRI

直接製鉄法は、使用する還元剤の種類により2種類に大別されます。ひとつは還元剤に天然ガスや石炭ガスなどの還元ガスを使用するガスベース還元鉄製造法、もうひとつが石炭を用いた石炭ベース還元鉄製造法です。ガスベース還元鉄製造法は、主にMIDREX法とHYL法とがあり、MIDREX法によるDRI生産量は、図3のように全プロセス中の約6割を占めています(ガスベース還元鉄製造法においては、全体の約8割を占めます)。

図3 DRI 2008年 生産量内訳

図3 DRI 2008年 生産量内訳(出典:Midrex Technologies Inc. )

一方石炭ベース還元鉄製造法は、ロータリーキルン法が古くから用いられてきました。しかしこの方法では生産規模が制約されることや環境負荷がかかるといった問題がありました。そこで近年では鉄鉱石と石炭を内装したペレットを回転炉床炉(RHF:Rotary Hearth Furnace)で加熱・還元するプロセスも開発・実用化されています。

高品位鉱石の枯渇

鉄鉱石を形成する鉄鉱床は堆積鉱床・火成鉱床・風化残留鉱床の3種類に大別されます。鉄鉱石そのものは、他の鉱物資源と比較して、豊富に存在しますが、これまで私たちが鉄源として使用してきた鉄鉱石は高品位のものであり(鉄分含有量:65%)、堆積鉱床の中の縞状鉄鉱層という層のごく一部から掘られていました。しかし近年、これら高品位鉱は枯渇傾向にあり、低品位鉱を利用する技術を開発することが、今日解決すべき課題となっています。
現在活用されている低品位鉱利用技術としては、選鉱・焼結・ペレット加工があります。

a) 選鉱
鉄鉱石と不要な鉱石である脈石(Gangue)とを分離する作業を選鉱といいます。具体的には、鉱石の粒度により分級(篩い分け)し、粒度の大きい鉱石については細かく砕き(微粉砕)、比重による選別(浮遊選鉱)や磁力による選別(磁力選鉱)により鉄分含有量を上げていきます。選鉱された鉄鉱石の形状は粉状となります(粉鉱石)。また、高品位鉱においても、石の形状をしているもの(塊鉱石)は比較的少なく、5mm以下の粉鉱石が主流を占めます。粉鉱石は、そのままの形状では高炉・直接還元鉄プラントにおいて目詰まり等を起こすため使用できず、焼結鉱やペレットに加工されて使用されます。
b) 焼結
粉鉱石に石灰石・粉コークス等を加え、一定の大きさのボール状に焼き固めたものが焼結鉱です。焼結鉱は高炉炉頂よりコークスと交互に積み重なるように装入され、高炉内で溶融・還元されます。ボール状の形状にする事により、高炉内還元ガスの流れを一定にする働きを持ちます。
c) ペレット加工
粉鉱石の中でも特に粒度の細かい微粉鉱石は、焼結してもうまく固まらないなど、焼結鉱の原料に適しません。このような微粉鉱石は、ベントナイトなどの粘結剤(接着剤)・石灰石・水分を加えて球状にし、焼き固めてペレットにします。低品位鉱は、鉱石中の鉄分と脈石とが分離しにくく、選鉱時にきわめて細かい粒度(-44μm>80%)に破砕する必要があり、ペレット加工のニーズが高まっています。ペレットは、その組成・鉄分含有量により高炉にて使用されるものと、直接還元鉄プラントにて使用されるものに分かれます。
ペレット製造法には、トラベリンググレートのみを用いたストレートグレート方式と、トラベリンググレートにロータリーキルンを組み合わせたグレートキルン方式とがあります。

環境への関心の高まり

製鉄業に関連する二酸化炭素(CO2)の排出量は、日本全体の排出量の16%を占め、そのうち6割以上が製銑工程から排出されているといわれています。つまり、日本が排出するCO2の約1割が製銑工程に起因するものであり、温室効果ガス削減が叫ばれる今日、製銑分野へのCO2削減圧力・期待は日増しに強まりつつあります。
また、リサイクルによる製鉄所ダストのゼロエミッション化も、私たちが解決すべき課題のひとつです。国内の製鉄所から発生するダストは年間約480万トンと言われていますが、この中には鉄のほか亜鉛・鉛などの有価金属を含む貴重な資源も含まれます。従来製鉄所ダストは、高炉原料として既設設備で焼結鉱・ペレットに加工された後、再利用されるケースが主流でしたが、高濃度の亜鉛やアルカリ分を含むダストはリサイクルが難しく、外部で処理するなど使用範囲が限られていました。しかし今日、環境への配慮・資源確保の観点からも、これら製鉄所ダストのリサイクルへのニーズは高まっています。

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神戸製鋼の取り組み

このような環境下での、神戸製鋼の取り組みを紹介します。

還元鉄需要の高まりに応えて

電気炉による粗鋼生産が増加する今日、DRIの需要が増加しています。神戸製鋼は、1983年に米国Midrex社を買収・子会社化し、世界のDRI生産量の約6割を占めるMIDREX®直接還元製鉄プロセスのプロセスライセンサーとして世界中で活動を展開しているほか、回転炉床炉による石炭ベース還元鉄製造法では、FASTMET®プロセスを商業化しています。またこの方法から派生して、直接溶銑を製造するFASTMELTプロセスを開発し、より高品位なアイアン・ナゲットを製造するITmk3®プロセスを開発・商業化しております。

アイアン・ナゲットとは?
ITmk3®プロセスにより製造される製品がアイアン・ナゲットです。不純物もなく金属鉄が96~97%と、高炉銑鉄同等の高品質のうえ、再酸化による自然発火などの恐れもなくハンドリングが容易です。そのため電気炉ではスクラップの希釈原料として使用することで製品の高品質化が可能となります。また転炉に投入する場合、溶銑にアイアン・ナゲットを添加することで増産効果とCO2の削減が期待できます。
銑鉄とは?
鉄鉱石やDRIなどの製鉄原料を高炉や電気炉などの炉で還元し、鉄分を取り出したものを銑鉄といいます。銑鉄の中でも高温で溶かしたものを溶銑、冷えて固体になったものを冷銑といいます。冷銑はハンドリングがしやすいように10~30kg程度の塊に鋳込みます。これを型銑といいます。
銑鉄は通常4%程度の炭素分を含み、最終製品として加工するには硬くてもろいため、最終製品を製造する際には炭素・ケイ素・マンガンなどの成分を用途に応じて調整します。

鉱石の事前処理技術

微粉鉱石が増加する中、ペレットプラントのニーズも高まっています。神戸製鋼は、グレートキルン方式を採用した独自のペレット製造プロセス(コベルコペレタイジングシステム)を開発し、世界各地でペレットプラントの建設を行っています。また当社製鉄所内にもペレットプラントを所有・操業している国内唯一の高炉メーカーでもあり、ここから得た経験を活かし、プラント操業指導も行っています。

環境への配慮

神戸製鋼が所有するFASTMET®プロセス(DRI製造)・FASTMELTプロセス(溶銑製造)、は、鉄鉱石の代わりに製鉄所ダストを原料に使用することが可能であり、ダスト処理プロセスとしても注目されています。加えてダスト中には多くのカーボン源が含まれているため、石炭の使用量も少なく済み、そこから発生するCO2の量も抑えることができます。
また、MIDREX®直接還元製鉄プロセスも、還元ガスに天然ガスを使用することにより水素還元も行われるため、高炉法と比較して約4割CO2の発生を抑えることができます(出典:Midrex Technologies Inc.)。

新しい製鉄法の開発

高品位鉱が枯渇傾向にある今日、この問題の解決策として、選鉱後の微粉鉱石を山元で加工する新製鉄プロセスが期待されます。また、あわせて今後枯渇が懸念される高品位の原料炭を使用しないコークスレス製鉄法の開発も重要です。
高品位鉄鉱石と原料炭を必要としないITmk3®プロセスは、このような問題を解決する上でもっとも効果的なプロセスです。これまで前処理なしでは使われてこなかった微粉鉱石と一般炭を原料に使用することで、現在直面している資源枯渇問題の解決を期待できるだけではなく、山元から出る低品位鉱石を現地でアイアン・ナゲットに加工することで、銑鉄同等の品位という高い付加価値をつけて販売することもでき、また、鉱山寿命の延命にも寄与することができます。ITmk3®プロセスは、次世代の新たな製鉄法として、世界中から注目を集めています。

このように、神戸製鋼の製鉄プラント事業は、環境問題や資源枯渇問題へ対応するだけでなく、山元にも付加価値を与えることができるプロセスを開発しています。世界中のニーズやトレンドに敏感に対応できる技術を、これからも提供していきます。