神戸製鋼HOME > 技術・製品情報 > 原子力プラント・機器 > 埋設後環境変化シミュレーション解析評価技術

埋設後環境変化シミュレーション解析評価技術

廃棄物埋設後の処分場近傍の環境変化を予想する計算機プログラム解析技術

1.概要

放射性廃棄物は地中に埋設処分されることが求められております。地中埋設後は止水材(粘土)の膨潤圧、土圧等により埋設物は力学的な影響を受けます。また、大気起源の酸素(O2)が鉄腐食・有機物/微生物作用により短期間で消費され、地下の雰囲気は還元性環境に移行します。その後、廃棄物中の有害成分や構造材の材料成分(セメント中のCa(OH)2等)の溶出により、埋設環境は次第に化学的に変遷していきます。
廃棄物の処分後の安全性の評価では処分場の力学的変化、化学的変化を精度良く評価することが必要です。
ここでは以下の埋設後環境変化シミュレーション解析評価技術を一例として紹介します。

  1. 力学的環境解析
  2. 化学的環境解析

2.用途

  1. 力学的環境解析
    汎用解析プログラムABAQUSを用い、粘土には弾塑性モデル、炭素鋼容器健全部・岩盤には弾性モデルを適用し、地圧載荷条件下での発錆膨張に伴う粘土中での圧密変形-浸透流の連成解析を行った事例を示します。発錆膨張に伴って粘土は20%程度圧密変形し、炭素鋼容器周辺で密度・透水係数の分布が生じていることが表現されています。
  2. 化学的環境解析
    2次元溶質移行及び化学平衡反応を結合させて計算可能な地球化学コードPHREEQC及びPHASTを活用して粘土・岩盤内のEh(酸化還元電位)/pH等の経時変化を予測解析した事例を示します。解析結果の一例に示すように炭素鋼容器の腐食に伴い地中に残留する酸素が消費され、止水材(粘土)中は早期に還元性に変化する挙動が表現されています。またFe2+が共存すると系が還元性に変化し、AgIが分解し、よう素溶解量が次第に増加する挙動が表現されています。

環境解析の対象の一例

高レベル放射性廃棄物 地層処分の概念図

(引用:核燃料サイクル開発機構(JNC)殿ホームページ、原子力発電環境整備機構(NUMO)殿ホームページ)

炭素鋼容器近傍の力学的環境解析結果の一例

炭素鋼容器近傍の力学的環境解析結果の一例

上図では1万7千年経過後の処分場の炭素鋼容器周辺における力学的環境をダイナミックに解析した。
発錆膨張に伴って粘土は20%程度圧密し、一層低透水化が進んでいることを示した。

炭素鋼容器腐食に伴う化学的環境解析結果の一例

炭素鋼容器腐食に伴う化学的環境解析結果の一例

上図では炭素鋼容器の腐食と地中に残留した酸素の消費をダイナミックに解析した。
止水材(粘土)中は早期に炭素鋼腐食の起こりにくい還元性環境に変化することを示した。
(引用:日本原子力学会、1997年秋の大会予稿集、I47)

Fe2+共存下のよう素溶解・移行解析結果の一例

Fe2+共存下のよう素溶解・移行解析結果の一例

上図では還元剤の進入により固体廃棄物中のヨウ化銀(AgI)が分解してヨウ素が放出されてしまう。
廃棄物の埋設に際し、周囲の環境評価の重要性を示した。
(引用:日本原子力学会バックエンド部会夏期セミナー資料、 1998年7月)

  1. 力学的環境解析では実験により取得した各種材料の特性データを整理し、地圧条件を入力することにより、埋設後環境における力学的な環境変化を評価することできます。
  2. 化学的環境解析では、実験により取得した重金属・放射性核種の特性データを整理し、地下水条件を入力することにより、埋設後環境における化学的条件の変遷挙動を評価することできます。
  3. 上記により、埋設後の地下環境による有害物質の閉じ込め性能を可視化し、精度良く評価することができます。

4.実施例

1997年度より国および電力各社殿等の各種委託研究へ反映しております。