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トピックス
2004年

*トピックスの内容は発表時のものです。販売が既に終了している商品や、組織の変更等、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。
『コーベスーパータフネス』シリーズに橋梁向け高能率溶接用ハイテンが登場
〜引張強度570N/mm2級(60kg級)厚板ハイテンの溶接施工性を大幅に向上〜
2004年12月9日
株式会社神戸製鋼所


当社は、加古川製鉄所で生産している厚板分野の特長ある製品比率の向上を目指し、得意とするTMCP技術を用いた「溶接に強い厚板」の開発に力を入れています。
「コーベスーパータフネス」シリーズは、従来鋼に比べて大入熱溶接に対応可能で、小入熱溶接部の溶接割れ・硬化部の残留の危険性を低減するという2つの課題を、業界で初めて同時に解決した高強度厚鋼板のシリーズです。このほど、同シリーズに、引張強度570N/mm2級(60kg級)の「橋梁向け高能率溶接用ハイテン」(SM570-TMC-ST)が加わりました。

【橋梁向け高効率溶接用ハイテンの開発ニーズ】
公共工事のコスト縮減ニーズが高まっている中で、橋梁分野においても、長支間化(長スパン化)など、合理化を目指した新しい鋼構造の提案や設計法の検討が進んでいます。今後は、こうした動きに対応した高強度厚鋼板(厚板ハイテン材)のニーズが高まることが予想されますが、これまでの引張強度570N/mm2級(60kg級)以上のハイテン材においては、特に溶接施工面での制約が大きく(補足説明参照)、施工コストを上昇させる要因となっていました。

「コーベスーパータフネス」シリーズは、大入熱溶接に対応できる革新的な独自技術「結晶粒の超微細分割(低カーボン多方位ベイナイト)技術」*1による溶接熱影響部(HAZ)*2の大幅な微細化と、当社が従来から得意とするTMCP技術*3 とを組み合わせて開発されたものです。この技術は、ほかの厚板ハイテン材などにも適用可能で、橋梁向け引張強度780N/mm2級(80kg級)鋼板や、ライフサイクルコスト(LCC)削減ニーズに対応できる耐候性鋼への適用にも成功しました。今後の計画として、橋梁向け高能率溶接用ハイテンでは、2005年度で年間3、000t程度の販売を目指す考えであり、鋼橋のコスト縮減と安全性確保に向け、鋼材面から貢献したいと考えています。尚、建築用と合わせた「コーベスーパータフネス」シリーズ全体では、2005年度で年間8、000t程度の販売を見込んでおり、厚板分野の特長ある製品比率を高めていきたいと考えています。

【「橋梁向け高効率溶接用ハイテン」(SM570-TMC-ST)の特徴】*4
  1. 大入熱溶接対応・・・・従来鋼の2倍の大入熱溶接に対応可能
    従来鋼の入熱制限(70 kJ/cm)に対し、サブマージアーク溶接*5、エレクトロガスアーク溶接*6などの大入熱溶接(150kJ/cm)を適用可能であり、熱影響部(HAZ)靭性値(シャルピー吸収エネルギー値*7)も規格値の3倍程度を実現。

  2. 小入熱溶接対応・・・事前の予熱作業を省略できる
    溶接前の予熱無しでも割れを防止し、組立て溶接の際などに溶接ビードが極端に短くなった場合でも、割れ防止の目安となる硬度HV350以下*8を実現。

  3. オプション機能として、残留応力低減技術を適用した加工変形バラツキの低減にも対応。

(補足説明)
※溶接施工面の制約
現地溶接で用いられることのあるエレクトロガスアーク溶接法は、150kJ/cmという大入熱量で1回(1パス)溶接ができる高能率な溶接法ですが、従来の570N/mm2級鋼板(SM570)の接合では、溶接入熱影響部(HAZ)靭性確保の観点から最大入熱量を70kJ/cm以下に抑えることが必要であり、何回も溶接を行う(多パス)低能率な溶接法しか適用できない問題がありました。
一方で、仮付けの際に部分的に短い溶接(組立て溶接*9)をする際は、小入熱での溶接を行いますが、母材を予め予熱する必要がある上(場合によっては100℃以上)、溶接後に母材が急激に冷えて割れが生じることがないように、溶接ビード長さ*10を50mm以上にするなどの制約があり、温度管理・作業性の面でかなりの手間がかかっています。


【注】技術用語に関する説明

*1 「結晶粒の超微細分割(低カーボン多方位ベイナイト)技術」・・・
カーボン量を従来鋼の1/2〜1/4と大幅に低減することにより硬くてもろい島状マルテ ンサイトの生成量を大幅に低減するとともに、大入熱溶接熱影響部で粗大化したオーステナ イト粒内を微細なブロックに分割する画期的な組織制御技術。
*2 熱影響部(HAZ)・・・溶接熱により材質的影響を受ける領域。
*3 TMCP技術・・・
Thermo-Mechanical-Control-Process の略。鋼材を製造する際に素材の加熱温度、圧延温度、圧延後の冷却をすべて制御し、所定の特性を圧延ラインで造り込む技術。
*4 大入熱溶接・小入熱溶接・・・
溶接を行う際、電源から溶接部に投入される熱量。単位はkJ/cmまたはkJ/mm。 大入熱溶接はおよそ150kJ/cm以上、小入熱溶接はおよそ20kJ/cm 以下を目安とした。
*5 サブマージアーク溶接
溶接箇所にあらかじめ粒状フラックスを散布しておき、その中に溶接ワイヤを送り込み、フラックスに覆われた状態でアークを発生させて溶接する方法。主に下向きの大入熱溶接法として適用される。
*6 エレクトロガスアーク溶接・・・
銅当て金や耐火性裏当て材で溶融金属の垂れ落ちを防止しつつ、立向上進溶接をするガスシールドアーク溶接法。大入熱溶接が可能であり、現地溶接などでの高能率溶接法として用いられる。
*7 シャルピー吸収エネルギー・・・
試験片(鋼材)が破断する前までにエネルギーを吸収する能力を表す指標。JIS規格に基づく衝撃試験を行ない、その時の吸収エネルギー量で評価を行なう。
*8 硬度HV350以下・・・
国際溶接学会(IIW)では溶接熱影響部の最高硬さがHV350以上になると溶接部がもろく なるので特別な注意が必要と警告している。
*9 組立て溶接・・・
本溶接を行う前に、部材の固定のためにあらかじめ部分的に短い溶接を行っておくこと。
*10 溶接ビード長さ・・・
溶接ビード長さが短いほど溶接部の冷却速度が大きくなるため、熱影響部が硬化し、割れが発生しやすくなる。 

 
超高層ビル向け超大入熱溶接用厚鋼板コーベスーパータフネス』(高HAZ靭性鋼)シリーズの商品化について
超高層ビル向け超大入熱溶接用厚鋼板 『コーベスーパータフネス』(高HAZ靭性鋼)シリーズの初受注
 
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